OVMは何色だったのか(前編)
2017年 09月 27日
戦車模型で車体に積んでいるシャベルやらハンマーの類、いわゆるOVM(車両装備品)を何色に塗るか、というのは実は悩ましい問題。
プラモの組み立て説明書には鉄部はメタリックグレイかガンメタル、木部はレッドブラウンに塗りましょう、なんて指示があったりするものの、それはリアルさの表現というより模型的な約束事という気もします。
実際、どうだったのか。ドイツ軍の場合、大戦初期はダークグレーの車体に鉄色と木色の組み合わせのOVMで間違ってません。しかし中期以降、車体の基本色がダークイエローに変更され、3色迷彩が一般的になる時期になると、車体色と同じ色で塗りつぶしている事例を見かけるようになります。冒頭の写真もその一例。
モノクロだと、反射で光ってるのか、土埃を被って白くなっているのか判別がつかないことが多いのですが、カラー写真は、そのあたりの識別も容易。
よく見ると、転輪のゴム部分にもホイールを塗ったときのダークイエローが結構はみ出してますね。塗装なんて案外、こんなもんだったんですね。
車体と同じダークイエローでペイントして工具のシルエットを際立たせない、というのは迷彩効果として考えれば当然の思考だと思います。大戦初期のグレーの車体色の時であれば、OVMの鉄部がいわゆる工具色である黒色塗装であっても、車体に溶け込んで目立たなかったものの、車体色がダークイエローに変更された以降は、車体から浮き上がらない色調が望まれたのではないかと推測します。
ただし、OVMの塗装色もダークイエローになるのがいつ頃から一般的になるのかは不明。43年の夏頃だと、ダークイエローの車体に従来タイプの色調の工具が載っているものも多く見られます。
もっとも、このパンター、A型が生産されていた時に一般的だった迷彩は輪郭のぼやけた吹き付けで、コントラストをつける迷彩のスタイルは44年の秋以降に流行するパターンと思われます。おそらくリペイントされたもので、その時に工具類も一緒に塗りつぶされたものと想像します。なので、これが一般的なものと言えるかは微妙。
丸で囲んだ部分を見ると、クリーニングロットを固定しているステーの金具の横の部分に「明るい影」があります。これはパイプの元々の色の木の色調(orダークイエローに塗装されたもの) の上にグリーンとブラウンの迷彩色がスプレーされた時にステーの金具の下に隠れて迷彩色が付かなかった部分で、使っているうちにずれて元の色が見えていると想像します。
手前の車体の天板の上に転がっているシャベルの鉄部は明らかに明るい色が塗られて、使ってペンキが剥げたところに金属色が露出しています。シャベルの柄の部分が木肌の色なのか、同じくダークイエローで塗られているのかはモノクロ写真から判別することはできませんが。シャベルの手前に転がっている車体基銃の曲銃身の黒鉄色とは明確に違う明るい色調であるのは確か。
44年秋以降、迷彩はすべて工場塗装。輪郭のはっきりしたパターンの場合、ちょっと困ったことになります。装備品はフェンダー中央部に消火器、クリーニングロッド、フェンダー前部にシャベル(別写真で確認)を積んでいますが、すべてダークイエローでペイント済み。工具色を車体と一緒にペイントしたのではなくあらかじめダークイエローの塗装で納品されたものをそのまま積んだと想像しますが、グリーンやブラウンのパターンの上にダークイエローの工具が搭載されると、却って目立ってしまってます。
こうなるとまた工具はイエロー以外の塗装が望まれ、それに対応事例もまた見られるようになります。
今回はここまで。
次回は大戦前期のグレー車体での事例やイエローベース車体での例外的な事例などなど。
by hn-nh3
| 2017-09-27 20:45
| 資料
|
Comments(0)