この前の御茶ノ水
2020年 09月 09日


線路を跨いでいたブリッジが撤去されて、階段には通路のアーチ型の屋根の断面が露出しているのが面白い。古いレールを曲げて作った骨組みに木の板を張ってアーチ型の屋根を葺いていたことが分かります。階段も古レールを組んで木板張ってペンキ塗り。剥がされた材料の下に眠っていた昔の時間が出てきたようにも見えて不思議な感じ。

跨線橋の柱がホームまで伸びているけど、ホームの屋根と一体化してる柱はどうするんだろう。途中で切って残すのだろうか。それとも屋根も全部撤去してプラットフォーム丸ごとリニューアルするのかしら。
プラットフォームの屋根の構造体には明治時代に輸入された外国製のレールが使われている。ペンキが厚く塗られて見えにくくなってしまっているけど、よく見るとメーカーの刻印が読み取れたりもする。そんなのを調べているサイトもあって、それによると、"BARROW STEEL 3MO 1888. I.R.J 166" イギリス バーロウ社 1888年製造、”UNION D 1886 N.T.K.” ドイツ ウニオン社 1886年製造、などなど。階段には”(S) 75 A 1928 IIIIIIIII” 官営八幡製鉄 1928年製造 のように国産の古レールも使われているそうです。
プラットフォームの屋根に古いレールを使っている駅は多く、山手線では日暮里駅、中央線は水道橋駅、浅草橋駅のものはデザイン的にもきれい。浅草橋駅のレール屋根は好きで前にこのブログでも記事を書いてます。浅草橋駅ではKRUPP/クルップというドイツのメーカーも使われています。

御茶ノ水駅は1932年(昭和7年)に完成した駅舎が装飾性を排したインターナショナルスタイルの建物なので、そのシンプルなデザインに合わせたのかプラットフォームの構造も直線多めの質実剛健なフォルム。御茶ノ水駅は戦災を受けずバブルの頃の建替え計画も頓挫したので、当時の駅舎が残っています。




戦前の写真を観察すると、その頃のものはシルエットの違いに加えて、壁に鉄骨が露出しないプレーンな仕上げ。プラットフォームの屋根とは違えて駅舎のプレーンなデザインや隣の聖橋の雰囲気と調和した外観。

米軍が戦後に撮った空中写真を確認してみます。1947年(昭和22年)撮影。御茶ノ水駅から南側の神保町、古書店街が幸いにも空襲で燃えることなく建物が残っていることがよくわかります。隣の秋葉原は丸焼けで戦後のバラックが並んでいるのとは対照的。


昭和38年の空中写真を見ると、跨線橋は現在(解体中)の両方向に階段があるものに替えられていてブリッジの位置も少し移動、改札の建物とは少しクランクした位置関係。戦後になって跨線橋が作り替えられていたことがわかりました。他の空中写真で探すと昭和31年3月の撮影(USA-M324-421)の写真でこの2代目の跨線橋が写ってました。何らかの理由で昭和20年代に作り直されたらしい。
この写真には聖橋の下手に神田川を横切る丸の内線が写っています。戦後すぐの写真と比べるとよく分かるのですが、丸の内線の横のJRの線路には御茶ノ水駅のプラットフォームが延長されているのが見えます。たぶんこれが跨線橋架け替えの理由でしょう。

電車の連結車両を増やすために駅のプラットフォームを延長して増えた乗降客に対応するため、戦前からの片側階段の跨線橋を撤去して、両側に階段のある現在(解体中)の跨線橋に架け替えた。ということなのでしょう。残念ながら戦前からのオリジナルのものではなかったことが判明したけど、この「2代目」の跨線橋も戦後の記憶を留めるものには違いない。戦後間もない時期の工事なので、前の跨線橋の古レール部材を再利用したものもあるのかもしれない。
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通勤快足っていう靴下のCMを思い出しますです>御茶ノ水の丸ノ内線
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’通勤快足”!ありましたね、そんなの。
CMの映像の中に聖橋から万世橋方面を見た、丸の内線と中央線、総武線の立体交差の風景。この地形はダイナミックですよね。
今回記事を書くにあたって聖橋口側の跨線橋の風景を写したものが残ってないかあちこち漁ったのですが、やっぱり丸の内線側の風景が絵になるのか、そちらばっかり。
名シーンとしては、侯 孝賢が日本で撮った映画「珈琲時光」のラストでしょうか。古レールトラスが美しい日暮里駅のシーンにつづいて、御茶ノ水駅の丸の内線と総武線中央線が交差するシーンで映画が終わる。
https://www.youtube.com/watch?v=yJzmPHi8p3E&t=191s
CMの映像の中に聖橋から万世橋方面を見た、丸の内線と中央線、総武線の立体交差の風景。この地形はダイナミックですよね。
今回記事を書くにあたって聖橋口側の跨線橋の風景を写したものが残ってないかあちこち漁ったのですが、やっぱり丸の内線側の風景が絵になるのか、そちらばっかり。
名シーンとしては、侯 孝賢が日本で撮った映画「珈琲時光」のラストでしょうか。古レールトラスが美しい日暮里駅のシーンにつづいて、御茶ノ水駅の丸の内線と総武線中央線が交差するシーンで映画が終わる。
https://www.youtube.com/watch?v=yJzmPHi8p3E&t=191s

御茶ノ水駅の古レール柱は、古レール自体の使用量はたっぷりあるものの、デザイン的には質実剛健過ぎるというか、優美さが見られなくていまいち惹かれなかったのですが、なくなってしまうとなるとちょっと寂しいですね(部分的には残るのかもしれませんが)。
そういえば、結局、お茶の水橋の都電レールも見に行ってないや……。
そういえば、結局、お茶の水橋の都電レールも見に行ってないや……。
御茶ノ水駅の都電レールの跡は綺麗さっぱり無くなってましたね。写真も撮りましたが、喪失感すら写らないくらい何事もなかったような風景になってました。
お茶の水駅のホームは聖橋から御茶ノ水橋までの間が人工地盤で蓋をされる形に改装されるので、古レール屋根は今回の工事で全滅ですね。
先週通りかがったときにもう一度見たら、解体中の跨線橋の前後にわずかに残るのみの状況で、これも撤去されるのは時間の問題です。聖橋の反対側は屋根が残るようですが、これは戦後の拡張部分で近代的なH形鋼材の架構で特に見るべき物でもなく..
お茶の水駅のホームは聖橋から御茶ノ水橋までの間が人工地盤で蓋をされる形に改装されるので、古レール屋根は今回の工事で全滅ですね。
先週通りかがったときにもう一度見たら、解体中の跨線橋の前後にわずかに残るのみの状況で、これも撤去されるのは時間の問題です。聖橋の反対側は屋根が残るようですが、これは戦後の拡張部分で近代的なH形鋼材の架構で特に見るべき物でもなく..
初めまして。
すばらしく興味深い記事に出会って朝から少なからず興奮しております。
御茶ノ水駅は半世紀前からよく利用している親しい駅なので
改築工事の進捗がとても気になっているのです。
ミカンセーキさんのこの記事、知らなかったことばかりなのでぜひ記録しておきたく、
事後承諾になって申し訳ないのですが取り急ぎリンクさせていただいてしまいました。
どうぞよろしくお願いいたします。
https://sorairo02.exblog.jp/28243237/
https://sorairo02.exblog.jp/28163850/
すばらしく興味深い記事に出会って朝から少なからず興奮しております。
御茶ノ水駅は半世紀前からよく利用している親しい駅なので
改築工事の進捗がとても気になっているのです。
ミカンセーキさんのこの記事、知らなかったことばかりなのでぜひ記録しておきたく、
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pallet-sorairo さん
コメントありがとうございます。御茶ノ水駅もすっかり変わってしまうようで、長く親しんだ風景が消えてしまうのは少し寂しいですね。
リンクは大歓迎です。特に承諾は求めません。むしろ変なサイトで失礼します (^^!)
サトイモは花が咲くんですね。前に庭に植えたときはそんな花見なかったな。
コメントありがとうございます。御茶ノ水駅もすっかり変わってしまうようで、長く親しんだ風景が消えてしまうのは少し寂しいですね。
リンクは大歓迎です。特に承諾は求めません。むしろ変なサイトで失礼します (^^!)
サトイモは花が咲くんですね。前に庭に植えたときはそんな花見なかったな。
by hn-nh3
| 2020-09-09 12:28
| 構造物
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Comments(6)