フックとラック(ロレーヌシュレッパー 15cm自走砲 その2)

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ロレーヌシュレッパー 15cm自走砲 制作メモ、その2
プラストラクトのプラ棒(0.3mm×0.8mm)を使って小さなラックを作ってみた。この手の細工は真鍮など金属板を使うのが定番ですが、金属板を曲げてエッジを出すのは以外と難しいところもあるので、プラ板の積層で表現。微細工作の達人hiranumaさんに影響されたというのもあるかな。

曲げた部分プラの弾力で開いてしまうので、この後に瞬間接着剤を塗って開かないように固めました。で、何を作っているのかというと、この写真。

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ノルマンディ戦で鹵獲された車両(右2段)を見ると、戦闘室装甲板の右側面に何かのラックらしきもの。これは何かしらと考えていて思い当たったのが、左の写真。ロレーヌシュレッパ車台の対戦車自走砲Marder l の戦闘室内部にMP40をかけるためのラックがついてます。MG34をかけるためのものの可能性もありますが、自衛用武器をかけるための着脱式のラックと思われます。ラックは2段式のようにも見えますが、この写真だけでは詳細は不明。

ヴェスペやグリレなどの自走砲には戦闘室内にMP40用のL型ラックが標準装備になっていることもあり、このロレーヌシュレッパーにも何らかの小火器用ラックが装備されていたのでは?と考えられますが、それがコレ、なのかも。

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接着してみました。こんな感じかなという当たらずともとも遠からずのディテールです。MP40であればマガジンポーチ、MG34/42であればドラム弾倉のラックを車内のどこかに装備しているはずですが、資料がないので保留。

次は車体側面に点々とついている小さなフックを自作します。

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キットにはレジンで小さなフックが用意されています。なかなか繊細な出来ですが、それでも太さはオーバースケール。
Dragonのキットなどではエッチングパーツでこのフックが用意されてたりもしますが、エッチングの厚みのなさはそれはそれで悩ましく、今回は0.18ミリの銅線で自作してみました。1時間で20個。所要時間は1個あたり3分。

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制作過程。極小のパーツを効率よく量産できるように加工のジグを用意しました。カッターの替え刃を両面テープでプラ板に固定してスリットをつくり、そこに銅線を定規で押し込んでフック型にプレスするという仕組み。

前に自作したときは、真鍮板を加工して簡易ジグを作って0.2mmの真鍮線をプレスしたのですが、同じ素材だとダメですね。使っている間にジグの真鍮材が鈍ってきてしまってすぐにエッジがでなくなって結局はプレス後にピンセットで修正するというめんどくさいことになったので、今回はその反省を踏まえた材料の選択。プレス型は硬いカッターの刃、曲げるのは柔らかい銅線の組み合わせ。もうちょっと写真映えするかっこいいジグにしたかったんですけどね..

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フックの数はアフリカ戦の車両では戦闘室車体上部:前部左右に各2、側面に各3、後面3。ノルマンディ戦になると写真右の車両のように側面のフックが5個の車両が多くなりますが、左の車両など3個のままの車両も確認できます。左の車両はPanzerwrecks8 Normandy-2に掲載の別アングルからの写真で側面のフックが3個であることがわかります。有名なジグザグ迷彩の車両も側面フックが3個ですね。これらの車体上面のフックは大戦後半の車両によくみられる偽装ネット装着用というより戦闘室上面に防雨シートをかけるためにつけられたもの。アフリカでは気にならなかったけど、ノルマンディ地方だと、側面フックが3個だとシートに溜まった雨が車内に入ってしまったりしてフックを追加したのかしら。

ノルマンディの車両では戦闘室前面の予備転輪ラックの下に偽装ネット用と思われるフックが追加されているのが確認できます。いずれにせよ、残っている事例写真が少ないので標準仕様かどうかは不明。その他細部の仕様も、生産途中に改良されたものなのか現地で追加されたものなのか、車両ごとに微差があったりします。

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だいぶ形になってました。ブロック毎にある程度工作は進めてあったとはいえ、レジンキットだと組み立ては大変。パーツの成形精度は素晴らしいですが、勘合がゼロタッチで逃げがなったりするので組み立てには難儀しました。
細部の調整など組み立て完了まであと一息。いやー大変、もう不眠不休ですね...(嘘)

締め切りがせまってお尻に火がついてからでないと本気だせないのは、小学生の頃からの変わらない習慣。夏休みの絵日記に記録する毎日の天気を「復元」するのは大変でしたね。当時はインターネットなんてなかったから、古新聞を引っ張り出して天気欄を集めたり、思い出せる出来事の記憶を時系列にたどって天気を推測したり。。「考証好き」はその頃に身についたものかも。

Commented by hiranuma at 2018-10-28 16:34 x
ラックは、私ならランナーについているNo.の板状の部分をヤスリ掛けしてナイフで刻みながら作ると思います。
ラックをプラ棒で作って瞬間接着剤で固めるというのは新鮮な方法です。
フックを0.18mmの導線を加工したのはサイズ的にぴったりでしたね。
これが0.2mmだと太過ぎ0.15以下だと細過ぎです。いつも迷った時は35倍したらどのくらいになる?と自問しながら検討をつけています。
加工の仕方がスマートです。
これどこかで使いたいです。
伸ばしランナーでも可能かしら、。
Commented by hn-nh3 at 2018-10-28 18:20
↓hiranumaさん、さすがです!
>>ランナーについているNo.の板状の部分をヤスリ掛けしてナイフで刻みながら...

プラ材の弱点は曲げてつくった形をどう保持するか...最初から曲線が成形されたものをベースにすれば、その心配がなくなる。なるほどー

瞬間接着剤で部材を固めるのは苦し紛れのアイディアです。
パテ盛り部分の強度アップに瞬間接着剤でコーティング+サンディングはよくやるので、その応用で考えてみました。

手すりなどを真鍮線に置き換える時、実寸で何ミリかとかはよく悩みますね。0.3mmでは細すぎ0.4mmでは少し太め ..0.35mmの真鍮線が欲しい!とか。今回は手すりがレジンでは心もとなかったので0.3mmの真鍮線で置き換えましたが、本体への接着面を少し肉盛りして溶接したディテールを表現したいところ。いつもは伸ばしランナーを流し込み接着剤でとかして表現するのだけど、今回は相手がレジンだから...エポキシパテを使うことになるかなあ。

今回作ったフック加工用ジグで伸ばしランナーが使えるか、後で試してみますね(^^)
Commented by かば◎ at 2018-10-31 09:16 x
極小の部品なのに、車輛に付けると意外に大きく見える……。

というところで、改めてこの車輛のコンパクトさが認識できますね。

そういえばこのところしばらく、レジンキットから遠ざかっています。我が家の古いレジンキットの在庫も、多少は完成させないと。
Commented by hn-nh3 at 2018-10-31 10:59
>>車輛に付けると意外に大きく見える

ギクッ! 実はこれでもちょっとオーバースケール。
溶接部の脚の長さが少し長すぎるのもその印象を強くしているのかも。これはわかっていたのですが、接着強度の確保のため、少し迷いました。伸ばしランナーで作ってあれば、接着後に脚の切り詰めも容易だったかな....

いずれにせよ、15cm野砲を積むには、えっ?と思うくらい小さな車両です。当時の記録フィルムを見ても、駐鋤があってもぐらんぐらんに揺れて、命中精度は期待できなかったでしょうね。サスペンションも元来の用途(兵員輸送車)からして、スプリングが柔らかめなんでしょうね。
同じロレーヌシュレッパー車台に7.5cm対戦車砲を載せたMarder l も、射撃時にずいぶん揺れて、次弾発射に影響したんじゃないかと想像します。
Commented by かば◎ at 2018-10-31 18:02 x
>>実はこれでもちょっとオーバースケール

うははは。それは気付きませんでした。
むしろ、MP40ラックの間隔が、「短機関銃を引っ掛けるだけなのに、(車両に比べて)こんなに幅があるのか!」と思ったのがメインです。

>>サスペンションも元来の用途(兵員輸送車)からして、スプリングが柔らかめ

その昔、うちの亡父が「シトロエンはバネが柔らかくて、乗るとフワフワする」と言っていたことがあります。
フランス人の好みでさらにサスが柔らかめだったりして。
Commented by hn-nh3 at 2018-11-01 05:27
上面の写真を1/35キット原寸大に変倍して、ラックの設置幅を割り出してます。MP40短機関銃が掛けられるかいちおうテストもしました。ただ、Marder lでの使用例の写真でも見られるようにMP40の折りたたみストッックを伸ばした状態のほうが掛けやすいですね。おそらくはMG34/42機関銃を掛けることも考えての設置幅と推測します。

>>「シトロエンはバネが柔らかくて、乗るとフワフワする」

シトロエン2CVの開発コンセプトに”生卵をいっぱいいれたカゴを載せて農道を走っても卵が割れない”というのがあったようで、砂利道や石畳の道を走っても乗りごごちがいいようになってるんですかね。

ルノーR35の水平スプリングも、不整地走破能力というより田舎道を軽快に走るのが得意そうに見えますし。
ティーガーやパンターに実際に乗ったことはないのでわかりませんが、やっぱりアウトバーンでの高速走行を考えたドイツ車のごとくサスペンションは固めなのかしら。
Commented by かば◎ at 2018-11-04 20:21 x
(話が脱線しますが)

>>シトロエン2CVの開発コンセプトに”生卵をいっぱいいれたカゴを載せて農道を走っても卵が割れない”というのがあったようで

昔、友人が2CVに乗っていましたが、確かにあれはサスペンションが柔らかく、
人が乗っていないと車のオシリが浮き上がって妙に不格好なんですよね。
人が乗ると車高が沈んで、やっと車っぽくなるというか。

乗るとダッシュボードの脇に変なノブがあって、キコキコ回すとフロントウィンドウの下のフラップが開いて風が入るとか、サイドウィンドウは中折れになっていて、下側を「ぱったん」と上にはね上げて開けるとか、シフトチェンジも「レバー」じゃなくて「ノブ」だとか……いろいろカルチャーショックな車でした。

もっとも、それ以上に印象に残っているのは、駅前に停めようとしたら縦列駐車にまったくギリギリのスペースしかなく……とりあえず鼻先を突っ込んで停め、降りてから、友人と二人で車の後ろを持ち上げてズルズルと列に押し込んだことでした。

>>ルノーR35の水平スプリングも、不整地走破能力というより田舎道を軽快に走るのが得意そうに見えますし。

ちなみにオチキスのスプリングとは、「ゴムばねかコイルバネか」の違いだけで大差がないように見えますが、バネの有効長の違いのせいか、オチキスのサスはだいぶ具合が悪かったそうです。
Commented by hn-nh3 at 2018-11-05 05:53
>かば◎さん

オチキスH35/39はドイツ軍が東部戦線に持って行ったり自走砲車台に使ったり、ルノーR35より使い勝手が良かったのかなと思ってましたが、そうでもなかったのかな。
コイルスプリングの仕組み自体は現在の車のサスペンションでも多様されてるから、やっぱり有効長などに不足があったんでしょうね。

実はブラチモデルのルノーR35も持ってるんですが.... これもいつか作らないと(汗)

2CVの「シフトノブ」の使い方、Youtubeで調べました。笑えるギミックです。インパネにノブがついてるので慣れればそれなりに使いやすそうですが。つねに視界に入ってますし。

>>友人と二人で車の後ろを持ち上げてズルズルと列に押し込んだ

なんてお行儀のよいこと。フランス人がそれをみたらNINJAだと賞賛しそう。彼らは車に乗ったまま前後の車をバンパーで押し込んで駐車スペースをつくるとか。何かの映画でもそんなシーンあったな。
by hn-nh3 | 2018-10-28 09:38 | ロレーヌシュレッパー系列 | Comments(8)