C to c(2号戦車の場合)


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この期に及んで2号戦車を作る。もう10年以上前のタミヤのキットで話題性はないし、2008年の発売当時にディテールの考証であれやこれやとケチがついてしまったキットだ。フンメル、マーダー1、4号戦車F型などドイツ戦車に限っても最近のタミヤの新製品の充実ぶりもあってか、今更どうして2号戦車を組むのかという話。

アイテムとしても2号戦車はドイツ戦車の開発史でも地味な存在。次期主力戦車となる3号戦車の開発の遅れをカバーするためにリリーフで作られた戦車で、大戦初期の華々しい電撃戦でも数合わせ的な役割。それでも堅牢で故障も少なく扱いやすかったのか、主力を外れてもロシア戦線や遠くアフリカにも送られたし一度は生産終了したのに再生産されて、なんだかんだ戦争が終わるまで使われていたようだ。偵察や連絡業務なんかで地味に役に立つ存在だったのだろう。



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タミヤの2号戦車C型 (ポーランド戦線) :no.299 は、装甲強化型のフランス戦線仕様のキットに続いてリリースされたキットで、丸くプレスされた車体前面装甲など初期のドイツ戦車らしいシルエットが魅力。車体と砲塔側面の視察用ハッチも数種類のパーツの選択式で、表題のC型だけでなく、B型、A型、そして試作タイプのc型を作ることも可能。今回は生産初期の(増加試作型)c型を再現したいと思ってます。砲塔周りの跳弾ガードは未装備、操縦手ハッチはスリットなしのフラットな蓋の開閉式。などなど未だ実戦経験のない初々しい雰囲気があります。

そしてポーランド戦役ならではの黄色い十字のマーキング。開戦時の国籍マークは白い大きな十字がグレーの車体に映えてカッコいいのだけど、すごく目立つことが災いして敵の対戦車砲の格好の標的になったため(写真右)、車体色とのコントラストを低くするために泥を塗ったり白ペンキを削りとったりの応急処置を施すハメに。この経験から白縁つきの黒い十字のいわゆる「鉄十字」へと変更されるのだけど、十字に黄色く塗ったのも当時の対策の一つ。写真左の車両のマーキングがそれで、白い十字に黄色のペイントを上塗りしたもの。周囲を白の縁取りが残るように手描きで塗り込んだ拙さを模型的にも再現してみたいところです。

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ポーランド戦の4号戦車

ポーランド戦に参加した車両は車体の塗装はパンツァーグレイ一色と考えられていたのですが、最近の考証ではグレイとブラウンの2色迷彩だったことが判明して、このカラースキームと黄色い十字の国籍マークの組み合わせが、模型の配色としてもカッコ良さそうだなと。だから個人的には今が旬。

なので、今回の主題は塗装。ウェザリングも控えめにして初陣ならではの雰囲気を出せるか考えてみたい。工作はあまり深入りしないで簡単に行きます。
タミヤのキットのC型を小文字のc型に替える作業を少しばかり。それがタイトルの「C to c」。B to CとかB to B みたいなビジネス用語じゃないのよ。


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あっという間にここまで組めました。真鍮挽物の銃身、エッチング製のフェンダー、メタルの連結式履帯などなど、ディテール再現にこだわるなら便利なパーツがサードパーティからいろいろ出てるけど、今回は精密感をテーマにしてないのでアップグレードパーツには課金しません。単純に「c型」と識別できるための特徴の再現に限定。

砲塔のリングガードは未装備、操縦手クラッペはスリット無しのタイプ、車体と砲塔のクラッペはスリット上部に2つのリベットのタイプ。
車体前面の操縦手用ハッチのヒンジの向きが間違ってるのでそこは直しました。ヒンジはジャンクパーツから流用。砲塔ハッチのヒンジは基部の形状が実車と違うのでプラ板を貼って削り込んで修正。エンジンルームのハッチのヒンジもA~C型にする場合はキットとは向きを反転させる必要がある。試作c型はキットのヒンジの向きが正解。実車のヒンジの向きが生産途中に変わったのはどういう事情があったのだろう。

ヒンジの向きや形状の間違いは、タミヤがキット化にあたり現存車両を取材した際にレストアでオリジナルとは違うパーツをそのままキットの設計に使ってしまったことが原因。フェンダーのメッシュパターンが粗いとか誘導輪の直径が小さいとか、レストア車両の罠がキットの欠点として騒がれたようです。当時は私はまだ模型に復帰してなかったのであくまで伝聞ですが。

その騒動の後にタミヤはポーランド戦線バージョンで正しいサイズのパーツをランナーに追加して対応して、現在はフランス戦線バージョンのキットにも同じものが入っているとのこと。


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キットのC型から試作型のc型に仕立てる際に、唯一手間がかかるのが、車体後部の無選手ハッチ。写真のライトグレーのハッチです。PanzerTracts 2-1に乗ってる図面を下敷きにプラ板を加工して作りました。スリットの両端にドリルで穴を開けてカッターで穴をつないでスリットの中央部に裏からプラ板の細切りでリブをつけて、ヒンジは隣のハッチにモールドされているのを「おゆまる」で型取りしてUVレジンで複製。

c型の特徴と工作は、”アハトゥンク・パンツァー”の著者である尾藤さんのサイトの作例を参考にしてます。
>Panzer memorandum > modeling > ll号戦車(増加試作型a/2型,b型,c型)


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調子にのって足回りも少しディテールアップ。サスペンションのリーフスプリングを束ねる金具にボルトを追加。ハッチの工作と違って、やってもやらなくても見栄えに影響しない部分ではあるけど、機能的に「あるはずのものが無い」のはメカとして気持ちが悪いから追加。他にも車体にいくつかリベット追加してるけど、これは間違い探しのレベルだからあえてどこかは言いません。

しかし、2号戦車のサスペンションはどうにも野暮ったい。a~b型であれこれ悩んで試作c型から採用されたシステムは、転輪を独立懸架にするためにトラックでよく使うリーフスプリングを片切りにしてトラックとは逆さまの配置でサスペンションアームが揺動するようにしている。上下を逆にして写真撮ると、その仕組みがよくわかる。苦しまぎれで考えたのかしれないけど... いいアイディアだと思う。
既存の汎用部品をベースに作ったサスペンションは(高性能ではないけど)安価でメンテナンスに苦労はなかったはず。それが2号戦車が長期運用できた理由かもしれない。


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キットの履帯は部分組み立て連結式。小さな履帯のガイドホーンの軽め穴のひとつひとつがちゃんと抜けてるのは見事。プラスチックを成形するための金型に彫りの深い凹凸を作ると維持管理が難しくなるのか、この後のキットでは穴が省略されてしまって単なるモールドでそれっぽく見せてることが多い。2008年というと、ライバルのドラゴンがスライド金型を多用したキット開発でリード、車両の型式違いのバリエーションキットを展開していた頃だから、タミヤがこのキットを出す時には意識してたんでしょうね。機関砲と機銃の銃口はスライド金型使って開口してあるし、ハッチの部品を選択式にしたり、履帯の造形を見てるとなかなか攻めたキットだったと改めて思う。考証の問題でのケチがついてしまったのがもったいない。


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車体の基本工作が終わったので、試しに最近のタミヤの3Dスキャン戦車兵に乗ってもらいます。ポーランド戦役で戦車兵が被っていたベレー帽を被せてみました。この帽子は中にラバースポンジが入っていて車内で頭をぶつけても大丈夫になっていたのだけど、ヘッドホンをつけるのに邪魔ですぐに廃れたようです。ベレー帽はミニアートのフィギュアの戦車兵セットから拝借。


参考:ポーランド戦役の2号戦車の写真がいっぱいあるサイト



Commented by hiranuma at 2020-11-21 22:00 x
クラシカルなⅡ号戦車いいですね。
組み立てにバージョン違いがあるのは最近(ではないか)多いのでしょうか? UEもそれを見過ごしてミスしました。
Ⅱ号戦車は軽快でそれなりの装甲厚があり、軽車両向けには強力な武装で強行偵察や後方支援など運用を間違わなければ重宝したのではないでしょうか。
Commented by 尾藤 満 at 2020-11-22 00:00 x
 大戦初期の塗装が好きなので、いろいろな塗料を試していますが、hn-nhさんがこれからどのように塗装されるか楽しみです。
 私は現在、38(t)戦車を製作していますが、II号戦車もいずれ続きを製作するので、参考にさせていただきます。
Commented by hn-nh3 at 2020-11-22 22:21
hiranumaさん
ルノーUEは作ったことないのですが、バリエーションの選択ができるんですね。BT-42も装備品の違いなどマーキングに合わせて選べたように思います。この時期のタミヤのキットは割とそういうのに積極的でしたね。

8輪装甲車のSdkfz234/2プーマは5cm砲積んでたけど、後継車両のSdkfz234/1は2cm機関砲になったことからしても戦車以外の相手には2cm機関砲は役に立ったんでしょうね。

2号戦車の軽快さを塗装で表現するにはどうしたらいいかとあれこれ思案してます。塗装はマットに塗るんじゃなくて少しツヤを持たせようかな。
Commented by hn-nh3 at 2020-11-22 22:30
尾藤さん
早速に見ていただいて恐縮です。できればb型あたりを作りたいところですが、小転輪の足回りを自作するのはさすがにハードル高いので、無理なく作れる範囲でc型にしてみました。

尾藤さんの作例ではクラッペのボルトを尖頭ボルトに付け替えてたのを見て、それに倣ってみようかと思ったものの0.5mmの尖頭ボルトを持ってなかったのであきらめました。
塗装に体力を残しておきたいので、工作はほどほどにと思ってましたが、対空機銃架は作らないとダメかな...
Commented by デビグマ at 2020-11-22 23:31 x
リニューアルからもう10年たってるんですね。考証的に色々言われたキットでしたが、バリエーションパーツの豊富さや機関部の再現等、見どころの多いキットだと思います。どちらかという車体前面がまるっこい「ポーランド戦」のほうが好みなんですが、付属したフィギュアの出来にがっかりして今だに買ってませんでしたが、アップの画像を見てると欲しくなってきますね。。
Commented by hn-nh3 at 2020-11-23 10:13
デビグマさんもまだ2号戦車作ってなかったんですね。
砲塔内の機関砲や機銃の尾部、砲架もタミヤだとまるっと省略されてしまうことも多いけど、このキットは少ないパーツながらも再現してありますよね。砲塔ハッチから覗いて見えるクラッペの内側の防弾ガラス部などが再現されていたら、(例の考証問題を気にしなければ)いうことなしのキットだったと思います。ただ、セットのフィギュアは..... どこか身体の具合でも悪いのかと声をかけたくなってしまうぐらい精彩を欠いてます。

欲を言えば転輪はリム周りのニュアンスをもう少しがんばって再現してほしかったかな。これは最近の38t戦車でも同じ話で転輪のディテールが割り切った感じでした。タミヤさんは転輪愛が薄いのよね。
Commented by デビグマ at 2020-11-23 11:58 x
正確にいうと「フランス戦」は買って組み立てはほぼ完了してたんですが塗装で中断したままで、「ポーランド戦」はフィギュアを見て買うのを躊躇してそのまま。自分もクラッペのパーツが欲しくてドラゴンのキットを購入しましたが、こちらはエッチングパーツで難儀して放置中です。2号戦車ってコンパクトで好きなんですが、完成しませんねえ。。
タミヤの転輪愛が薄い件、バレンタインは顕著でしたね。
自分は昔から「シャーマンのハッチ裏側」に愛情のなさを感じていました。最近は多少改善されたようですが。。
Commented by hn-nh3 at 2020-11-24 06:08
デビグマさんなら見える範囲で内部の工作するんだろうなと思いながら作業してましたよ(^^) そうでしたかドラゴンのキットも持ってるんですね。ドラゴンの2号戦車を作ってる人あまり見かけませんがキットの出来はどうなんだろう。

次はタミヤから決定版の1号戦車を出して欲しいですね。履帯と足回りに気合をいれて3D スキャンのフィギュアもつけて。

そっけない「シャーマンのハッチの裏側」はタミヤの人が実車取材の際に写真撮り忘れたからなんだと想像します(笑)
Commented by かば◎ at 2020-11-25 03:41 x
うおう!
このポーランド戦の写真のサイトは知りませんでした。
しばらく、写真を落とすのにかかりきりになりそうです。

タミヤのII号、あれこれ難点もありますが、それを差し引いてもいいキットだと思いますよ。(と言いつつ、1つも完成させていませんが)
ドラゴンがいまいちだ、というのもありますが……。
Commented by hn-nh3 at 2020-11-25 06:23
かば◎さん
タミヤの2号戦車は手を入れ始めるとフェンダーのメッシュパターンの問題に突き当たるので、おおらかな気持ちで進めてます。とはいえデフカバーや砲塔の前上端にボルトをつけたりなんだかんだチマチマ工作はしちゃいますけどね。
かば◎さんの記事も参考にさせてもらってます。

ポーランド線のサイトはポ軍、独軍ともに写真をよく集めてありますね。量がハンパないので全部に目を通すのに時間がかかりそうです。
見てると2号戦車なんかやられてる車両が多いですね。装甲薄いから当たれば穴が開いちゃうんでしょうけど。
ポーランド侵攻はドイツ軍楽勝!みたいなイメージありましたが、ドイツ軍の戦車の損害は300両(Wiki)もあったのですね。


Commented by かば◎ at 2020-11-25 10:55 x
>>ポーランド侵攻はドイツ軍楽勝!みたいなイメージありましたが、ドイツ軍の戦車の損害は300両(Wiki)もあったのですね。

ワルシャワ前面での第4装甲師団の損害など半端なかったようですね。
特にドイツ戦車相手にはボフォース37mm対戦車砲が大活躍したようです。そういえばボフォース37mmもずっと作りかけで放り出してあるんだよなあ……。
Commented by hn-nh3 at 2020-11-26 06:50
こっぴどくやられたからこそ、2号戦車の装甲強化がマストになったと言うことか。キューポラを増設したり、この経験がなかったら、フランス侵攻もおぼつかなかったかもしれないですね。

>>そういえばボフォース37mmもずっと作りかけで放り出してあるんだよなあ……

TKS もあるんじゃないですか? ビッカース6tは?

そうだ! IBGのTKSは私も買ってしまったのだった ....... 。
by hn-nh3 | 2020-11-21 20:28 | II号戦車 | Comments(12)