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断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

迷彩工場

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1948年(昭和23年)3月。東京都北区豊島5丁目上空。米軍が戦後、全国を撮影した空中写真の一部は現在国土地理院のサイトで閲覧可能。この写真もそこから引用;写真No.USA-M866-34 の一部拡大

戦時中の高射砲陣地の痕跡についてブログで何度も記事にしてますが、その場所が明らかになってない陣地の場所を特定するのに米軍撮影の航空写真を見て回っていると、時々こんなものも見つけます。

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上の写真の部分を拡大。工場の屋根にちょっと不思議な市松模様が描いてあります。これは戦時中に軍需工場など爆撃機からカムフラージュするために描いた迷彩パターン。一帯の工場を住宅街に見せるために屋根に描いた模様が戦後三年が経ってもそのままになってたようです。

建物の迷彩は戦時中に熱心に研究されていたようで、当時の書籍で「擬装方法」を解説した本を見たことがあります。屋根や壁面に塗装で明暗差をつけて建物ボリュームを撹乱することを意図していて、周囲の建物のスケールに似せたパターンをつけるといい、というようなことが書かれてました。国会議事堂や東京丸の内のビルにも迷彩が施されていたことは、前に書籍:「米軍が見た 東京1945 秋」のレビュー記事で書いたのでそちらを参照。

しかし、工場の屋根に迷彩を描いた写真は意外に少ない。地上からの写真では当然のごとく写るものではなく、戦後に撮影された米軍の空中写真では、(迷彩が施されていた)軍需工場は空襲でことごとく破壊されて、その焼け跡ばかり。

米軍の艦載機が地方都市を機銃掃射した時に記録されたガンカメラの映像が残ってます。機銃発射と同時に撮影する仕掛けになってたようですが、それにカラーフィルムを使うところに米軍の底力を感じます。戦時中の地方都市をカラーで捉えたということでも貴重な映像ですが、そのなかにいくつか工場の迷彩が映ってました。

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フィルムの撮影された場所を特定するサイト”内地への機銃掃射(ガンカメラ)映像・改”から引用紹介

厚木飛行場のフィルムでは迷彩工場はほんとにちらっとしか写りませんが、なんというか。。制空権完全喪失の状況が痛々しいです。


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話を戻して豊島5丁目。ここの工場が空襲を受けなかった理由は定かではありませんが、肥料を作っていた工場(大日本人造肥料株式会社)だから爆撃の対象にはなってなかったとも想像します。しかし、このページを見てわかるように、北区には軍事施設や関連工場などが多くあった関係でこの工場も攻撃から逃れるために迷彩が施されたのかもしれません。

ここは蛇行する隅田川が荒川に極端に接近するちょっと面白い場所。戦後、工場が公害問題で移転した後、1972-73(昭和47-48年)に巨大な団地「豊島5丁目団地」が作られます。

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GoogleMapのキャプチャー。川に囲まれた巨大団地。陸の孤島につくられた人工世界。団地マニアなら一度はいくべき。
首都高速(中央環状線)江北ジャンクションから見るここのパノラマ風景は美しく、東京郊外の風景のなかでもピカイチではないかと勝手に思ってます。

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Commented by hiranuma at 2019-07-12 22:48 x
東大宮への行き帰りに見る風景です。
巨大なマンション群には何かありそうな感じもします。
Commented by hn-nh3 at 2019-07-13 05:22
埼玉方面に行く時に5号線でなく、こっちを回っていくことが多いかな。この風景が好きで。

同じ形の繰り返しが「団地的」な美しさなのでしょう。最近のタワーマンションはみんなひとつひとつ形が違うので、立ち並んだ時には雑然としてしまってますね。
Commented by デビグマ at 2019-07-14 09:56 x
屋根の迷彩、どのくらい効果があったんですかね。写真を見る限りだと結構バレバレな気が。。車輌のように移動できればその場しのぎの効果はあるんでしょうけど、建物は移動できないしね・・
Commented by hn-nh3 at 2019-07-14 12:57
デビグマさんの言う通りで、バレバレですよね(笑)
写真のような固定的な視点よりは、実際に動いている飛行機の中から肉眼で見てるほうが視覚的に幻惑されやすい、というのはあるでしょうが、それでもね。。

周囲の集落の屋根と比較すると、迷彩パターンはどこか概念的ですよね。明暗比とか影の分布とか実際の集落の写真を比較分析してその生成アルゴリズムを抽出して... なんてことは、やってないのでしょうね。

どれほどの効果があったかは焼け野原になった戦後の風景が証明しているのでしょうけど、「みんなで屋根にペンキを塗って空から見えないようにしたよね!」という安心感、心の不安を紛らわすに十分な「擬装効果」はあったんじゃないでしょうか。
by hn-nh3 | 2019-07-11 21:01 | 構造物 | Comments(4)