レイアウトと解像度

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(Powstanie Warswawskie 17cm×16cm×1.4cm 96p Parma press 2004 )

本を書いました。1944年のワルシャワ蜂起でポーランド側から撮った写真。 蜂起したポーランド国内軍のカメラマン:シルベスタ・ブラウン(コードネーム:Kris)の写真集です。ドイツ軍に砲撃されるプルデンシャルタワーの有名な写真を使った表紙のデザイン。正方形フォーマットの版形と手頃な値段を見てジャケ買い。

郵便受けに入ってたAmazonから届いた本を見てちょっと驚きました。
CDジャケットより一回り大きいだけの小さな本です。買う時にサイズを確認してなかったけど、まさかこんなに小さいとは。


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最近はネットで”ワルシャワ蜂起博物館のアーカイブ”を閲覧できるようになったので、単純に情報を得るためならそれで十分。それでも本を買うのは、編集コンセプトとか写真のサイズが理由になるでしょうか。ネット画像を遥かに上回る解像度の写真を眺めるのはやっぱり気持ちがいいし、それ以上に印刷された写真の感触はやっぱり紙ならではの魅力。そして一人のカメラマンに軸を置いた編集も気になりました。戦場写真は報道的な意味で匿名の写真が多いけど、どんな写真にも撮った人がいて、その人の視線が何を切り取っているのかは個人的には興味の引かれるところです。

だけどこの本、それにしても写真が小さい。思わず2本の指で拡げたくなっちゃいました。

写真も黒が少し潰れ気味。ダブルトーン印刷までは望まないとしても、PANZERWRECKSなんかのデジタルシャープネスをかけた最近の写真画質を見慣れた目には少し物足りない感じもない訳ではない。出版は2004年なので、そこはそういうものとして。

それでも、「本」としてはいいですよ。版が正方形というのもミソです。風景の写真は横アングルで撮ることが多いので普通の本で一般的な縦長のページは写真と相性が悪い。見開きで写真を配置すると、写真の中央がノドで見切れてしまったりするけど、正方形のページなら1ページに1枚、下にキャプションで完結します。縦位置の写真もレイアウトが維持できてデザイン的にもすっきりします。

表紙もいい感じ。少しセピアをかけた写真にタイトルはセピア文字。ポーランド語と英語の2言語対応で情報が過剰になるのを英語のフォントは少しサイズを小さく、写真の画面に合わせてバランスを調整してるところとか技アリ。サブタイトルを白抜きの文字にするところなど好みですね。中ページのタブの色がきれいなグレーピンクなのも素敵です。

手元に置いておきたい本はこのくらいのクオリティであって欲しいけど、ミリタリー系の本はデザインがイマイチなのも多いですよね。表紙で買う気が失せるものもよくあります。 賑やかしのためにタイトルに赤とか黄色を中途半端に使ってタイトルバックの写真と色が全然合ってないAFV月刊誌なんかはレジに持っていくのも恥ずかしいくらい。アーマーモデリングは最近すごくきれいになったからなるべく買うようにしてます。

< Sylwester Braun "Kris" >


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撮影 Eugeniusz Lokajski "Brok":出典 ワルシャワ蜂起博物館

ポーランド語のメールが来ました。1ヶ月くらい前にワルシャワ蜂起博物館のサイトでこの写真を買ったのですが、待てど暮らせど音沙汰なくて諦めてたけどようやくダウンロードページのURLが届きました。写真は 300dpiで横2400×縦3500px。 お値段は非営利WEB使用の目的で50PLN(約1420円)。決済が銀行振込みで海外送金か..手数料高いし面倒だなと、勝手にPayPalで送ってみました。向こうも困ってたんでしょうね。ごめんなさい。

<ワルシャワ蜂起博物館 写真アーカイブ>

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高画質の写真が欲しかった理由はコレ。国内軍が蜂起2日目に鹵獲したヘッツァーCHWAT号がバリケードに使用されているのが広場の奥に小さく写ってます。このバリケードは10カットぐらい写真が残ってますが、全景が正面から写してあるのはこの1カットのみ。このバリケードを模型で再現するための分析に使いたかったのです。ブログにアップした写真は2400px/300dpiを1600px/350dpiにリサイズしてます。

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比較のためにネットで拾えた画像はこんな感じ。横800px/72dpiの画像を1600pxにリサイズしてるのでピクセルの荒れが出てしまってます。写真の原盤自体のピントが少し甘いので、高解像度の画像と比べても情報量にそれほど差が出てる訳ではないけど、大きくして眺めるにはちょっとストレス。

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この前のブログ記事で使った画像はこれにPhotoshopでダストを被せる加工をしてます。粒子の荒れたモノクロフィルムみたいな質感を出してみました。


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比較するとこんな感じ。左が購入した高解像度の画像、中央がネット画像、右がネット画像にダスト加工した物。フィルムの粒子の質感が「解像度の単位」になるので画質の甘さが気にならなくなります。自分の撮った模型写真なんかもピントが甘かった時はこっそりこの加工をすることもあります。


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先週、下北沢のSUNNYに寄り道しました。バリケードの材料になりそうなジオラマアクセサリーを物色に行ってうっかり買ってしまいましたよ。ミラージュホビーの1/72 "クブシュ” 。ワルシャワ蜂起の際にポーランド国内軍がトラック(シボレー157)に自家製の装甲ボディを被せた即席装甲車で、言いようのないカッコ悪さが魅力です。

< Kubuś >

小ぶりなパッケージの1/72スケールのキットは、手にしたときに思わず衝動買いしたくなるサイズ感があります。1/35スケールのAFVキットだとひと抱えになる大きさのパッケージにこれ買って積んでおく場所あるかなと思わず自分の部屋を想像してしまいますが、1/72スケールのキットは本棚に差し込んでおいても絵になるサイズ。まあ本も読まないのは捨てないといけないんだけど.. とりあえず一家に一台”クブシュ”。


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ランナー構成はシンプル。ボックスに一枚のランナーで十分収められる部品数ですが、ランナーが3分割してあるのはメーカーの小さな射出整形機で対応できるようにしてあるんでしょうね。ミラージュのキットを買ったのは初めてですが、2015年リリースのキットということもあってバリやヒケも殆どなく、かつての東欧キットのように離形剤べったりということもなく、清潔感のある仕上がり。


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説明書はカラー印刷で丁寧な作り。現存するクブシュの実車は機銃で撃たれた無数の弾痕が車体に残ってるのですが、その「弾痕配置図」も掲載されてます。再現したい人はそれ見て加工してね、というサインでしょうか。デカールは紛失しないようにとの配慮で説明書にホチキス留め。

車両の説明はポーランド語と英語のダブルテキスト。だけど何この文字の小ささ! 必要な情報を入れるのは大事だけど読むことを拒否するサイズ。1/35スケールのキットのフォーマットを1/72スケールの箱のサイズに合わせてそのまま縮小印刷したのかしら。まあ読まないからいいけど。


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んでもって作り始めてしまった訳ですよ。あっという間に形になるのが1/72のいいところ。
詳しいキットレビューはまた今度ね。

いつもは1/35ばっかり作ってるけど、たまに違うスケールのキットに手を出すのもいい刺激になります。スケールによってディテールの解像度が変わるのは当然としても、情報圧縮のルールが違ってくるのは面白い。プラスチックのパーツとして再現できる大きさにデフォルメするのか省略するのか.. それに戸惑うこともあるけど、単一のスケールのモデル制作ばかりだと見失っている模型の意味が見えてきます。

Commented by vol de nuit at 2021-03-16 19:34 x
72のクブシュ、35よりも気軽に組めそう。
気になるのは6穴ホイールですね...
Commented by hn-nh3 at 2021-03-17 05:12
1/72の飛行機を作るのと一緒でサクサク作れますよ。細かいところ気にしても仕方がない。こういうだと割り切る。

ホイールはね。これは違うでしょという気はします。本物はフォード形のオニギリ穴のはず。
でも本物でホイールが確認できる写真って無いんですよね。フェンダーの影になってるし、 捨てられた時はホイール持ってかれちゃってるから、実際どんなホイールだったかは時間の向こう側の話。

模型ではホイールは民間車仕様ということでカラーを黒で塗ってしまえば、写真にはほぼ写らなくなるハズ(笑)
Commented by かば◎ at 2021-03-19 13:35 x
入手されたヘッツァーの写真、解像度的にはバリケードのレイアウト以上のディテールはよく判りませんが、広場を背中に、「ここを守っちゃるで!」的な決意がにじみ出ているようで、心打つものがありますね。

手元の「ワルシャワ蜂起」(梅本浩志・松本照男著、社会評論社)という本に8月4日時点の市内の(非常に大まかな)勢力分布地図が出ているのですが、それを見ると、ヘッツァーが頑張っているちょっと前方を横切るイェロゾリムスカ通りは、ごく短い区間を除いてドイツ軍の勢力下にあり、「なるほど、(後の)フファットはそちらからの攻撃に備えていたのか」というのが判ります。

ミラージュの72クブシュ、確かこのキットは私が持っている35版とほぼ同時期に発売されたもののはずで、キット内容もおおよそ35の縮小版という感じ……?(っていうか、35版が72並みの構成?)
ちなみに35版の実車解説シートはこのようになっています。
https://kabanos.cocolog-nifty.com/photos/temp/20210319_130622.jpg

一行の字詰めがちょっと違う程度で、基本、中身は同じですね。
Commented by hn-nh3 at 2021-03-19 20:52
イェロゾリムスカ通りというと、南に300mくらいの場所ですね。目と鼻の先にドイツ軍がいたのですね。修理して走れるようになっても(前線に出るための)バリケード解体が許可されなかったというのは、そんな事情があったのですね。地理的に考えるとよく分かります。

ポーランド側から撮った写真で通りの先にドイツ軍のブルムベアとボルグヴァルト爆薬運搬車がいるのが写ってるのがありますが、そんなのに撃たれたらたまらないな...

1/72 kubusは、説明書の弾痕図を見ながらドリルで穴開けたりしてます。いずれ紹介しますね。
by hn-nh3 | 2021-03-16 10:04 | 写真 | Comments(4)