
閑話休題。ヘッツァーに関する無駄話はちょっとお休みして今回は資料本の紹介。
今回のワルシャワのヘッツァーの制作の参考にしている資料のひとつは、スコードロンシグナル社の "Jagdpanzer 38 Hetzer walkaround"

A4横サイズ。80P。2011年刊。現存車両のディテール写真と解説。表紙のドローイングは何となく一時代前のスタイルでビジュアル的にはだいぶ損をしている気はするけど、いやどうしてなかなかの良書。
数年前にAmazon.comで19.95ドルで買い求めたものですが、今年の春にも国内入荷があったようで国内在庫もまだある模様。

基本、本はジャケ買い派なので、表紙を見てどうしたものか躊躇していたのですが、レビューでこのページが出ていたのが購入の決め手。ヘッツァーの後部排気管のバリエーションの解説ページ。
44年9月までの横置きマフラーと以降の縦型簡易排気管の違いはよく知られたところですが、後期の排気管のマイナーチェンジはまだあまりフォローされてないところ。1945年4月のシュコダ工場生産車は縦型マフラーが斜め配置ではなく垂直配置になっているのだとか。このドローイングを見て、いい本だと思って購入。
車体後部に追加されたアクセスハッチの解説も写真つきでありますね。オスプレイ本を下敷きにした和書では当初はここにハッチがなく燃料補給もパネルのボルトを外して行っていたのを不便だから小ハッチが追加された、なんていう記述もありますがこれは明らかな誤訳。燃料注入口は上の大きなハッチの下にあり、追加された小ハッチはエアフィルターやラジエーターなどのアクセス用。

記録写真は有名どころですが、ツボを押さえた写真が大判で見れるのは嬉しい。製造中の風景はプラハのBMM(CKDをドイツ風に改名)工場。車体の基本形がよく分かる写真。砲身をつける前にすでに迷彩塗装をしていたようにも見えます。
転輪や小パーツはレッドプライマーベースにダークイエローを塗ったものが納品されてたのか、写真でもノテックライトが車体とは違う塗装済みの状態で取り付けられているのが確認できます。
車体はレッドプライマーで塗装されていたとあるけど、個人的には38t戦車系列、ヘッツァーの車体はグレープライマーで塗装されてたと考えてます。現存車両のいくつかにそんな形跡。この話はまたどこかで。

Walkaround本のメインとなるディテール写真。車体の部位ごとに生産時期のことなる車両の比較と解説。
ヘッツァーの生産はBMMと途中から加わったシュコダの2社。ボルディ工場で制作された車体が両社に供給されて部品の組み立て。その過程で細部に差分が生まれて、たとえば牽引フックの三角の補強プレートはシュコダ生産車の特徴なのだとか。後期ヘッツァーはBMMとシュコダ生産車では迷彩パターンも違ったりするから、こうした工場別の差分がわかる資料は大事。

生産時期別の特徴の解説。最後期型によく見られる4つ穴の簡易型誘導輪もシュコダ工場生産車の特徴。それに対してBMM工場では1944年11月に採用された6穴の誘導輪が最後まで使われていたのだとか。

転輪のディテール写真。ゴム部分との接合ボルトは初期は32本、後期は16本。ボルトのリム幅も生産途中で狭いものに変わる。さらにはボルトからリベットに変わったりと、意外に細かな変更もあったりするので気になり始めるとヤヤコシイ。

内部の写真もあるよ。例の暖気取り入れダクトのインレットもクリアな写真が掲載。ここにも1944年11月からの装備と書かれてます。内部写真に関しては戦時中に生産されたヘッツァーではなく戦後型(スイス軍に供給)のG-13のものなので、そこは留意して見る必要あり。エンジンルームの写真などもあるけどそれもG-13。欲をいえば戦時中の生産車の内部写真も比較掲載して欲しかった。
ヘッツァーの現存車の内部写真を見ると2タイプの砲架が確認できて、エデュアルトのキットでは2タイプの選択式になってたけど、その違いが何なのかこの本でやっとわかった。ヘッツァーが積んでたのはPak39。戦後生産のG-13はStuk40。俯仰左右旋回の機構に違いがある。
ヘッツァーは現存車両も多く残っていてネットでディテールの写真を集めるのも比較的楽ではあるけど、その中にはG-13をヘッツァーに「復元」した車両も多いので注意して見ないと現存車の罠に嵌ります。識別ポイントとしてはG-13の砲身は根元で少し膨らんでいる。ヘッツァ−の砲身はストレート。
各部のディテール写真の他に、有名な車両の塗装パターンもカラーで再現されてたりするので、この1冊あればモデリングには十分な情報量。これで2000円そこそこならお買い得。
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ネット上のヘッツァーのWalkAroundページのメモ
言わずと知れたWalkAround の老舗のページ
アバディーンにあるヘッツァー後期型(シュコダ工場生産車)
屋外展示で状態は悪いもののオリジナルな状態がよく残ってる車両。
ウォークアラウンドのページではないが、カナダのボーデン博物館にあるヘッツァー初期型のエンジンルームなどがわかる貴重な写真。このヘッツァーは残念なことにエンジンなどの主要パーツを喪失。しかしそのおかげて燃料タンクや隔壁の基本構造などがよくわかります。このヘッツァー(1944年6月頃の生産車)の燃料タンクを見ると、後期型でよく見かける大型のキャップではなく、38t戦車で使われていたような小さな蓋。最初この写真を見たときは、レストアの際にパーツ欠損で仮の塞ぎをしているのかとも思ったけど、どうやら初期型の燃料キャップはこの形だった様子。
ポーランド、ワルシャワの陸軍博物館にあるヘッツァー初期型。ワルシャワのヘッツァーではあるが、Chwat号ではない。Chwat号は戦後に博物館で展示されるものの、当局の指示で処分されてしまったため、残念ながら現存していない。
この車両は戦闘時に誘爆した車両なのか後部が大きく破損している。そのおかげで一部ではあるが初期型の内部構造が伺いしれる。燃料タンクのキャップも小型のものがついているのが判読可能。
外部、内部ともによく理解できる写真が多い。リモコン機銃のディテール、他のページでは7.5cm砲の砲尾に遮られて写ってなかったりする車長席周りを捉えた写真があったり、細部の作り込みに役立つアングルでの写真など、多分にモデラー目線を感じます。
非常に状態のいい車両ですが、この車両はG-13ベースの「ヘッツァー復元車両」なので、そこを留意して観察する必要あり。
Tanks.Built2Scale >Tanks >
HETZER アバディーンの展示車両のウォークアラウンド。非常にマニアックなアングル。こんなとこまで撮るかという写真が満載。網越しに観察できる内部もよく捉えている。普通は写真に映らないサスペンションの裏側や、被写体に正対した撮り方など、部品の形状把握に役に立つ写真が多い。こんな写真撮るのは絶対にモデラー。ウォークアラウンドかくありき、というページ。