断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

はじめてのKV-1

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KV-1 1942 (写真出典:Bundesarchive/wikimedia commons)

先日チラ見せしたトランペッターのKV−1。仮組みで箱に戻すつもりが、ちょっぴりやる気モードにシフト。キットの検証やらディテールの考証など、あれこれ調べているうちに気がついたら、いつのまにか接着剤とか使って組み立て始めている始末。

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KV-1戦車のキットといえばタミヤの往年の名作キットやトランペッターから各種バリエーションがリリースされてますが、自分で作るのは実は初めて。出戻り後もそれ以前の出奔前もなんとなく縁がなくて、今回再販されたトランペッターの「mod.1942 Heavy Cast Turret」が自分にとってはKV-1入門キット。

キットのタイトルは少し変ですね。車体後部のオーバーハング部分が丸型のタイプに、装甲強化前の標準型鋳造砲塔を組み合わせた1941年型と言われるタイプ。現存車両としては、アメリカのアバディーン、イギリスのボービントンに残っているのがこのタイプですね。砲塔後部機銃マウント周りに補強リブがなく、砲塔基部下端が側面の増加装甲外面の内側に納まっているのが初期の標準型鋳造砲塔の識別ポイント。

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タミヤのキット「KV-1 C型」もこのバージョン。これらの車両を取材したと思われます。エンジンのアクセスハッチはドーム状のふくらみのあるタイプ。

現存車両 Walkaround:

d0360340_09013096.jpgこれに対して装甲強化型砲塔 1942年型といわれるのはフィンランドのパロラに残るこの車両のバージョン。
砲塔機銃座の周りの補強リブ。鋳造の湯口の切断痕は大きめ。車体後部装甲板はフラット。エンジンのアクセスハッチはフラットで砲塔リングの保護ガードが溶接されてるタイプ。
(現存車両写真出典:wikimedia commons)

これらのバージョンを含めた各年式の違いをビジュアルでざっくりと紹介しているページはココ。

日本語のサイトでは伝説的なサイト:T-34 maniacs の姉妹板で KV maniacs というのがあったのだが、サーバーの関係で既に閲覧できなくなっているのが残念。
そんなことになる前にちゃんと勉強しておけばよかった。少年老い易く学成り難し..

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手持ちの資料としては、Tankograd のKV−1(LateVariants)/Soviet Special No.2003 が良本。1/35スケールの3面図。記録写真、博物館車両のwalkaroundなどなどコンパクトによくまとまってます。

d0360340_09581937.jpgその他には、Peko本の KV TANKS ON HTE BATTLEFIELD。グランドパワー2017.8月号別冊ソ連軍KV重戦車、などが手元に。
まあ、あまり大きな声ではいえないけど、Wydawnictwo MILITARIA のKV(KW)シリーズ:no.163、168、320 なんかはロシア語サイト経由で.....

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トラペのKVシリーズにはトラップがいくつかあるらしい。その1。第一上部転輪が後ろすぎる。3mmほど前に移動させる必要あり。写真は取付用の穴を開け直した修正後。6つ穴があるうちの2つしか使わないので、修正も2箇所だけ。露出する不要な穴は伸ばしランナー充填で塞ぎ。

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その2。駆動輪の歯の取り付けボルトの位置関係がずれているという罠。スプロケットの歯とボルトが一対一対応するのが正解。
キットのリベットを削ぎとって、下穴あけてMasterClubのレジンボルト(1mm)を植え直し。とりあえず1個のみ試作。
実車の写真を見ると、スプロケットの歯のリングとボルト部分のリングの段差がキットは少しオーバースケール。スプロケットの厚みを削って段差を低くするのがイメージ的にはよさそうだが履帯との嵌合を検証する必要があるので、ひとまず保留。

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その他、気になるところとしては、キットの全鋼製転輪(写真下)のリムが厚ぼったい。鋼製上部転輪も同様。誘導輪(写真上)はちゃんと薄いところは薄く表現されているので、プラスチックの成形厚などの技術的な問題ではなさそう。

車両によって違いがある部分としては、車体前面の操縦手バイザー周りの増加装甲板は、上端が車体天板よりも突き出した納まりが鋳造砲塔バージョンでは一般的か。タミヤのキットが参照したと思われるボービントンの車両は増加装甲上部の角が面取りされているちょっと珍しい仕様。

ちょっと悩ましい問題。エンジンデッキにある2つの丸型ハッチは年式によるバリエーションの変遷がある部分ですが、このキット(1941年モデル)では別キットの1942年モデルとパーツランナーを兼用したのか、エンジンデッキの丸型ハッチはデッキより1段盛り上がってハッチの縁にテーパーがついたタイプが入っています。1941年型車体ではエンジンデッキと同一面で納まり、縁にテーパーのないハッチが一般的と思われます。テーパー付きハッチの使用例があるのかは未確認。
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エンジンのアクセスハッチはドーム型のふくらみのあるタイプが入っています。これは上記の博物館車両でも確認できる仕様で正解なのだけど、時期によっては(1942年型車体で一般的な)フラットなタイプを1941年型車体でも使っている事例が確認できます。MilitariaのNo.320 KVシリーズ vol.3 P62 の記述によると、1941年8月よりフラットなタイプが使われたとあるので、生産途中で変更があったのか。確かにフラットタイプを装備した車両をPeko本でも確認できます。ただ1942年車体の溶接砲塔のバージョンでドーム型のふくらみのあるハッチを装備している事例も見たことがあるので、新部品の普及状況がどのようになっていたのかはもう少し事例を集める必要がありそう。

そもそもこのタイプのKVを作る理由になっている購入済みのMasterClubのKV用700mmスプリットタイプの履帯を使おうとすると、1941年車体のエンジンデッキのハッチはフラットなタイプにする必要があるかもしれない。

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キットに入っている鋳造砲塔は初期の標準型。後期の装甲強化型に比べて砲塔基部の膨らみがなく、バッスル下面の鋳造湯口は控えめ。ただキットのものは湯口が表現されてはいるものの控えめすぎるので、エポキシパテなどで少し強調したほうがいいかも。
砲塔の天板は装甲強化型の砲塔では組み継ぎになっているタイプと従来の付き合わせの2パターン。初期の標準型でも事例をあれこれ砲塔側面天端のラインを見てると組み継ぎタイプも存在してそうな予感。ただし写真の限られたアングルでは装甲強化型との識別が難しいこともあり、このあたりはもう少し検証が必要。

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ん? この写真の砲塔は天板が組み継ぎになっているタイプかな? 一見して標準砲塔にも見えたものの、砲塔下面のラインと側面の増加装甲との関係を見ると装甲強化型のようにも思える。砲塔側面の勾配が変わる部分が(マーキングで)わかりにくいので標準型なのか装甲強化型なのかは判別しにくい。砲塔の原型が複数あるのかディテールが少し異なるようにも見える。あるいは標準型/装甲強化型という分類以外にも細かなバリエーションが存在しているのか..

フェンダーステイの基部は、キットではあらかじめ車体にモールドされたボルトジョイント用のフランジを削り落として溶接接合のディテールにするように指示。1941〜42年型ではこの仕様が一般的かとも思うが、左の写真の事例のようにボルト止めのタイプもあった様子。ただしこの車両。操縦手ハッチが以前の皿形のタイプなので中古の車体と新型砲塔を2個イチにした車両かもしれない... フェンダーステイの基部の話。ミシリンのキットレビューでもフランジの有無の話があったように記憶 ...ということでモールドの削り落としはもう少し考えてから。

とりあえずここまでが製作前の予習の成果。

Commented by かば◎ at 2018-04-20 08:59 x
「KV maniacs」、一応ローカルにデータは全部残っていますが、今となっては、「あーここが違う!」とか「これは誤解してる!」という箇所が多すぎて。

近々、1942年型+装甲強化型砲塔(でもキット名称は軽量砲塔)のレビューを「かばぶ」に上げたいと思います。
Commented by hn-nh3 at 2018-04-20 17:14
あぁ..かば◎さん。お忙しいのに呼び出してしまったみたいですみません。 KVを語る上では考証史としての「maniacs」に言及しない訳にもいかなかったもので..
どんなことが話題になっていたかとかBBSはざっと斜め読みしました。装甲強化型砲塔のペリスコープの位置の話とか ^^

KVも深い沼... 文献資料は記述のソースにたどり着けないと検証のしようもなかったり、そもそも語学力に乏しいこともあり、もっぱら事例の観察に頼るだけなのですが、KVは写真映えするアイテムだったのか当時の記録写真も膨大で、眺めているだけで日が暮れてしまいます(笑)
by hn-nh3 | 2018-04-19 20:01 | KV-1戦車 | Comments(2)