Le Potez25 de l'Aeropostale

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1920年代、航空機が登場して砂漠や巨大な山脈を超えて郵便を届けられるようになった。飛行機は空を素早く飛んで、遠くまで手紙を届けることができる。しかし夜の翼を休めている間に汽船や鉄道に追い抜かれてしまう。それを良しとせず、誰よりも早く郵便を届けるために危険を冒して夜間のフライトに挑む。サン=テグジュペリの小説『夜間飛行』(Vol de nuit)で描かれるのはそんな南米の郵便飛行士の物語だ。

エールフランスの前身となるアエロポスタル社(Compagnie générale Aéropostale)は1918年に設立。フランス、アフリカのフランス植民地、南米を結ぶ航路を開拓、郵便事業を始める。1929年にはアンデス山脈を越えてウルグアイ、パタゴニア、チリまで航路を伸ばし、1930年にはダカール、ナタール間の大西洋無着陸飛行にも成功する。最盛期の1930年には300機以上の飛行機を抱え、3200万通の手紙を運んだという。


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フランスのトゥールーズからカサブランカまでは飛行機で1日、カサブランカからダカールまでは1日半、ダカールナタール間の3150kmは船便で4日。そしてブエノスアイレスまでの4650kmは2日の飛行。ブエノスアイレスからアンデスを超えてチリのサンティアゴに至るルートは7時間。

地図を横にしてみると、新しい世界が見えてきます。フランスから北アフリカまではほとんど地続き。そこから海を越えて南米の海岸沿いに南へ。世界の果てまで飛行機を使って直線で結べるのだから魅力的な航路だったのだろう。そのラインの上を人が移動して手紙も運ばれていく。アフリカも思ってた以上に近い。20世紀のフランス文学、絵画にアフリカの心象が大きく影響しているのはこの地理的な結びつきが大きかったのかもしれない


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1920-30年代のアエロポスタル社のポスター


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図版 "L’Aéropostale Le courrier doit passer!" より


若き日のサン=テグジュペリがアエロポスタル社で乗っていたのはブレゲー14、ラテコエール28とも言われています。『夜間飛行』に描かれているパタゴニア便の飛行機はポテーズ25がモデルになっています。

モデラーとしてはこの郵便機のキットを作ってみたいところだけど、ハードルは意外に高い。ブレゲー14は2006年頃にAZmodelからキットが出ているけど現在は入手難。ラテコエール28はフロートのついた水上機タイプがSBSモデルのレジンキットで出ています。SBSのオンラインショップをさっき見た限りでは品切れかも。

ポテーズ25はロレーヌ12Ebエンジン搭載タイプがAZURから2019年にリリース。これが郵便機に使われた機体のベースになります。チェコのSpecial HobbyとフランスのAZURで共同開発したキットで、2020年にはSpecial Hobbyから追加デカールが発売されて、これにアエロポスタルの郵便機の機体マークが入ってます。

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ポテーズ25は戦間期のフランスの代表的な多目的機で、日本を含む15か国に輸出。生産はフランスで2500機、ポーランドやいくつかの国でライセンス生産もされています。アエロポスタル社は5機の郵便機としてポテーズ25を購入しています。アンデス山脈越えのブエノスアイレスまでの飛行を記録したフィルムにはF-AJDX、F-ADJY、F-AJDSの機体が写っています。


YouTube: Potez 25 Aéropostale


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有名な機体はF-ADJZ。アンリ・ギョメが乗った郵便機は冬のアンデス山脈で遭難。雪山で1週間を過ごし奇跡の生還を遂げます。


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キットを組んでみました。チェコのSpecial Hobbyは簡易インジェクションのいわゆる「東欧メーカー」として知られていますが、近年はCAD設計による金属金型を使ってるようで、POTEZ25のパーツもカチっとしてます。組み立てには少し気を使いますが、精度よく組み上がりました。複葉機を作るのは初めてだったから点付けの支柱で浮かぶ翼なんてグラグラして組むことすら出来なんじゃないか心配だったけど、いざ組み上げてみると不思議なくらいに安定してます。


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別売のデカールを買って驚いたのは説明書の充実ぶり。12ページもあります。アエロポスタルのマーキングの他にウルグアイ、パラグアイ、ギリシャ、ポーランドとなんともマニアックで見てるだけで楽しい。

アエロポスタル機には3ページを使って機体ごとの特徴とマーキングの変遷が詳しく書いてあります。F-AJD X/Y/Zの書体がそれぞれ違ったりとか、アンリ・ギョメ搭乗機(F-AJDZ)は増槽タンク付きだとか、綿密な考証を元にデカールを作ってるのがわかります。

詳しい解説があるからキットを組むのも簡単だね〜と眺めていたらちょっと気まずいことを発見しました。後部座席が”Modied Cokpit" と書かれていて、どうやら郵便機を作るためにはキットの改造が必要.. ここでいきなり制作のハードルが上がります。AZUR/Special Hobby はバリエーション展開には熱心なメーカーだから待ってればいずれは郵便機バージョンもリリースされるんじゃないかと思ったりはするけど、メーカーが別売で専用のデカール出したってことは、「デカールは用意したから後はがんばってね〜」というサインなんだろうな。


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キットは戦闘機用に後部座席の形状が円形リングの機銃銃座になっているけど、郵便機は民間仕様だから普通の座席。操縦席前方右側にある機銃用の窪みも不要。
こだわりを通すなら機体を切った貼ったする大仕事になります。ここで思案していたらたぶん3年くらいは普通に時間が過ぎてしまうので、意を決してカッターナイフで刻みます。最初は精度を気にせずザックリやって、だんだん工作の解像度を上げていく。後部座席の前方は穴を少し縮めるためにプラ板を丸めたものを用意。指でしごいて曲げた0.3ミリプラ板を2枚貼り重ねて曲面が一定になるようにします。簡単な長方形の開口部を最初に作ってから削り込んで円形のカーブに整える。操縦席前方の機銃用の窪みは機銃パーツをパテの替わりに貼って削り込んでボディと平らに揃えました。


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出来上がった民生機仕様の後部座席は本当のことを言うと、開口部の長さがもう少し短い。形を整えている間に少し大きくなってしまったよ。。
翼の支柱は操縦席の脇の機体につく部分の柱が機体の水平ラインに対して直角になるようにするのがポイント。前方の支柱が少し後に倒れたような角度になるから少し不安になるけど、角度が前に倒れると、翼の支柱がショートするので要注意。
(続く)

Commented by かば◎ at 2022-02-26 20:49
待ってました。AZURのポテーズ25。
いやあ、最近のAZURらしくかっちりしたいいキットですね。
我が家には、もう見るからに不良在庫のHITKITのポテーズ25が、エンジンパリエーション取り揃えて、確か3~5つくらいあったと思います(そしてたぶん一生作らないと思います)。

1:48のブレゲー14もストックがありますが、これはいつか作りたい……。

郵便機がらみといえば、メルモーズの乗ったアルカンシエルのエレールのほのぼのしたキットを派手に削り倒したものが、もう20年くらい放置してあります。

記事続編も楽しみにしています。
Commented by hn-nh3 at 2022-02-27 08:14
POTEZ25って胴体のサイズに比べて翼が大きいのにびっくりしてます。14.4mだったかな。翼だけなんだか1/48のキットから持ってきたような大きさ。翼面荷重を減らして高出力のエンジンでなくても飛べるようにしてたんですね。

AZURのこのキット、なかなかいいです。水平尾翼なんかもちゃんと形が整うようにパーツ分割も工夫されてます。現在は流通在庫がなくなってきているのがちょっと残念ですけど。。

キットにはエッチングパーツもあって、支線の基部のパーツもあります。小さな穴にリギングワイヤを通せるようになってるんだけど、機体にはエッチングパーツ小口を芋付けするだけなので、テンションかけたら持ってかれちゃうんじゃないかと、接着部分を補強する方法はないかと思案してます。

>>アルカンシエルのエレールのほのぼのしたキット

検索してみたら.. 囲みランナーのない頃のキットなんですね。
組むにも腕力入りそう。
Commented by かば◎ at 2022-02-27 13:25
先述のHITKITというのはポーランドの簡易インジェクション・メーカーで、私が知っている限り(持っている限り)ポーランドと関係が深い、エーファグ製アルバトロスとブレゲー19、ポテーズ25を各種出していました。

ポテーズ25だけでなく、ブレゲー19も主翼が大きいですよ~(一葉半形式なのでますます)。
この辺は偵察なども兼ねた多用途機なので、そこそこ航続距離も要求されたからというのも理由でしょうが、いかにも戦間機な感じがします。
(ちなみにブレゲー14は第一次大戦機ですが、これもまた主翼がやけにでかいです)

HITKITのポテーズ25は結構繊細なエッチングパーツも付属しているのですが、いかんせん、プラパーツの出来がひどすぎる……。
AZUR/special hobbyのポテーズも、イスパノ搭載型やジュピター搭載型と各種出ているようなので、これから作るとすれば絶対にそちらですね。

エレールのアルカンシエルは、たぶん箱合わせで1:75という半端なスケールでした。一応キット名称での形式は70ということになっているのですが、ディテールは改修型の71とごちゃになっていたりと、その点でも結構悩ましいキットです。
空飛ぶバナナみたいな独特すぎる側面形は他では見られないものなので、いずれ掘り出す機会があれば……。
Commented by hn-nh3 at 2022-02-27 19:21
最近、Special Hobbyからポテーズ25 B2 ジュピターエンジンのポーランド機のバージョンが出ましたね。エンジンは当初からランナーに入ってたので、このバージョンが本命なのかしら。https://www.kfs-miniatures.com/1-72-potez-25-b2-polish-jupiter-special-hobby/

ポテーズ19もいいですね〜機会があれば作ってみたいな。
戦車の場合はエンジンの出力発達史にしたがって、初期の戦車は小さくて時代が下るにつれて車体が大きくなる、と言う流れがあると思うんですが、飛行機の場合は、空に浮かぶために初期の飛行機の方が大きかったりするのが面白いです。手元に1/72のI-16(ハセガワ版)もあるんですが、1/72のポテーズ25と同じスケールとは思えない。

エレールのアルカンシエル。1/75なんですね。ますます面白そう。ぜひこの機会に完成を!!!
by hn-nh3 | 2022-02-25 20:20 | ヒコーキ | Comments(4)