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断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

フェーディング2回目(油彩):T-60 (Plant no.264) vol.12

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T-60 (Plant no.264) 制作その12。前回のフェーディング(退色表現)の上にもう一度油彩で変化をつけました。
細かなニュアンスの調整と車体下部からフェンダー、車体上面などに埃色をかぶせて、使い古されて全体に汚れが染み付いた雰囲気になるように。
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リベット周りやパネルラインの墨入れは油絵の具の焦茶(ローアンバー)に青(コバルトターコイズディープ)を混ぜたものを溶剤(オドレスペトロール)で薄く溶いたものを使用。黒を使うと淀むので補色の関係にある色を混ぜて絵の具の彩度を下げてます。墨入れに油彩を使うのはボカシがなめらかにできるからですね。エナメル系だと染みがついたようになりがちで拡大して見たとき時にスケール感を損なうことがあった経験から。 

排気管からの煤煙で黒ずんだエンジングリルのメッシュも油絵の具のローアンバーを擦り付けて表現。排気管の焼け錆び色も油彩で同様に表現。後の工程でこれに錆色ピグメントをまぶして仕上げる予定。

 
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車体下部には油彩でアースカラーを作って塗り伸ばして土埃の下地を作りました。実際かなり明るくしてますが、それでも写真にとってみるとフェンダーなどの影で沈んだ感じで落ち着いて見えます。これに転輪、履帯が被さるとさらに暗くなるので、もっと明るく塗っても問題なし。この部分をシャドウ吹きで暗色に塗装する手法もありますが、写真をとったときに車体下部が真っ黒に落ちてしまうことが多く、それは避けたいところ。

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車体下部は全体的に泥色を強くしてこの後に施すピグメントの色調と馴染むようにしてます。地面からの照り返しの光で明るくなる効果も少し意識してます。

砲塔や操縦席周り、車体フェンダーの一部はフェーディングの後で、緑色が強くなるように色を戻しました。Mr.ウェザリングカラーのフィルタリキッドの緑(フェイスグリーン)を部分的に塗りつけて、乾いた筆とウェザリングカラーの薄め液で湿らせたティッシュなどでゴシゴシ拭き取ってなじませました。この作業の意図は、...車体にうっすらとかぶった土埃がすれて車体色のロシアングリーンがはっきりと見えている... そんなイメージでしょうか。

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前の記事:4BO色 で使った写真ですが、砲塔のエッジやフェンダーの一部など擦れやすい部分に地色の4BOグリーンがしっかりと見えているのがわかります。こんな雰囲気を再現してみたくて、ピグメントで埃を強調した後でも全体がぼんやりとしないように色のトーンを強めてみました。

ここまでのフェーディング(退色表現)作業。ペンキの色褪せというよりも軽く拭った程度では落ちない汚れを含めて塗ってます。いわば「長期汚れ」ともいう色調の変化を与えてみました。このあと、クリアを吹いてツヤを調整、そしてピグメントなどで「短期汚れ」を表現するつもりです。   

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ここまでの調整の殆どは油彩で行いました。プラモに油彩と聞くと経験がないとハードルは高く感じますが、実はすごく簡単。何よりいいところは、塗った絵の具が乾いて定着すると、上から塗り重ねても下の層の色が溶剤で溶けることはありません。だからウェザリング中に下の色が滲んだり変なツヤが出てきたり塗膜が剥げたりとかのトラブルもないです。油彩はウェザリングに最適。

ウェザリング程度だったら写真のような7色あれば十分。今回は使ったのは赤(カーマイン)、黄色(パーマネントイエロー)、緑(ビリジャン)、青(コバルトターコイズディープ)、焦茶(ローアンバー)、黒(アイボリーブラック)、白(アイボリーホワイト) 。メーカーはホルベインの汎用品。

赤は少し赤紫っぽい色を選んでます。ロシアングリーンの補色に近いのでグレートーンが表現しやすい色。フィギュアの塗装だと黄色でもカドミニウムイエローなど発色の良いものがいいと思いますが、ウェザリングでは少し弱い色の方が扱いやすいです。絵の具はこれだけあれば殆どの色調はカバーできるから、画材屋の絵の具を端から端まで買い占める必要はなく、混色も法則をいくつか押さえておけば大丈夫。三原色を混ぜた時の色とか、オレンジに白を混ぜると肌色になるとか、黄色に黒を混ぜるとあら不思議カーキグリーンができるとか。あとはちょっぴり補色の話も。

溶剤にはオドレスペトロールを常用。今回はスケジュールの都合もあって、アプタイリングの速乾シンナーを使ってみました。乾燥時間に劇的な違いはないのですが。

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作業の最初は油絵の具の油抜き。100円ショップで買った密閉容器とAMAZONのダンボールを用意。使う色をチューブから出して半日から一晩程度、密閉容器の中で寝かせてダンボールに余分な油を吸わせます。このままダンボールをパレット代わりにしても良いのですが、使い残した絵の具を載せたままにしておくと、密閉しておいても2日と持たずにカチカチに固まってしまうので、右の写真のようなペーパーパレットに油抜きした絵の具を移し替えて容器で保存します。1週間くらいは使えます。

ペーパーパレットは滑らかで吸油性のない使い捨てのペーパーシートなら何でも可。写真のものはホルベインのSSサイズ。葉書より一回り小さい大きさの30枚1セットで180円。1枚あたり6円なり。パレットナイフは簡単なものでもあると便利。油絵の具は粘度が高くてチューブから出した状態だと筆で取りにくく、固まりかけた絵の具を筆で直接すくったりしてると筆があっという間に傷んでしまいます。ペーパーナイフで必要な色をすくってナイフで混ぜて溶剤で希釈してから筆に含ませます。

とまあ、訳知り顔で書いてみましたが、模型での油絵の具の使い方って、雑誌でもあんまり詳しく書いてないんですよね。ウェザリング商材の事は..あれ?こないだも同じこと書いてあったよねと思うくらい情報が多くて予習復習バッチリとなるのですが.. 油彩となると、しかも本格的な油彩画ではNGのような手法だったりするので美術専門書も役に立ちません。油抜きにしても、油絵本来の良さを消してしまうような使い方だし。

油絵の具の乾燥の原理について、自分の知ってる範囲で書き留めておきます。
模型用塗料と油絵の具はその特性が全く違います。模型用塗料(ラッカー、エナメル、アクリル)は顔料を揮発性の溶剤でとかして、溶剤成分が揮発すると塗料も固まる(乾燥する)仕組みです。完全な可溶性ではないものの、乾燥後に溶剤で再び溶かすこともできます。

それに対して油絵の具は顔料のペーストに練りこまれた乾性油が酸素に触れることで酸化重合反応を起こして凝固するものです。塗るときにペトロールやターペンタイン(テレピン油)などの揮発性の溶剤で希釈するのは、単にペーストを希釈して薄く塗り伸ばしやすくしているだけで、模型に塗った溶剤の揮発成分が乾いても、薄い絵の具の層自体はまだ固まっておらずべとついたりするのはそのためです。絵の具に含まれる乾性油が固まるまでにごく薄く塗っても半日から1日程度。模型塗料のように厚塗りすると、絵の具によっては一週間たっても固まってないこともあります。

この乾燥(凝固)の遅さが色のブレンディングなど精緻なグラデーション作りには役に立つのですが、ウェザリングの場合は塗った絵の具が2日も3日も乾かないと次の作業ができず仕事にならないので、それで「油抜き」をする訳です。
チューブから出した絵の具のペーストに含まれる乾性油をダンボールに吸わせるなど減らして、油の酸化重合による凝固が早まるようにします。油を抜けば抜くほど絵の具の「乾燥」は早くなります。絵の具の乾性油には完成後のツヤを出す効果があって油絵特有の重厚感にもなるのですが、模型に使う場合はこのツヤが邪魔なので油を抜いた方が扱いやすくなります。

じゃあ乾性油なんて模型では邪魔じゃん、油なしの油絵の具があったらいいね!となりそうですが、油絵の具にとってはこの乾性油が顔料の定着材でもあるので、油抜きした絵の具で油絵を描いたら将来絵の具が剥落したなんてことにもなります。ピグメント的に使うなら、仮に剥げてもまあいっかとなりますが、苦労して塗ったフィギュアの瞳が鱗が剥がれるように落ちたら泣いちゃいます。だからフィギュア塗装で油絵の具を使ってグラデーション塗装をするときは油抜きはほどほどに、ウェザリングで使うときは粘度のあるピグメントと思って油抜きをしっかりしたものを使うなど、時と場合に応じて使い方を調整。

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あ"ー 上部転輪が曲がってる....


模型用塗料に比べて乾燥が遅いというのはネックになりますが、フェーディングや墨入れで色のグラデーションを作ったりするのはやっぱり他に変えがたいものがあります。固まらないうちならペトロールで拭えば色を落とせるし、固まったら上から塗り重ねても下の色が溶けたりしないし。ちょっと作業しては休んでブログを描いたり(ダラダラ作るのが得意な)モデラーにとっては便利な画材です。


何を隠そう自分も油絵の具を使い始めて1年も経ってない初心者。遠い昔、高校生の時に一度使ったきり ..「油絵の使い方を覚えるために有名な絵の模写から始めよう!」と美術の先生の言葉にそそのかされて描いて、こりゃ才能ないね..と思ったクチです。まあ、模写した絵が後期印象画の巨匠、セザンヌが描いたサント・ビクトワール山の風景。挑んだ相手が悪かった。
                

Commented by デビグマ at 2018-03-17 14:33 x
油絵具の使いかた、油抜き等、なるほどって感じです。昔塗ってみて全然乾かなかったのは、仕組みを理解してなかったからなのね。おそらく今後油絵具を使う事は無いと思いますが、興味深い内容でした。
Commented by hn-nh3 at 2018-03-18 06:31
ふふ。デビグマさんも油絵の具には振り回されたのですね。
油抜きしないと一週間以上乾かなかったりしますから。
実は私もこの前のSUMICONの時まで油抜きの原理を理解しておらず、それでひどい目にあったのです。

それまでは、油抜きは絵の具のツヤの原因になる油を減らすためなのかな?というぐらいの認識で、車体のウェザリング、フィギュアの服の塗装をそれでやったところまでは良かったのですが、肌の塗装の時に、AMMOのオイルブラッシャーで肌色セットというのがあった魔が差して使ってみたら、大変なことに。模型用に調合されているとのことで油抜きせずに使ったら、全然乾かず....結局写真撮影した時も実は生乾きの状態でした(笑)

その時にどうやったら早く乾くのかとか調べ回って、油絵の具の特性を理解した次第。
それから楽しくなりましたね。油絵の具で大体のことはできてしまうから、ウェザリング専用塗料はあまり買う必要がなくなりました。
Commented by かば◎ at 2018-03-18 08:32 x
まるでスーラの絵のようになってる!
単色塗装のAFVは、いかに「のっぺりと一色になっている部分をなくす」かが勝負だと思っています。
と思いつつ、自分で塗る時には「ふっ。今回はこれくらいで勘弁してやるぜ」(その実、単純に飽きてきている)と、適当なところでやめてしまうのですが、これは「容赦なし! まさにベスポシャドヌイ!」って感じですね。

ちなみに我が家のヴィッカースは、ようやくグレー一色になりました。
Commented by hn-nh3 at 2018-03-18 22:53
こんなのと一緒にするなと、スーラに怒られますね(笑)
しかし考えてみればフェーディング(ドッティング)で原色の絵の具を小さな点で配置してそれらの色が完全に混ざり合わないように塗り伸ばしていく塗り方は、印象派の画家が始めた「視覚混合」の技法がそのオリジンなのかもしれませんね。

戦車を緑色に塗ったのなんて高校生の時にタミヤのT-34(ピロシキ砲塔)をダークグリーンで塗装して以来。まあ、もっとあっさりとした塗り方のほうがリアルな気もしますが、今回は脱カラーモジュレーションというテーマで実験中、というところです。

かば◎さんのヴィッカース完成も楽しみにしてます。迷彩が大変そう...
by hn-nh3 | 2018-03-16 19:15 | T-60軽戦車 | Comments(4)