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断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

雨のノルマンディ

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ノルマンディに展開した第654重駆逐戦車大隊。ヤークトパンターの搭乗員が傘を差す有名な写真。

本当はロレーヌシュレッッパー自走砲の乗員が雨の中で傘を差しているシーンを作りたかった。塩ビ板をヒートプレスしたら開いた傘ができるかな、とあれこれと構想は練っていたものの結局、時間がなくなってしまい断念。ジオラマのタイトルは「雨のノルマンディ」と決めてたのに。

戦場で傘を差している写真は意外なほど少ない。確かに傘なんか差してたら片手がふさがってしまって武器の操作に支障をきたすから、雨を凌ぐにはレインコートを着るのが正解なんでしょう。

ヨーロッパで傘を差すのは英国人だけ、という話もあるくらいヨーロッパは傘を差す習慣がないみたい。
調べてみると、傘はあちらでは雨傘ではなく日傘として発展して、それをイギリス人が雨の日にも使うようになった..という歴史があったり、フランスの子供は危険防止のため傘を持たされないこともあり、傘を差す習慣が身につかない、という記事もあった。コートで間に合う雨では傘は使わないのがあちらの流儀なのか。そういえばヘルシンキに行った時、季節は秋で何度か雨にh降られたけど、みんなレインパーカー着て傘もささずに歩いてたのを思い出します。

そんなこともあってか、模型に傘を使いたいと思って探してみたものの、傘が付属するキットの少ないこと。MiniArtのフィギュアやジオラマアクセサリーでは帽子やステッキ、カバンの類はいろいろなキットにアクセサリーとしてパーツ化されているけど傘となると....
ブロンコから「民間用スーツケースと傘のセット」というそのものズバリのキットも出てますが、閉じた状態の傘はちょっと造形が硬いんですよね。他にもいいのがないか探していたら、MasterBoxの「ヨーロッパ 女性用自転車+婦人」セット(MB35166)に女性用の傘が入っているのを発見。

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早速、調達しました。畳んだ傘の襞の柔らかい雰囲気があって、ディテールは悪くないです。傘の先の部分が金型の抜きの関係でモールドが甘くなっているのを少し削り込んで調整すればそれで十分。このくらいエポキシパテこねて作れるでしょとか、製品使うなら露先の突起を伸ばしランナー植えて再現しなよ、とか模型の神様がささやく声が聞こえてきますが、それはまた今度ね。

夏の初めに雨のシーンを再現しようと思い始めた頃、ノルマンディ地方に実際、雨は降ったのか?と気になって、1944年6月6日のD-Dayの前後の天候を調べてみました。


ありましたよ、天気図が。低気圧の前線が6月4日から5日にかけてノルマンディ地方を通過しています。それで海は大荒れ、当初は6月5日を予定していた上陸作戦も延期。ドイツ軍も油断していたようです。上陸作戦は6月6日の早朝に始まります。

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ジオラマ製作は断念したものの、車両のウェザリングとあわせてちょっとした演出をしてみます。連合軍のノルマンディ上陸の前日、6月5日の様子を小道具で追加製作。写真の右2つはトラベリングクランプの操作桿(破損紛失してしまった部品の再生)、車内にセットされている射標(射角補正表)はプラ板でベースを作った上にPassionModelsの自走砲デカールセットを使用。
そして写真左の小物。雨の日に借りた傘、塗装は油彩で。そして前回の記事で紹介した読みかけの小説、サンテジュグペリの「夜間飛行」

乗員はドイツ兵なのに何故、フランス語で書かれた本を読んでいたのだろう。
雨を心配して傘を持って来てくれた地元の女性との出会いが「彼」にフランス語の本を読ませたとも考えられるし。「彼」はアルザス地方の出身でドイツ軍に招集されたドイツ系フランス人だったから。という想像もできる。全てフィクションではあるけど。

7月31日にサンテジュグペリが飛行中に行方不明になることは、本を読んでいたその時には想像もしなかっただろうし、8月12日に彼のいる部隊もファーレーズで包囲されてしまって、そのニュースを聞くこともなかったのかもしれない。...それも想像の領域。

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Commented by かば◎ at 2018-12-11 20:47 x
確かもう20年以上前のこと。
東京AFVの会に、この「乗員が傘を差しているヤクパン」の情景作品が出品され、何か賞を受けました。
その時、この写真の存在を知らない審査員が「(情景模型としてよく出来ているので受賞したが)実際には兵士が戦場で傘を差すことはありえないので、その辺はよく勉強した方がいい」というようなコメントをしたのを覚えてます。
受賞者はそのあとの受賞の弁で「でも写真がある」とは切り返さず、「わかる人にはわかっていただけると思いますが……」と、オトナな対応をしていましたが。

というような、この写真にはちょっと思い出がある私なのでした。……脱線話失礼。
Commented by hn-nh3 at 2018-12-12 05:14
東京AFVの会はなんでクリスマス(正確には直近の休日)に開催されるんでしょうね。「..私と戦車のどっちが大事なの?」「...戦車」 「....」という修羅を超えてみんな参加するのですよね(^^!)

雨傘のヤクパン写真にそんな逸話があったとは(笑)
兵士が傘を差すのを「考証ミス」とするのは責められる話ではないのでしょうが。。 いろいろな意味で珍しいシーンですよね。だからこそ当時のPKカメラマンも雨の中でわざわざ写真に残したと想像します。

そもそも戦場での雨の写真が少ないんですよね。当時は雨があまり降らなかったと錯覚するくらい。
雨はカメラ機材にとって大敵(それこそPKカメラマンも傘ではなくレインコート着ての撮影..)だし、暗くて露出不足になりがち、例の雨のヤクパン写真も、原版のもう少しクリアなフォーカスですが、それでもシャッタースピードが遅くてブレるぎりぎり。乗員が傘を差してなかったらスルーしてたでしょうね。
Commented by hn-nh3 at 2018-12-12 06:13
かば◎さん、スミコンBBSでのコメントありがとうございます。簡潔にならないレスを先にこちらで。

ちょっと前の記事(タビメモ)でアルザスの風景の写真をアップしたのは伏線でした(^^) 旅で案内してくれたドイツ人は「エルザス」って言ってましたね。

教科書で読んだドーデの「最後の授業」はどこかひっかかりましたね。ドイツ領への変更でフランスが話せなくる最後の日というナショナリズム的な話のようでいて、子供達はそもそもフランス語を満足に話せないという奇妙なねじれ。
教科書として何を伝えたかったんだろうと不思議でしたね。

模型の設定の話に戻ると、普仏戦争でアルザスがドイツに割譲された1871年から1919年に第一次大戦後再びフランス領となるまでの50年間に育った「彼の両親」は(そもそもドイツ語だから)ドイツ語を普通に話していて、「彼」はフランス領の時期に教育を受けているから学校ではフランス語、家ではドイツ語だったのか。
「招集されてドイツ国籍を与えられた、拙いフランス語を話すアルザス出身のドイツ兵」と書くと訳わからなくなるから(公用語としてフランス語の教育を受けたため)ドイツ語もうまく話せないドイツ兵、という表現にはしました。

もちろん、傘と夜間飛行をめぐる僕とあの娘の束の間のエピソードはひとつのメタファーであって、ロレーヌシュレッパー自走砲という独仏流転の兵器に施されたフランス戦車のそれを思わせる奇妙な迷彩に対する自分なりの回答のつもりでした。

ノルマンディに配属された6人に一人はドイツ語を話せない東方部隊の兵士だったという話(by Wiki) や「マルグレ=ヌー」と呼ばれるエルザス出身の兵士のこと、おそらくはベッカーの工場や第21戦車師団で雇用、招集されていたであろうフランス人のスタッフや兵士。

チェコで生産されたヘッツァーの迷彩が戦争末期にドイツ風というより戦前のチェコ軍のものに似たパターンが復活したように、ノルマンディでもフランス軍の迷彩パターンが記憶の古層から浮かび上がるような言語環境があったのではと想像しています。

とはいえ「傘を差して別れ際に振り向く、ちょっと垢抜けない服装のノルマンディのあの娘」のフィギュアを作ってみたかったというのがそもそもの動機ですが(^^!)
Commented by かば◎ at 2018-12-12 10:36 x
実を言うと、私も(その20年以上前の)東京AFVの会まで、この「傘さしヤクパン」の写真自体知らず、その受賞の「講評コメント」「受賞の辞」を「何か変なやり取りだナー」と聞いていたら、同行の知人が隣から「あれナ、まさにそのものの写真があるんだよ」と教えてくれて知ったという……。

「アルザス出身兵」のドラマ、そこまで細かく掘り下げているとは。流石です。

なお、ドーデの「最後の授業」について、sumiconBBSで「主人公の少年がフランス語文法の質問にうまく答えられなかったのは、母語がフランス語ではなかったためというのが最近の一般的解釈」と書きましたが、おそらくドーデ自身は、「偉大なるフランス語を奪われようとしているのに、それを学べる幸運を得ていたことに最後になってようやく気付いた愚かなアルザス人少年」みたいな意識だったと思います。

まあ、もっともドイツ領だった時代には逆にドイツ本国からの「アルザス・ロレーヌ差別」があったらしいので、アルザス人が必ずしもドイツへの帰属意識を持っていたとは限りません。

あるいは、このロレーヌの乗員も、ドイツ兵として徴集されたものの、周囲の本国出身者から「二級国民」扱いされ、それでますますフランス語の本を読みたくなった……それも世間のしがらみを振り捨てるように飛び立つ飛行士の話を読みたかった……なんてこともありそうです。

「習う言葉」と「家で話す言葉」に乖離がある場合、その人にとってどちらの比重が高くなるかは、なかなか微妙ですね。おそらくケースバイケースで、友達と話す場合にどちらの方が多いか、周りの大人はどうか、などの比率でどちらにも傾く可能性がありそうです。

ちなみにテレビに朝鮮半島の専門家としてよく登場している辺真一さんは日本生まれ・日本育ちですが、子供のころ、家で姉弟喧嘩するときは、「姉さん! ※&%$!!」と、日本語と韓国語(のチェジュド方言)のチャンポンだったと言ってました。むしろそこは「姉さん!」のほうが韓国語になるべきなんじゃ……。いや、ほとんど関係ないですが(笑)。
Commented by hn-nh3 at 2018-12-13 05:07
どちらに属するのか(orどちらでもない)というのはいつも難しい問題ですね。EUの議会がアルザスの首都ストラスブールに置かれたのも、むべなるかなという気がします。

(どちらでもない)、と書いて思い浮かんだ「どちらともいえない」という世論調査でよくある回答。比べてみると後者は極めて日本的な概念なのかも(笑)

私は標準語と関西弁のバイリンガルですね(^^)
関西訛りの標準語を話す父の言葉を普通の言葉と思っていたら、こっちの学校の「標準語」を話す悪ガキたちに言葉をからかわれた記憶があります。と言ってネイティブな関西弁も話せないので、帰省したときは努めて「標準語」を話すようにしていましたね。
最近は関西方面での仕事も多く、どちらでもなくバイリンガル的に話せるようになりましたね。「ようせんわ〜」ってどういう意味?って東京から同行のメンバーに翻訳してあげたりしてます(笑)
Commented by at 2019-03-08 21:46 x
 AFVの会での傘さしヤクパンのお話は実に面白いですね。95年5月発行のパンターモデルフィーベルに島脇秀樹さんの傘さしヤクパンのジオラマが折り込みグラビア付きで掲載されているんですよ。記事によると、元写真は90年前後のパンツァー誌、その後はグランドパワー誌にも掲載されたとのことなので、件の審査員と言うか大御所モデラーも見ているはずです。よほど、ドイツ戦車への関心が低い方なのでしょうか?何百万、何千万も殺された東西ヨーロッパの国々でもドイツ戦車とその資料が理解しがたいほど国産されているのにねえ。まあAM誌にはイスラエル戦車は作らないと言う立派なモデラーもいたので(流石に、ノー天気にD9ドーザーを作るモデラーと掲載する編集部は人間としてダメでしょ。一方、洋誌ではドーザーの爪に縫いぐるみを引っ掛けてどういう文脈の兵器かを表現してましたね)、それ自体は良いのですけど。
 批判されていたのが島脇師匠でMA別冊に掲載されるジオラマということは流石にないでしょうが、彼が笑いを堪えて眺めていたということはありそうですね(確か青森の方だから参加していなかったかもしれませんが)。ま、別冊の記事を見て件の大御所モデラーは白いワニならぬ真っ赤なワニに変身したに違いありません。
 さて傘の方ですが、師匠はハセガワ1/24ドライバーセットのキャンギャル用のヴァキューム成型品を切り詰めて使ったそうです。モデラーズのレジンキャンギャルにも同様の傘が付属していたようですが、倒産を経ているから入手難かな。模型慕情の方は半田づけで作った傘の骨組みに三角の紙を張っていくという超正攻法で驚愕しました。でも、スターアンテナを引っ繰り返せば似たようなものが出来るかもしれませんねえ。
Commented by hn-nh3 at 2019-03-14 05:57
写真って、見ているようで何が写っているかは意外に見てないですからね。兵士の服装や背景の建物など車両ほどには興味を持ってなければ見逃してしまうでしょうし。
例のヤクパン写真に写る建物2階の窓にはオーニングテントがついていて、これがまたフランスらしくていい、とか(笑)

傘はやっぱり、いつか作りたいアイテムですね。傘の骨はリアルに再現しようとすると1/35スケールではオーバースケールになりがちなので、いかに省略、簡略化できるかがポイントかも。
Commented by at 2019-03-15 11:36 x
 傘と言えば、ハセガワが1/24のキャンギャルセットを再生産したようですから手に入れられるでしょう。ただし、傘はヴァキュームではなく、インジェクション成型。薄っぺらさの表現には裏にパテを詰めて補強して手絞りですかね。大昔のMAのジオラマ講座で”おおくらとしお”さんがドラッグシュートのペラペラで軽い感じの再現のためにやってました(MiG-23の着陸風景のジオラマ)。彼は薄い塩ビとして卵パックを使ってました。加熱すると「成形」なる歪みが解消されて縮み、板に戻っていくのですけど、そこをエイヤッとプレスするというソリッド時代を経たヴェテランらしいアイデアでした。
 ま、昨今は3Dプリントばやり。CADソフトが使えるなら、傘は対称形ですから向いているかもしれませんね。
 さて、傘さしヤクパンジオラマの島脇秀樹さんですが、翌96年?にはマウスのデカいジオラマを引っ提げてユーロに参戦、金賞を貰いました。このジオラマは知られていない資料を基に実景を苦悩して再現したもの。氏は”インチキ・出鱈目・妄想・リアリティがない”と思われては苦労が報われぬと作品に件の資料を添付して観覧・審査に供じたとのこと。このジオラマ自体はMA別冊「ドイツ超重戦車マウス」96年12月に掲載されているのでご覧になったことがおありでしょう。
 AFVの会での被害者はホントに彼だったりして。

 後、MA16年2月号のホビーランド広告に1/72ラテコエール28(これだったっけ?)のレジンキット税別11500円也が出ていました。
Commented by hn-nh3 at 2019-03-17 06:47
>ハセガワが1/24のキャンギャルセットを再生産

ううう。これを買うかどうか迷いますね。傘はいいとして、水着のネーチャンは持てあましそうです(笑)
ジオラマ用の女性兵士フィギュアはちょこちょこ「スカウト」はしているんですが、いわゆる「美形」フィギュアにはあまり造形的な興味を覚えないんですよね。無駄に巨乳だったり。
男性兵士もそうですね。アルパインなんかのイケメン戦車兵とかちょっと使いにくい。

>MA別冊「ドイツ超重戦車マウス」96年12月に掲載されている

95年〜2010年ぐらいの間、模型作りから離れていたこともあって、自分の中では、その期間の「模型史」がすっぽり抜けてしまっているんですよね。そういった情報、とても助かります(^^)

1/72ラテコエール28は、SBS Model のレジンキットですね。写真を見るとレジンならではの精密なディテール表現もあって、ちょっと欲しいなと思ってしまいます。現地ショップから直接買えば、送料込みで10,000円程度で買えそうですが、ちょっと衝動買いできる値段ではないのがネックです。ほかにもFIAT G.50 とか PZL P.1 とか魅力的なアイテム。
by hn-nh3 | 2018-12-10 21:22 | 資料 | Comments(9)