フェーディング2回目(油彩):T-60 (Plant no.264) vol.12
2018年 03月 16日
車体下部からフェンダー、車体上面などに埃色をかぶせて、使い古されて全体に汚れが染み付いた雰囲気になるようにニュアンスを調整します。
この部分をシャドウ吹きで暗色に塗装する手法もありますが、写真を撮ったときに車体下部が真っ黒に落ちてしまうことが多いから自分的には避けてます。
いわば「長期汚れ」ともいう色調の変化を与えてみました。このあとクリアを吹いてツヤを調整、ピグメントで「短期汚れ」を表現します。
何よりいいところは、塗った絵の具が乾いて定着すると、上から塗り重ねても下の層の色が溶剤で溶けることはありません。だからウェザリング中に下の色が滲んだり変なツヤが出てきたり塗膜が剥げたりとかのトラブルもないです。油彩はウェザリングに最適。
溶剤にはオドレスペトロールを常用。今回はスケジュールの都合もあって、アプタイリングの速乾シンナーを使ってみました。乾燥時間に劇的な違いはないのですが。
油絵の具の乾燥の原理について、自分の知ってる範囲で書き留めておきます。
模型用塗料と油絵の具はその特性が全く違います。模型用塗料(ラッカー、エナメル、アクリル)は顔料を揮発性の溶剤でとかして、溶剤成分が揮発すると塗料も固まる(乾燥する)仕組みです。乾燥後に溶剤で再び溶かすこともできます。それに対して油絵の具は顔料のペーストに練りこまれた乾性油が酸素に触れることで酸化重合反応を起こして凝固するものです。
塗るときにペトロールやターペンタイン(テレピン油)などの揮発性の溶剤で希釈するのは、ペーストを希釈して薄く塗り伸ばしやすくしているだけで、模型に塗った溶剤の揮発成分が乾いても薄い絵の具の層自体はまだ固まっておらずべとついたりするのはそのためです。絵の具に含まれる乾性油が固まるまでにごく薄く塗っても半日から1日程度。厚塗りすると、絵の具によっては一週間たっても固まってないこともあります。この乾燥(凝固)の遅さが色のブレンディングなど精緻なグラデーション作りには役に立つのですが、ウェザリングの場合は塗った絵の具が2日も3日も乾かないと次の作業ができず仕事にならないので、それで「油抜き」をする訳です。
チューブから出した油絵の具のペーストに含まれる乾性油をダンボールに吸わせるなど減らして、油の酸化重合による凝固が早まるようにします。油を抜けば抜くほど絵の具の「乾燥」は早くなります。乾性油には完成後のツヤを出す効果があって油絵特有の重厚感にもなるのですが、模型に使う場合はこのツヤが邪魔なので油を抜いた方が扱いやすくなります。じゃあ乾性油なんて模型では邪魔じゃん、油なしの油絵の具があったらいいね!となりそうですが、油絵の具にとってはこの乾性油が顔料の定着材でもあるので、油抜きした絵の具で油絵を描いたら遠い未来に絵の具が剥落..なんてことに。
ピグメント的に使うなら仮に剥げてもまあいっかとなりますが、苦労して塗ったフィギュアの瞳が目から鱗が剥がれるように落ちたら泣いちゃいます。だからフィギュア塗装で油絵の具のグラデーション塗装をするときは油抜きはそこそこに、ウェザリングは油抜きをしっかりしたものを使うなど、時と場合に応じて使い方を調整。
あ"ー 上部転輪が曲がってる...
模型用塗料に比べて乾燥が遅いというのはネックになりますが、フェーディングや墨入れのグラデーションを作るのはやっぱり他に変えがたいものがあります。固まらないうちならペトロールで拭えば色を落とせるし、固まったら上から塗り重ねても下の色が溶けたりしないし。ちょっと作業しては休んでブログ書いたりの(ダラダラするのが得意な)モデラーにとっては便利な画材です。
何を隠そう自分も油絵の具を使い始めて1年も経ってない初心者。遠い昔、高校生の時に一度使ったきり ..「油絵の使い方を覚えるために有名な絵の模写から始めよう!」と美術の先生の言葉にそそのかされて描いて、こりゃ才能ないね..と思ったクチです。模写した絵が後期印象画の巨匠、セザンヌが描いたサント・ビクトワール山の風景。挑んだ相手が悪かった。
何を隠そう自分も油絵の具を使い始めて1年も経ってない初心者。遠い昔、高校生の時に一度使ったきり ..「油絵の使い方を覚えるために有名な絵の模写から始めよう!」と美術の先生の言葉にそそのかされて描いて、こりゃ才能ないね..と思ったクチです。模写した絵が後期印象画の巨匠、セザンヌが描いたサント・ビクトワール山の風景。挑んだ相手が悪かった。
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デビグマ
at 2018-03-17 14:33
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油絵具の使いかた、油抜き等、なるほどって感じです。昔塗ってみて全然乾かなかったのは、仕組みを理解してなかったからなのね。おそらく今後油絵具を使う事は無いと思いますが、興味深い内容でした。
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hn-nh3 at 2018-03-18 06:31
ふふ。デビグマさんも油絵の具には振り回されたのですね。
油抜きしないと一週間以上乾かなかったりしますから。
実は私もこの前のSUMICONの時まで油抜きの原理を理解しておらず、それでひどい目にあったのです。
それまでは、油抜きは絵の具のツヤの原因になる油を減らすためなのかな?というぐらいの認識で、車体のウェザリング、フィギュアの服の塗装をそれでやったところまでは良かったのですが、肌の塗装の時に、AMMOのオイルブラッシャーで肌色セットというのがあった魔が差して使ってみたら、大変なことに。模型用に調合されているとのことで油抜きせずに使ったら、全然乾かず....結局写真撮影した時も実は生乾きの状態でした(笑)
その時にどうやったら早く乾くのかとか調べ回って、油絵の具の特性を理解した次第。
それから楽しくなりましたね。油絵の具で大体のことはできてしまうから、ウェザリング専用塗料はあまり買う必要がなくなりました。
油抜きしないと一週間以上乾かなかったりしますから。
実は私もこの前のSUMICONの時まで油抜きの原理を理解しておらず、それでひどい目にあったのです。
それまでは、油抜きは絵の具のツヤの原因になる油を減らすためなのかな?というぐらいの認識で、車体のウェザリング、フィギュアの服の塗装をそれでやったところまでは良かったのですが、肌の塗装の時に、AMMOのオイルブラッシャーで肌色セットというのがあった魔が差して使ってみたら、大変なことに。模型用に調合されているとのことで油抜きせずに使ったら、全然乾かず....結局写真撮影した時も実は生乾きの状態でした(笑)
その時にどうやったら早く乾くのかとか調べ回って、油絵の具の特性を理解した次第。
それから楽しくなりましたね。油絵の具で大体のことはできてしまうから、ウェザリング専用塗料はあまり買う必要がなくなりました。
まるでスーラの絵のようになってる!
単色塗装のAFVは、いかに「のっぺりと一色になっている部分をなくす」かが勝負だと思っています。
と思いつつ、自分で塗る時には「ふっ。今回はこれくらいで勘弁してやるぜ」(その実、単純に飽きてきている)と、適当なところでやめてしまうのですが、これは「容赦なし! まさにベスポシャドヌイ!」って感じですね。
ちなみに我が家のヴィッカースは、ようやくグレー一色になりました。
単色塗装のAFVは、いかに「のっぺりと一色になっている部分をなくす」かが勝負だと思っています。
と思いつつ、自分で塗る時には「ふっ。今回はこれくらいで勘弁してやるぜ」(その実、単純に飽きてきている)と、適当なところでやめてしまうのですが、これは「容赦なし! まさにベスポシャドヌイ!」って感じですね。
ちなみに我が家のヴィッカースは、ようやくグレー一色になりました。
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hn-nh3 at 2018-03-18 22:53
こんなのと一緒にするなと、スーラに怒られますね(笑)
しかし考えてみればフェーディング(ドッティング)で原色の絵の具を小さな点で配置してそれらの色が完全に混ざり合わないように塗り伸ばしていく塗り方は、印象派の画家が始めた「視覚混合」の技法がそのオリジンなのかもしれませんね。
戦車を緑色に塗ったのなんて高校生の時にタミヤのT-34(ピロシキ砲塔)をダークグリーンで塗装して以来。まあ、もっとあっさりとした塗り方のほうがリアルな気もしますが、今回は脱カラーモジュレーションというテーマで実験中、というところです。
かば◎さんのヴィッカース完成も楽しみにしてます。迷彩が大変そう...
しかし考えてみればフェーディング(ドッティング)で原色の絵の具を小さな点で配置してそれらの色が完全に混ざり合わないように塗り伸ばしていく塗り方は、印象派の画家が始めた「視覚混合」の技法がそのオリジンなのかもしれませんね。
戦車を緑色に塗ったのなんて高校生の時にタミヤのT-34(ピロシキ砲塔)をダークグリーンで塗装して以来。まあ、もっとあっさりとした塗り方のほうがリアルな気もしますが、今回は脱カラーモジュレーションというテーマで実験中、というところです。
かば◎さんのヴィッカース完成も楽しみにしてます。迷彩が大変そう...
by hn-nh3
| 2018-03-16 19:15
| T-60軽戦車
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