東京AFVの会と戦利品

東京AFVの会と戦利品_d0360340_00093240.jpg

先週の土曜日。今年の「東京AFVの会」は11月23日と、例年より1月早く開催。雨の中、下北沢の会場に行ってきました。
10時の開場に出遅れて、結局着いたのが11時近かったものだから会場はすでに満員。人をかき分けてテーブルの隙間になんとか出品作を並べることはできたけど、梱包の箱を開ければ砲塔ハッチは取れてるしフィギュアは戦車から転がり落ちてるでアタフタアタフタ。家を出たのは早朝だったのだけど、訳あって朝イチの築地で寿司をつまんでたりした報いですね。仕方がない。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_00173224.jpg

そんなこんなで会場でお会いした皆さんの作品の写真が撮れてないんですよ。ネットで拝見していた作品を直に見るのに熱中して写真を撮ってなかったり、1年ぶりの方々と話すのが楽しくて撮った写真もピンが甘かったり手ぶれしてたり。

今年の課題は「ソ連」。写真はTarot_G3さんのM3スカウトカーの作品。
タミヤから今年リリースされた3Dスキャンのフィギュア入りキット。箱から出してそのまま組むだけでも十分な出来ですが、こういう場所にストレート組みで出品するのはなかなか勇気いりますよね。Tarot_G3さんは蹴散らしたドラム缶が周囲に飛び散ってる瞬間を再現するという虚を突いた趣向で「定型」に絶妙な崩しをいれてました。瞬間を切り取った作品は模型の実物で見ると時間が止まったような面白さがあって模型を見る楽しさ満点です。ガッシュを使った塗装も絶品。見事、課題部門で1位を獲得してましたよ。

そうか、蹴ちらすドラム缶がダークイエローなのか。敵兵を見せずして敵を描く... なるほどぉ。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_00343180.jpg

会場でみかけた作品、ヘルガさんの沖縄シャーマン。沖縄戦の仕様と塗装はカラーフィルムで見る青黒い塗装を再現したとかで、パープル立ち上げの青みを帯びた車体と足回りの赤土のオレンジが補色効果で鮮やかな色彩効果を出してました。

当時のカラーフィルムは緑が褪めてしまったりと必ずしも「正確」な色彩が再現されてることは少ないのだけど、なんだかんだ記憶されている車両のイメージは当時のカラーフィルムの色調に負うところが大きいから、塗料サンプル云々の考証よりもこういう「リアル」って好きかも。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_00463267.jpg

大賞獲った方の作品の一部。IPhoneのカメラに写ってたのは草の生え方とかそんなディテールばかり、何を撮ってんだか。。
橋のたもとの雑草の表現など見事ですね。種類によって色を変えた草の植え方、地際の枯れた葉。石畳の隙間から生える草。繊細な表現に惚れ惚れします。崩れた斜面の土の湿り具合と乾いた表面のかさかさした感じ、色の濃度、密度も美しい。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_04514484.jpg

それで、今回出品の拙作。T-60軽戦車(第264工場製)、1942年8月のロシア南部都市、ロストフ郊外の風景。

んん。新作じゃないじゃん!  ..すみません。
ここんとこ完成したのがなくて旧作です。展示会では初のお披露目ということで。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_04572885.jpg

結果はこちら。出品した課題部門「ソ連」では箸にも棒にも、でしたが「熱田賞」をいただきました。副賞はタミヤの1/48 ケッテンクラートと航空機用電源車。
会場に並ぶ作品の熱量に気後れもして会場の後ろの席に避難、発表される入賞作を遠目に眺めながらうとうとしてたら突然、呼ばれていることに気がつき慌てて前に出たもんだから何話していいのかしどろもどろ.. 聞かれたら話したいこといろいろあったような気もするけど。

熱田さんに塗装の色調や麦畑の表現など褒めていただき、ちょっとうれしかった。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_05062193.jpg

この日の収穫をもうひとつ紹介。恒例のじゃんけん大会での商品。賞をもらったんだから遠慮すればいいのに我欲に負けてじゃんけんに参加したら、勝ってしまいました。
自制しろよと心の声は聞こえてましたよ、イベントだからじゃんけんに参加する人も多いほうが楽しからろうと手を挙げてみればこの結果。無欲の勝利という訳ではないけど、まあいいや。欲しかったし。

「カンプ グルッペ ジーベン」70年代に活動を始めた伝説の模型サークルでこの東京AFVの会も主催。というか彼らの集まりに端を発して現在に至るというべきか。その珠玉の作品群は当時のタミヤニュースを飾り、タミヤのカタログに載ってるのを見た模型少年の憧れでした。その機関紙「Kampf in action」の2号と3号。これを見事にゲット。皆さんごめんなさい。

罪滅ぼしにちょこっと中身を紹介します。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_05065133.jpg
 

2号の表紙をめくれば冒頭の特集はボイテT34。ドイツ軍が東部戦線で鹵獲した車両を自軍の編成に使用したものでマーキングや部隊改造など、絶好の模型アイテム。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_05070668.jpg

かくいう自分もドイツ軍戦車モデラーからボイテ仕様に惹かれてソ連軍モデラーに寝返ったりしたクチなので、ボイテ車両は大好物。しかし情報の少なかった当時によくこれだけのリサーチをしてたとは。これがあってこそ現在があるということを改めて実感。

写真に注釈をつけるのではなくイラストに起こして特徴を記録していくスタイルは学ぶべきものがあるかもしれない。手で描いていて気がつくことって多いですよね。写真だけ見て作っていると工作がほぼほぼ終わったところであれ?写真と違う、ということに気がつくことの多いこと。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_05072646.jpg

十川俊一郎さんのタイガー戦車製作の解説。ワイヤーのクランプやらSマイン、予備履帯のラックなど現在なら最新のキットやエッチングパーツでフォローされているディテールをタミヤのキットの改造ポイントとしてイラストに書き起こしています。
タミヤの戦場写真集を買い込み、本屋で戦車マガジンなどを立ち読みして、あれ?タミヤの「タイガー戦車」と記録写真の中の「ティーガー(ティーゲル)」は何か違う..とその何かを追いかけるようになった模型少年の頃を思い出します。


東京AFVの会と戦利品_d0360340_05074401.jpg

特ニ式内火艇(カミ車)の詳細な図面なんかも入ってましたよ。これを見てスクラッチしろ、ということだったのかな。こんなレアアイテムがドラゴンからインジェクションモデルで発売されるなんて、想像した以上の未来が来たんですね。それも今は昔。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_05082805.jpg

3号の巻頭特集はパンツァーファウストの図解。装填方法や安全装置、注意書きなどこれまた詳細なリサーチ。実際の仕組みとディテールの関係がわかると模型の作り方も変わってきますよね。今でこそネットで情報が手に入るけど、彼らはどうやって調べていたのだろう。

東京AFVの会と戦利品_d0360340_05083532.jpg

発行は1977(昭和52)年。発行は年に3回。これだけ密度の濃い内容のものを同人誌として発行していたこと自体が驚き。
当時、片田舎の模型少年だった自分にはそんな情報は届かず、その存在を知ったのはずっと後の話。

カンプを率いた十川俊一郎さんは数年前に惜しくも他界。編集後記に掲載された機関紙を取扱ってくれてた模型店も大半が既になかったりして、そこから長い時が流れたことに改めて気がつく。

Commented by vol de nuit at 2019-11-26 14:21 x
「熱田賞」のご受賞、おめでとうございます!

私もご挨拶を兼ねて初見学に行こうかと思っていたのですが、急な予定で実現しませんでした...;

来年こそ是非伺いたいと思います!
Commented by hiranuma at 2019-11-26 17:23 x
受賞して然るべき出来だったのでよかったですね。
しかし、ジャンケンが強い!
Commented by hn-nh3 at 2019-11-26 21:46
vol de nuit さん
会場でお会いできるのかと密かに楽しみにしてましたが...残念。来年こそは(^^)

それに向けてワルシャワのヘッツァーも完成させないと、と思いきや。東京AFVの会のホームページを見れば...

★次回の課題は『1919年から現代までのドイツ車両』

だそうです。ヘッツァーは紛れもないチェコ戦車だし、鹵獲使用したのはポーランド国内軍だしで早くも課題脱落(笑)
Commented by hn-nh3 at 2019-11-26 21:55
hiranuma さん
ケッテンクラートとサボテンの棘については語りたいことがあったのですが、撮った写真を見ればピンボケしてて「これでは使えないじゃん ...」さすがに写真なしでは話ができないしで、また改めて次の機会に(^^)

じゃんけん大会はね、本当に勝つ気がなかったんです。ここで負けないと顰蹙だなーと弱そうな手を繰り出せば...なぜか勝ち残ってるしで。

こういうのが肩の力を抜いて挑む、というのかと、ちょっと何かを掴んだような気がしましたよ、それを模型作りにも生かせればいいのだけどー

Commented by デビグマ at 2019-11-27 02:18 x
伝説の同人誌カンプインアクション、中身をちゃんと見たのは初めてかも。ありがとうございます。しかしみなさんイラストが上手ですね。当時カンプは本当に憧れの存在で小学生だった自分には大人の世界でしたね~ずいぶん遠くまで来てしまったなぁ~とちょっと感傷的になってみたり。。
Commented by hn-nh3 at 2019-11-27 05:38
デビグマさん
古いプラモも切った張ったで自分のイメージに近づけていくデビグマさんにはカンプの精神を感じますね。思えば、欲しいキットがなければ自分でなんとかしよう、というのがあの頃の模型作りの基本でしたよね。

「カンプ イン アクション」には改めて驚かされます。調べてイラストを起こして記事を書いて... 編集も今みたいなDTPソフトがある訳ではなかっただろうし。
こうした試みの延長に尾藤満さんの「アハトゥンク・パンツァー」なんかがあるんだろうなと思いました。

デビグマさんがいうようにみなさんイラストがうまいんですよね。写真よりも形がよくわかるし、写真を使うと版権の問題が絡んできたりするので、自分もブログでの説明用に写真をトレースしてイラスト起こしてみたことありますが、とても見せられるクオリティに達せず、敢え無くボツになりましたよ。

Commented by セータ☆ at 2019-12-15 21:09 x
今月のアマモ誌を立ち読みしたら、東京AFVの会レポートにT-60が載ってましたよ。
Commented by hn-nh3 at 2019-12-16 05:25
うー。砲塔ハッチが外れて正しいポジションでないのをセータ☆さんに見られてしまった。。 校正のチャンスがあるなら Photoshop使ってでもハッチの角度を直して欲しかったですねー(笑) 展示会に持ち込むときは踏んだり蹴ったりしても壊れないように組んでおくべし、というのを戒めにしたいと思います。

末席とはいえカラーで載せていただいたのには感謝感謝。さすがに立ち読みで済ますのは憚られたので買いましたよ(^^)
by hn-nh3 | 2019-11-26 08:19 | 日々 | Comments(8)