砲塔考 その2(Valentine Mk.Ⅶ vol.4)

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バレンタイン戦車の標準的な3ピースボルト接合型の砲塔側面装甲板は、鋳造ではなく圧延鋼板を曲げ加工したものを使ってるのではないか? というのが前回までのあらすじ。

今回、タミヤのキットを改造して作ろうとしているMk.Ⅶは、カナダで製造するにあたり砲塔を鋳造一体で型に基本設計を変えています。標準60mmの圧延鋼板もしくは65mmの鋳造とするように仕様で定められていたので、おそらくはこの一体鋳造タイプの砲塔では、側面は60mmから65mmに増厚して生産されたと推測されます。

だとすると、鋳造一体型では側面・後部ともに65mmでシームレスに連続するラインになり、標準の砲塔では側面と後部パーツの装甲厚の違いから生じていた微妙な段差が解消します。実際には鋳造の施工誤差を考慮して65~70mmの範囲で作っていたのでしょうから、模型的には1/35換算で0.14~0.28mm程度、エポキシパテを薄塗りして鋳造表現するとよさそうです。側面上部にうっすらと見られるパーティングライン、抜きテーパーと思われる微妙な傾斜、エッジが僅かに丸くなっているところなど、その増厚分のなかで表現できます。
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写真出典:2点ともにWikimedia Commonsより

さて、ここで少し悩んでいるのが、前部のパーツとの連続ラインをどう作るのか。
標準のボルト接合砲塔では、耐弾性を考慮してか、側面装甲板に被せるように前面パーツを嵌めこむ構成になっていたのに対し、Mk.Ⅶの砲塔は鋳造でなめらかに一体成形されています。そのラインはどのようになっているのか? 要は側面が前部に繋がるところで外側に膨らむのか、前方のパーツが絞り込まれるのか、あるいはその両方か.. この問題を図面化してみます。
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とりあえず「前部パーツ絞りこみ説」で考えてみました。些細な話ではあるけど、以前の記事で触れた「装甲増厚で操縦手バイザーが閉まらなくなる問題」のように基本設計を変えるとあちこちの部品に影響がでます。

どの戦車でもそうですが、型式を重ねるにつれて各部のパーツもアップデートされていくけど、基本形がそれほど変わらないのは、そんな問題が絡んでいるんじゃないかと思います。
基本設計を変えるってのは大変なんです。ちょっとしたことでもあちこちに波及して細部に渡る調整が必要になります。前のバージョンの部品が殆ど使えなくなったり。
型式の切り替えでもパーツの残庫がでないような発注管理システムなんて当時はなかったでしょうし、モデルチェンジの不具合で納車が遅れるとかは避けたいですから。
Ⅲ号戦車なんか途中で足回りをガラッと変えてますが、よっぽど使えなかったのか。

話を戻しますが、Mk.Ⅶの鋳造一体型砲塔の基本形状の変更点、ちょっとまだ読み解けてません。現存する車体は1台だけ。当時の写真などで細部のわかる写真も少なく、もう少しリサーチを重ねたいところ。求む情報!
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いずれにせよ内装式の防盾の加工は先に済ませる必要はあるので、そちらの作業をちょこちょこ進めます。実車写真でもわかるように、Mk.Ⅶの初期型を除き、防盾は機銃口周りが張り出したタイプなので、プラ板を積層してピースを作成。キットの曲面にあわせて削ったり嵌め合いを確かめたりで、歯の治療の仮歯を思い出します。大きさも似てるし。

照準口、タミヤのは少し凹みすぎなので、側面のリブから少し飛び出る高さになるように一度削ぎ落として、下にプラ板を足して再び接着。砲身周りの鼻先も少し高さが不足しているのと、形状が楕円形になっていないので、これもプラ板積層の削り出しでつくって接着。(写真:左がタミヤ、右がAFVクラブ)

とりあえず、基本形をプラ板で加工して、後はエポキシパテを盛ってラインをなめらかに成形する予定。

Commented by TarotG_3 at 2017-05-07 07:35 x
これはまたコアな内容で、スミコン受けしそうですね。
英国戦車に疎いので全く知識はないですが、こういう調べものは嫌いではありません。グランドパワーの最新号(かな)でバレンタインの特集やってましたね、チラッと立ち読みしかしませんでしたが、あの本は有用ですね。
Commented by TFマンリーコ at 2017-05-07 08:40 x
前部のパーツとの連続ライン、私は単純にパテでならすつもりでした。その場合に「鋳造肌」(!?)の表現をどう再生するかが課題だと考えていました(笑)。
Commented by hn-nh3 at 2017-05-07 20:49
>TarotG_3 さん
予期せぬ展開です。つい一月までバレンタイン戦車はいっぱい種類あるけどどれが一番強いの?ぐらいの知識しかありませんでした。何でも調べてみると思わぬ発見がありますよね。ブリジストンのタイヤロゴの話とか(^^)

グランドパワー最新号のバレンタイン特集、買ってみました。
まとまって読める日本語文献としては貴重だと思いますが、流し読み程度に止めておくのがよさそうです。参考文献の誤訳が原因なのか、筆者の理解に混乱があり疑問を覚える記述が散見されます。知らない解らないとかのコメントなど、調べればわかることなのにとも思いましたが、時間がなかったんでしょうね。
Commented by hn-nh3 at 2017-05-07 20:58
>TFマンリーコ さん
私も単純にパテで均すつもりですよ。笑
ただ、側面下端の砲塔リングに固定するボルトがどう納まるのか考えていたら、こんな話に。。
ちなみに、オタワの実車を観察した限りでは、ボルトは鋳造肌より微妙に面落ちした丸い窪みについているようです。
by hn-nh3 | 2017-05-05 20:41 | valentine戦車 | Comments(4)