断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

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タビメモ

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旅先での写真から。
フランス、アルザス地方の平野部。ライン川西岸の乾いた黄褐色の土、雨が近づく空の光の色。9月。

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南部ドイツの田舎のあぜ道。砂利混じりの乾いた道の轍に沿って点々と生える雑草。よく見ると低い地這性の植物とロゼット状に伸びる草の濃いグリーンの2トーンがあることがわかる。

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道端に生える芝草の類。一様なグリーンではなく、ひとつひとつ独立した草株が密生して一面のグランドカバーを形成。一面の緑のカーペットではなく、疎らに地表面が残っているのが自然。

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少し丈のある下草。高さは30cm~50cm程度。すみません名前はわかりません。「ヨーロッパの雑草図鑑」なんていう便利な本はないのかしら?

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これは、タンポポですね。なんだ、ドイツも日本と生えてるものは変わらないんだね.. というより日本の野山に咲いているタンポポの殆どは、ヨーロッパ原産のセイヨウタンポポ。いわゆる帰化植物。

植物の国境は曖昧です。近所の空き地なんかでよく咲いている白いヒメジョオンも江戸末期に移入されて明治の頃にはすでに雑草化してたんだとか。
その逆でススキは園芸植物としてヨーロッパのあちこちの庭園で栽培されてましたね。日本原産のギボウシもあちらではホスタという名前でナチュラルガーデンの必須アイテム。農家の庭先の花畑もエキナセアとか日本の園芸ショップで売ってる花と変わらず、流行はワールドワイド。世界中の植物はオランダに集められて世界中に拡散しています。

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ドイツ南部の小さな街の石畳の表情。ヨーロッパの旧市街の路面は必ずと言っていいほど石畳。舗石というとモノトーンなイメージあるけど、使っている石は意外に色とりどり。白やグレーだけでなく赤っぽい色の石も混じってます。赤御影ではなさそうだからチャート石の類? 前にプラハの石畳は何色なのか調べたことあったけど、その時も意外に赤っぽい石を使っている写真が多かった。そういえばヘルシンキの石畳も赤みが強い石。

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石の隙間に生える雑草。基本的には石畳の作り方は下に砂利や砂を敷き詰めて石を叩き込んで動かないようにするから、草は生えにくいはずだけど、長い間に落ち葉や土が隙間に溜まったのかしら。写真を撮った場所は小さな教会のある広場の片隅でそこが影ができやすく、いつも湿ってるので草が生えたのかも。

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マンホールと石畳。マンホールの周りにぐるりと石を並べて納めてましたね。石も不揃いで古そうな感じですが、ヨーロッパの石畳は必ずしも古いものではなかったりする場合も多いのだとか。戦後のモータリゼーションで一度はアスファルト舗装の車道にしたものの、旧市街の環境保護のため、路面電車を復活させて車の通行を制限してアスファルトをやめて石畳に戻した事例など。だから、石畳のある街並みだからといって、必ずしも昔からの風景、という訳でもなかったりするみたい。

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ケーブルドラムも見かけました。前に記事で書いたことがあったので、ちょっと反応して写真を撮ってしまいました。風化した色合いとかモデリングの参考になります。

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ドラムの直径にはいくつかのバリエーション。大きなドラムは太い電線。小さなドラムに巻いてあるのは細い電線。こう書くと当たり前に思うけど、これを見るまではドラムのサイズの違いはなんだろう?と思ってましたよ。

ドラムが勝手に転がっていかないように、適当なものでストッパーをかませてあります。こういうリアルは意外と盲点。

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by hn-nh3 | 2018-10-16 20:24 | 資料 | Comments(2)

戦争のかたち

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既刊本の紹介。「戦争のかたち」(下道基行 著  2005/7 発行 リトルモア 20.8×14.6×1.6cm 120P )
かれこれ10年以上前になるが、北海道の十勝平野の海岸線に戦時中に作られたトーチカ群が今も残っていることを知った。軍事構造物としてはナチスドイツが大西洋岸に築いたアトランティックウォールの要塞群が有名であるが、旧日本軍が米軍の上陸に備えて北海道の太平洋岸に構築したトーチカはなんとも貧弱で、侘しく取り残された風景が気になってしまった。

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そのころに見つけて買った本です。紹介する画像はすべてこの本から。

2005年というと、Googleの画像検検索、気になる本はAmazonで購入というのが情報との出会い方として一般的になっていただろうか。発信の仕方も大きく変わっていった頃か。カメラではなく、携帯で写真を撮って、HTMLを知らなくても使えるブログにアップしたり。

著者は1978年生まれ、2001年に武蔵野美大油絵科を卒業。卒業後にピザ屋で宅配をしている時に偶然出会った戦争遺跡に衝撃を受けてカメラを買って旅に出た、ということだ。決して軍事研究者だった訳でもなく、写真家だった訳でもなく。

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d0360340_19495288.jpgだから最初に言っておくと、廃墟マニアやミリオタのための写真集とか、歴史遺産の記録資料といったことを期待すると、少し拍子抜けするかもしれない。カメラを生業とした作家の写真集、といった風情でもない。..もっともっと軽い、のである。

だから面白い。戦争を知ってるとか知らないとか、そういう話ではなく、日常に紛れ込んでしまった「日常のかたちではないもの」を拾い集めた記録。

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前回の記事で少し紹介した大阪の東淀川区、西淡路高射砲台はこの本に載っている写真で知った。住居として改造されたこの砲台跡に住んでいた人もその頃は健在で、著者が2004年にインタビューした記事も掲載されている。

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同じく前に記事で紹介した東京の葛飾区 白鳥の高射砲陣地跡逗子の披露山公園の花壇に改造された高射砲陣地も写真が載っている。キャプションは地名のみで詳細な解説がある訳ではないので、ひとつひとつの写真の印象は薄く、昨日ふたたび本を開くまですっかり忘れていたくらい。もちろんそれは写真としての強度云々の話ではなく、通り過ぎる風景のように、気になった時にまた出会えばいいのだ。それだけの話。戦争ネタだからと言って別に懐古趣味的に語る必要もないし反戦的なフリをする必要もないし。

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「戦争のかたち」の歩き方 という見出しで、遺構のある場所の地図も載ってる。トーチカ、砲台、掩体壕などなど、実際に見に行く人は少ないと思うけど、これは便利かもしれない。というかこのフラットなビジュアルが、この本に通底するトーン。

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遺構が転用されて住居や公園施設になっている事例をポップなグラフィックに起こして説明している。物件毎の固有のディテールを捨象してタイポロジカルに表現したビジュアルは、楽しいけど写真に対して必ずしも成功していないように思う。気分はわからない訳ではないけど。


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その黄色いページに載っている「砲台パーク」こと、大分県の丹賀砲台園地の現存する砲台内部。トップライト屋根と螺旋階段を作って見学施設とした空間は圧巻。これはちょっと見に行きたい気もするけど、GoogleMapで調べたら地の果てのような場所

これに限らず、よくもまあこんなところまで行ったな、というのが多いです。自分もいくつかは実際に訪れたことがあるからわかるのですが、写真というのは1方向的なものだから必ずしも風景をリアルに捉えたものではない、という気がするのも事実。しかし、この本、間違いなく「買い」ですね。

本に載っている写真やビジュアルの一部、砲台住戸の住人インタビューなど、著者のホームページで見ることができます。

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(写真は全て「戦争のかたち」下道基行 著 より)

by hn-nh3 | 2018-09-12 22:04 | 資料 | Comments(4)
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1945年7月のベルリン。木製カートに乗った少年の画像は「Berlin and Potsdam 1945 - aftermath (HD 1080p color footage):Youtube から。

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終戦直後のベルリンを映したカラーフィルムですが、前に記事(難民カート)を書いた時に紹介したものよりも長いバージョン(30分)がYoutubeにありました。
廃墟となったベルリンの街。進駐するソ連軍や米軍、瓦礫を整理する市民。各地から引き上げてきた人々、交通整理にあたるドイツの警官。などなど見所は多く見ていて飽きないフィルムです。

戦後2ヶ月経った映像なので戦車など放棄車両の類はさすがに片付けられてしまっているようで、その方面を期待すると肩透かしをくらいます。

それでも映像の中にはこんな車両も。これは何?


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しかし、がっかりすることなかれ、今回の本題は映像に登場する荷車の類。前に書いた記事の続編です。 戦車ネタでなくてすみません(笑)

d0360340_05344197.jpgMiniArtの「ラゲージセット 1930~40年代」(no.35582) はボックスアートに描かれた廃墟の風景から、これは平和な時代の旅行道具ではなく、戦争中に避難する市民や住む場所を追われて難民となった人びとの荷物であることを暗示していると、前に記事(難民カート)に書いこともありましたが、そのキットが先日発売されたので早速に組立てレビュー。





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部品分割は細かすぎずアバウト過ぎず、といったところか。ベビーカーの車輪を支えるアームが装飾を兼ねたサスペンションになっている構造もしっかり再現されてます。エッチングにたよらず全てプラスチックで出来るのもいいですね。最近のミニアートらしく成形はきれい、一時期見られたプラスチックがポキポキ折れる現象も解消されてますね。思うにあれはプラ質の問題以上に射出成形時の温度管理が悪かったんじゃないかしら。

パーツの勘合もよく組立てもサクサク進んで、あとは車輪をつけて完成、ということろで問題発覚。車輪を車軸に取り付けるための穴が空いてないのです。組立説明図にはダボ穴らしきものが表現されていて、車軸には小さいながらも先端にダボがつくられているのに車輪側はのっぺらぼう。金型製作時のモデリングデーターに穴の入力を忘れたのかしら。セカンドロットでは改善されるといいですね。

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d0360340_08003590.jpg車輪に0.5mmの取り付け穴を開けて接着。サスペンションのアームつく車軸はカート本体から浮いた構造になっているので、実物はそれで衝撃を吸収できるようになっているのですが、模型としては華奢なので見えないところで補強したほうがよさそう。
ベルリンの映像に映るベビーカーは4台(1台は遠景だったので割愛)ですが、どれも車輪がスポークタイプ。キットはプレスタイプとなっているのが違うところですが、シルエットは同じで当時の標準的なタイプなのでしょうか。当時の写真でベビーカーの写真をいくつか確認してますが、ほとんどスポークタイプでした。まあそれをエッチングで再現するのは大変なので、プレスタイプでいいとは思います。

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カートの組み立て。これは少し前に発売された「小型カートとミルク缶」(no.35580)に入ってたものと同じ。裏面にはちゃんとシャーシが再現されてますね。小さな脇役アクセサリーながらもしっかりとリサーチして再現してあるのは嬉しいですね。こんなの自分でディテール調べて工作するの大変ですから。
前輪のステアリングの機構、引手が上下動するディテールもしっかり表現してあります。真鍮線で軸打ちすればそれぞれ可動するようにもできそう。こんなもの可動させて楽しいかという話はありますが。



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フィルムに登場するカートをいくつか。前輪と後輪の直径の違いのバランスなどいくつかのバリエーションがある様子。スポークは10本が一般的なのか。キットの車輪も10本スポークですね。
ちなみに前に記事(荷車メモ)で取り上げたMasterboxのフィギュアセットに付属のカートの車輪は8本スポーク。

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比較してみます。左がMasterboxのもの。右がMiniArtのカート。スポーク本数の違いの他にもサイズがずいぶん違います。まあこれはどちらが正しいという訳ではなく、タイプの違いと考えるべきものかと思います。8本スポークのカートも当時の写真で確認できます。ディテールは新しいMiniArtのキットのほうが繊細。

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小形カートとベビーカーの2ショット。とりあえず組立ては完成。軽くサフ吹いて記念撮影。

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そしてラゲージセット・オールスターズ。カートのほかにはトランク類とジャガイモ袋、などなど。エッチングパーツは無し、トランクに貼るステッカーがデカールで用意されてます。

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トランクも大きいのから小さいのまで。メーカーなど調べればモデルとなったタイプも分かるのでしょうが、そこまでは調べてません。ごめんなさい。
ルイヴィトンのモノグラム柄とか塗装でがんばって再現できたら楽しそう。このサイズでそれは無理だと思いますが。
寸胴のドクターバッグは側面が別パーツのはめ込み式になっていた少し潰れた感じがうまく再現されてますね。お医者さんが往診の時に診療道具を詰め込むのに便利な形なのでこのタイプはドクターバッグと呼ぶようですね。レッドクロスをつけた車両に積むなどちょっとしたアクセントになりそうなアイテム。
円筒形のバックが帽子ケースかしら。それぞれディテールもしっかり表現されてますが、取手の付け根など少し手をいれてやるとぐっとよくなりそう。


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ベルリンのフィルムにはこの他にもいろいろなタイプのカート、荷車類が登場。民間人の服装や荷物類がカラーで分かるのがいいですね。モデリングの参考になります。この他にもMiniArtのフィギュアのモデルになっていると思しき人物など登場して、その話もしたかったのですが、長くなるのでこれはまた別の機会に。

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前に書いた関連記事INDEX:
・難民カート
・荷車メモ

by hn-nh3 | 2018-08-22 09:11 | 資料 | Comments(17)

難民カート

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MiniArtからメールマガジンが届きます。何か登録したっけな?と思いつつ、好きなメーカーではあるからそのままにしてますが。

LUGGAGE SET(No.35582)がもうすぐリリースとのお知らせ。2018年のカタログにホワイトバックのモデリング画像で発表されたときになんとなく気になってましたが、このボックスアートを見て、やっぱりそうなのかと。
タイトルは1930〜40年代荷物セットとなってるけど、廃墟の街を背にした荷物は、夏のバカンスのためのものではなく、これは故郷を追われる人々の荷物なのだと。
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d0360340_19281217.jpg難民の話はこの前の記事:荷車メモ で少し触れましたが、このキットから想像されるのは1945年のドイツ人追放

敗戦で1200万人とも1600万人とも言われるドイツ人が旧領土や占領地から追放されたと言われています。当時のドイツ人の5人に1人くらいの人が住む場所を失った、ということでしょうか。着の身着のまま身の回りのものをカバンに詰めて、ベビーカーにもありったけの荷物を積んで西に移動する姿が写真に残ってます。

王道楽土の開拓からの引き輪げではなく、戦争の結果の国境変更により故郷を追われた人々。ドイツ国境は戦後に東側がごっそりポーランドになってるんですね。ポーランド自体も東半分をソ連に持ってかれて西側をドイツから得て、国自体が西にスライドしてるような有様。フィンランドも然り。国境はあくまで結果です。
そうしたヨーロッパの状況を知ると、北の島々が元の持ち主に返されるなんて幻想だってのがわかります。まあ元の持ち主って誰?という話もあるけど。

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もちろんキットの使い方はそれだけではないし、モデリングとしての個人的な興味の範疇は荷車系のベビーカーと小型カート。

キットのパーツランナーを見ると、MiniArtらしい繊細さでベビーカーの華奢な感じがうまく表現されてますね。PEパーツに走らずプラパーツのみで再現できるのは嬉しいですね。ハンドルは折れてしまいそうな細さでさすがに真鍮線で作り直したほうが良さそう。

スケルトンタイプの小型カートは牛乳缶セット(No.35580)に入ってるのと同じもので、ゴートカートとかドッグカートと呼ばれる当時一般的なタイプのもののようです。キットの箱絵のようにジャガイモ袋を積んでもいいしトランクを載せてもいいし、毛布を自作して積み込んでもリアル。

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ベビーカーと小型カート。前回の記事の時は「農業用カート」で検索しても当時の小型カートの写真をなかなか見つけられなかったけど、「難民」をキーワードに検索すると荷車やベビーカーの写真が続々と出てきます。キットと同じスケルトンタイプの4輪の小型カートの写真も見つかりました。
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d0360340_19434443.jpg上の写真は1946年7月、チェコからドイツ本国に向かう人の列。ベビーカーで荷物を運んでいる人の多いこと。確かに、普通の一般家庭にある車輪つきのカートというとベビーカーぐらい。

キット化されたタイプも見かけます。側面の模様に違いはあるものの一般的なメーカーのものだったのでしょう。それがどこのなにかまでは突き止められず。

ベビーカーやカートが写っている動画も見つけました。


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敗戦後のベルリン。避難先から戻ってきた市民でしょうか。3:45秒にベビーカー、3分50秒と4分00秒にカート、5分10秒頃にベビーカー。街はまだまだ廃墟。破壊された車両も転がったまま。ガソリンなしで動けるから便利なのか、自転車乗ってる市民が目に付きます。


その他、こんな写真を見つけました。
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1945年3月、ドイツ国内ベンスハイム。廃墟を前に呆然とする女性の名前はアンナ・ミックス。64歳。写真はWikimedia Commonsより。

この人、どこかで見たことある、と思ったら、これ。
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MiniArtのフィギュアセット:1930~40年代のドイツ市民(No.38015)。真ん中のお婆さんのモデルですね。といっても全く同じではなく、モデルの女性は60代のメガネをかけたシルバーマダムですが、キットではもう少し年配、70過ぎの老婆といった感じで脚色されてます。

彼女に限らずMiniArtのフィギュアには当時の写真の中にモデルがいたりするので、ひょんなところで出会ったりすると楽しいですね。右端の警官もキットにコンパーチブルで入っている制帽をかぶった姿でいるのを、上記の記録フィルム(5分05秒頃)の中で見かけましたよ。

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去年のSUMICONの時に作ってみたもの。フィギュアの塗装は出戻り後初めてだったので、顔の塗り方とかまだまだですね。すべて油彩です。右手の杖は真鍮線で作り直してあります。使うシーンにあわせて左手の角度はキットのオリジナルのポジションから少し調整したと思います。

フィギュアは塗装作業とベースへの固定のために足裏に打ったピンを洗濯はさみに固定して写真を撮ってますが、ピンなしでも自立するように足先の向きとか微妙な角度を調整してます。これに限らず静止した立ち姿のフィギュアは足の角度や腰とか背中の向きを微調整して、支えなしでも自立するように調整するといい感じになります。両足がつくる台形の地面のエリアに重心を納めればフィギュアは自然に立つようになります。

もちろん実際の人体とフィギュアでは身体部位の重量バランスが違うので厳密には違うのですが、人間が立つというのはそういうことですから。自分の中の言葉では「重心が見えるようになる」までポーズを微調整します。
歩いている、動いてる姿勢の時は、重心を足先から外すようにします。外れた重心に向かって身体を移動させて再び安定させようとする随意反応が「運動」だから。

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製作記事:Grille弾薬運搬車改造3.0cmFLAK 1945.5 Praha

1945年5月、戦争終結時のプラハで我が身の行く末を案じるドイツ系女性、という設定で登場してもらいましたが、見立てはだいたい間違ってなかったですね。

この時は、車両の塗装やジオラマベースの製作そしてフィギュアの製作など、最後はバタバタでろくに製作記事も残さず完成させてしまったので、どこかで機会をつくってそれも書き留めておきたい気もします。車両に載せた新聞とかパンの「焼き方」とか、いつか忘れないうちに。


by hn-nh3 | 2018-05-26 09:41 | 資料 | Comments(4)

ロコムモデル

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超解像度のエッチングパーツを発表するROCHM MODEL(ロコムモデル)。その恐るべきディテールと考証密度は圧倒的。四谷仙波堂でもページを割いて詳しく紹介していますね。

(写真はいずれもロコムモデルから)
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見てるとクラクラしてきます。エッチングパーツを発表しているのは今のところ殆どパンターとティーガー関連で自分にとってはどちらの車両も「今期の生産計画」には入ってないこともあって、これを使うことはないだろうなとスルーしていたのですが、たまたまメーカーのホームページを見て、ちょっと心を掴まれました。

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ホワイトバックの写真が印象的なページデザイン。エッチング製品の紹介コーナーもさることながら、それ以上に主催者のRochmCheng氏の制作する模型の数々:Workbench が素敵です。
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未完成キットのパレード。上の写真は紹介用にこちらでレイアウトしたインデックスなので、ホームページで直接見てもらったほうがいいと思いますが、キットのオリジナルの部分と手をいれたところのバランス感。これを見ているとプラモデルって完成してなくてもいいのかも...というより、未完成の状態こそが模型の美しさなのでは、と思ってしまいます。

自分の模型が完成しない言い訳に使うつもりではないけど。

もちろん、模型は塗装までして完成させても魅力的。RochmCheng氏の完成模型のGalleryも必見。
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詳しくはページを直接見てもらいたいのですが、これまた超解像度の塗装表現。
現実の車両の塗装の光沢感とうっすらと積もった土埃。いつもそんなに汚れたりあちこち錆びたりしている訳でない戦車のリアリズムが追求されています。そして、足回りの泥汚れやレインマーク、排気の煤やグリースオイルの染みも車両の設定にあわせて本当に必要なものだけが的確に。

この作品群を見てると、流行のウェザリング商材の塗装見本的なテクニックというものが、リアルさの追求からいつの間にか遠くなった様式的な表現にも思えてきます。我が身も反省。

by hn-nh3 | 2018-05-23 08:36 | 資料 | Comments(6)

荷車メモ

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At the market in Baryssau, Russia 1942:Franz Krieger

1942年、旧ソ連領内(現ベラルーシ)ミンスク近郊の都市、ボリソフ(Барысаў)の市場での一枚。撮影はフランツ・クリガー(1914-93)。オーストリアの写真家で戦時中はPKに所属。> LENS | World War II Mystery Solved in a Few Hours
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AT THE BERESINA NEAR BARYSSAU, RUSSIA 1942:Franz Krieger

写真はいずれも PIXPAST より。カラーフィルムのプライベートコレクションで、WEBで公開されている大戦期のカラー写真はフィルムからの色再現が見事で当時の実際の色調を知ることができる貴重な資料。
AFVに限定した写真コレクションではないので、それを期待すると少しがっかりしますが、それでも独ソ線初期のソ連戦車(BT,T-35)やドイツ軍(3号戦車、8輪装甲車、ソフトスキン)やフランス線で遺棄された仏軍戦車など、原版自体の発色や退色で再現しきれてない色もあるけど、このコレクションに登場する戦車や車両の色調は模型製作の参考になります。白眉はアフリカでロンメルが使用していた”MAX”のカラー写真でしょうか。個人的には当時の街や村の風景、人々の姿などAFV写真集では得られない情報がたくさんあって好きですね。
写真にはいずれも著作権があるので、上記2点は有料データー購入。



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製作中のKV-1戦車は、必要なメッシュ材料の調達や細部仕様の確定作業で、ちょこっと休憩タイム。(そのまま中断、ってことにはならないので大丈夫..) 

今日のお題は当時の写真に登場する農業用カート。

秋葉原のパーツバラ売りコーナーでちょっと前に購入。
このコーナーは戦車のキットのパーツランナーをバラ売りしていて、欲しい部品の調達に便利だったりしますが、フィギュアセットもランナーを細切れにしてフィギュア単体でバラ売りしてたりします。セットはいらないけどあの人は気になるなーなんていうときに、出会えると嬉しいですね。

もちろん全てのキットが並ぶ訳ではないので(どっちかというと在庫処分?)パーツとの出会いは一期一会。使うあてもないのに、つい買ってしまったりします。
                        
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小型のカートのパーツはMasterBox 3567「第二次大戦期の西欧市民」のセットに入っているもの。キットの箱絵には姿は描かれてません。農夫の傍に置く小道具にでもとセットされたのでしょうが、しかし2人の大人と少年少女が並ぶシーンにはちょっとそぐわないので表紙からは省かれたのか。いずれにせよ、このキット(セット未購入)に小型のカートが入ってるなんて知りませんでした。

d0360340_13394751.jpg余談ではあるけど、このキットにはシリアスな話題に触れてしまう部分があって、ボックスアートの右側に登場するヒゲを生やしたおじさんは実はユダヤ人だというような話。
これについては、かつて ”赤軍博物館別院 別当日誌”や模型慕情さんが記事で扱っていたのでそちらも参照。

ボックスアートの裏側には小型のカートと4人の組立図。帽子姿のヒゲのおじさんはキッパ(ユダヤ帽)とのコンパーチブル。少年も帽子を選べます ..軍帽をかぶって台車で何を運ぶんでしょうね。箱裏絵の構図からなんだかいろいろと想像してしまう。

どうしたものか、荷車の風景写真でピックアップした冒頭の2枚。意図したものではなかったのだけど、ボリソフ、ミンスクという街は、避けがたくそのことに関わる場所だったようです。
それ以上はここで語ることはしませんが。

話題を変えましょう。
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組み立ては一瞬です。荷台のフレームや車輪のスポークなどパーティングラインの処理は少し面倒だったけど、簡単に組みあがります。
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カートの裏側。前輪は引棒にあわせて方向転換できるように構造。引棒も高さを変えられるようなディテール。接着してしまいましたが、真鍮線を軸打ちすれば可動にもできそうです。動かして遊ぶことはないと思うけど。
なんとなくひっくり返ったカブトムシみたい。本来は何を運ぶためのカートなんでしょうね。

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このタイプのカートはポピュラーなのか、MiniArtの最近作:「ミルク缶と小型カート」(no.35580) のセットにも入ってますね。荷台のコーナーに柱のないタイプでMasterBoxのものとは細部が異なります。特にどこかのメーカーが専売特許で生産しているものではないだろうから、いろいろなバリエーションはありそうです。

d0360340_14285900.jpgMiniartnのキットの組立て説明図を見ると、前輪周りも少し複雑な構成。どちらが正解というものでもなさそうですが、モールドなどはこちらのほうがシャープな予感。ミルク缶は使う用事ないしとスルーしてたけど、買わないとだめかな。

この小型カートはアンティークとしても人気があるようで、Farm CartとかGoat Cartで検索すると、e-Bayなどで売ってるのが見つかります。花屋とかパン屋の店先においたら可愛いのでしょうね。

名前の話。Farm Cartというのはわかりますが、なんで「Goat Cart」というのか。検索するとヤギに牽かせた小さな馬車の写真がでてきて、「Goat Cart」というのは、総じて子供が馬車遊びをするためのおもちゃと思われます。しかし、それは2輪のいわゆるリンバーの子供版がほとんどで、キットでも再現されたタイプの4輪のカートをヤギで引いている事例は見つからず、なぜこの4輪カートも「Goat Cart」というのかは結局わからず。馬車とか西洋アンティークに詳しくないのではっきりとしたことは分からないけど、小型のトイカートのことをゴート・カートと呼ぶのかもしれません。ひょっとして、ゴーカートというのもそこからきてるのか?

この小型のカートが当時の写真に写っているのを探したのですが、見つかりませんでした。考えてみれば、目の前をティーガーとかパンターとか通り過ぎるのはカメラマンもすかさず写真に撮るけど、スターリン戦車に背を向けてこんな民生用カートを撮ったりはしないと思うし。

(築地市場でターレーを撮らずにゴミ収集ビークルにカメラを向けるようなもの...)

とはいえ、意地もあるから見つけました。キットのタイプそのものではないけど。
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YouTubeの動画:Rhineland-Palatinate in April 1945 (in color and HD) 10:00頃に登場

荷台がフレームのスケルトンタイプではなくて板で組まれた箱型タイプ。スケルトンタイプはミルク缶とか干し草運んだりするには便利ですが、小物を入れて避難するにはこっちの箱型タイプのほうが役に立ちそうです。暇なときにでもキットの荷台をこのタイプに改造してみようかしら。

この動画が撮られたのは1945年4月。ラインラント=プファルツ州ということで地理的にはベルギー、ルクセンブルグ、フランスと国境を接するあたりか。

「Goat Cart」は検索すると、German Farm Cart という名前ででてきたりもするから、ロシアや東欧ではなく、ドイツやフランスなど西ヨーロッパで一般的な小型荷車という気もします。(要確認)

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1/35スケールのキットで民生用/非武装カートにどんなものがあるかを集めてみました。軍用タイプは除いて、その他にも、件のMasterBoxのゴートカートのようにボックスアートに載ってないもの、一輪車など手押車のタイプ、見落としたものなどまだまだあるかも知れません。レンジキットメーカー:スターリングラードから出ている農業用カートはまさに冒頭の写真に登場するようなタイプ。タイトルにロシアの荷車とかウクライナの荷車とかありますが、地方によってどう違うのかはちょっと調べたくらいではわからない奥深き世界。

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レジンメーカーのスターリングラードからは、荷車に避難民を乗せたセットも出てます。上掲の動画もそうですが、民間用カートが登場する風景を探すと、従軍カメラマンが写真を撮ってる場所というと、やはり戦場から避難する、占領地から逃れる難民の写真にぶつかります。

この母子が荷車に乗った写真はドイツ軍がいなくなった村に帰還する時の写真のようですが、いずれにせよ戦争は抽象的な戦場ともいう無人の荒野で専ら行われていた訳ではなく、日常の街や村、畑があったところで起きていたことなんだなと..

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小さなカートが気になってキャプチャした写真ですが、背景は完全に破壊された村。

MasterBoxの小型カートのキットは、この前のSUMICONで制作したT-60のジオラマで使えるかと思って買い込んだものでした。
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記事は:ROSTOV 1942.8 :T-60 (Plant no.264) INDEX 参照

舞台設定はスターリングラードの前哨戦、近郊都市ロストフ陥落の少し後の風景。撤退、そして新たな戦線に送られる兵士、占領された街や村から逃れる住民の姿など、小さなベースの外側で起きている出来事が見えてくるように、何かベースの中に関連した小物を配置したくて、その候補のひとつで買ったのがMasterBoxの小型カート。

結局、スペース的な制約もあったし、小物の設定に作り込みが足りないと冗長になるだけなので、壊れたカートを配置するのはやめましたが...
戦場ではあるけど同時にそこは誰かが普通に暮らしていた日常でもあるような。
それもあって、戦車に踏み荒らされるのは草原ではなく麦畑。

戦車の模型を作る以上は、反戦を声高に訴えるとか戦争の悲惨さを伝えよう、なんてこと言うつもりは全くありません。しかし、戦車の模型を置くための「ベースという模型」は戦車がくる前からそこにあった場所、ともいうような日常世界をどこか表現しておきたいという気持ちがいつもあります。戦場だけど日常世界でもあるベース、の表現。 兵士たちがトランプに興じる戦場の日常ということではなくて。
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なんとなく雨の日は内省モード。





by hn-nh3 | 2018-05-13 18:23 | 資料 | Comments(4)

重力と線

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象を飲み込んだウワバミのなかみを書いてみました。正確に言えば、サン=テグジュペリの「星の王子様」の挿絵を真似て書いてみたところ。新しいシャーペンを買ったので、試し書きがてら久しぶりにシャーペンで絵を描いてみた。

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シャーペンを使う機会はめっきり減ったけど、模型制作で正確な線を引くにはやっぱりちゃんとしたシャーペンが欲しい。リベットを打つ位置やカットする寸法を定規から正確に転記するには、できるだけ芯が細いことが理想だけど、強度のこともあって芯の太さは0.3mmが限界なのかと思っていたら、0.2mm芯のシャーペンがありました。その名は「orenznero」(オレンズネロ)。Pentelから2017年2月に発売。(コンセプトドローイングはメーカーサイトより引用)

d0360340_18372300.jpgメーカーサイトによれば、芯の減り具合にあわせてシャフトのパイプがスライドすることで極細芯で書くことが可能になったのだとか、また自動芯送り機構を搭載して芯の出しすぎで折れるのを防止する、とのこと。

ちょっと興味を惹かれたので買ってみました。新機軸の技術云々以上にドローイングの製作図面のようなロゴがツボだったので、ほとんどジャケ買い。
届いたパッケージは黒地にシャーペンの図面のグラフィックがクールでよい感じ。

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早速、箱を開けて常用のシャーペンと比較してみます。上が新しく買った「ORENZNERO」0.2mm。下が常用のシャーペン。同じくPentelの「GraphGear」0.3mm。芯を保護するパイプの太さをデジタルノギスで測ってみると。「ORENZNERO」が0.5mm、「GraphGear」が0.8mm。

ちなみに「ORENZNERO」のネーミングは左側から読んでも右から読んでもオレンズネロ。自動芯送り機構でずっと描き続けられることを表現しているのだとか。

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ガチンコ対決。0.2mmと0.3mmの芯で買いた線と文字。芯の硬さにも影響されて、ぱっと見でそんなに変わらなく見えたりして正確な比較にはならいのですが、0.2mmのほうが線は軽い感じですね。折れずに描けます。ただ、オレンズネロの場合、シャフトからほとんど芯が出ないで書けるようになっている反面、たとえば定規で精密な線を引くとか、定規の目盛りにあわせて寸法をプロットする、というような使い方をする場合は、シャフトの「厚み」が少し邪魔になるかも。芯を余分に出して、折れやすくはなるけど芯の細さを生かして使うのがベターかな。

d0360340_19112868.jpg使い終わった後は、ノックボタンを押しながら芯を紙に押し付けてやると、芯送りのシャフトパイプがペン本体に収納される仕組み。

鞘に収まるというか亀みたいというか、精密なシャフトが本体の中に隠れることで、うっかり床に落として先端を曲げてしまう事故を防げるのは嬉しい配慮。

今まで落としてオシャカになったシャーペンの多いこと。紙の上に文字を書くだけならそうでもないけど、模型のパーツを手に持って、寸法を移したりしている時に、ついうっかり手から滑り落ちること、ありますよね。



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「本当の定規」も買いました。コクヨから発売の15cmの定規。30cmnのバージョンも発売されてるみたいですね。gizmologの記事で知って購入。AMAZONなどでは売ってなくメーカーの通販サイトから。

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この定規の画期的なところは、何よりも「厚みのない線」を実現したこと。通常の定規のように目盛りを印刷(or刻み)の線で表現する限りは線自体の太さからは逃れられなくて、線の太さが0.2mmなら1cmといっても厳密には9.9mmから10.1mmまでのブレが生じてしまう。線の中心で目盛りを読むのか、端のどちらかで読むのか決めておかないと、誤差は結構大きい。たかが0.2mmといっても、シャーペンの芯の太さほどある訳だから。
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「本当の定規」では目盛りは線ではなく面のエッジで表現されている。物質世界で線を表現しようとする限りは、その線を実現する物質の「太さ」から逃れることはできなくて純粋な一次元の線というのは概念の中にしか存在しない。しかしこの「本当の定規」では、面という2次元の終わることにON/OFFの切り替わる「線」が現れる、ともいうような目からウロコの表示の仕方。

この定規の「正しい目盛り」を頼りにオレンズネロで引いた0.2mmの線が太く見えますね。こうなるとシャーペンももっと細い芯の製品が出ないかしらと思ってしまうけど、芯という太さが必要なものを使う以上は限界がありそう。やはりカッターで面を切り裂くことでしか物質的厚みを持たない線は引けないのだろうか。



しかし面が終わるところに厚みを持たない1本の線が現れるという思考にはワクワクしますね。物質から解放された無重力の線、ともいうような。

その昔、地球が丸くなかった頃、この世の果てには海が滝のように奈落へと流れ落ちる場所があって世界はそこで終わる、という風景が想像されてたようですが、この「正しい定規」を見てるとそんな世界の終わり方も素敵だなと思ったりします。

まだ訪れたことのない遥か遠く南の海と島々が突然に厚みを失った映像のように流れおちて世界が終わる場所。

その風景を想像してPhotoshopで作ってみたよ。
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世界の終わるところの想像図:※イメージなので実際とは異なる場合があります。



by hn-nh3 | 2018-05-11 20:24 | 資料 | Comments(0)

T34 & PANTHER : Season 2

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このブログを始めて1年。とりあえず続いてますが、世はSNSに移りブログはもはや過去のメディアかもしれません。いつも書きすぎてしまいますが、文章はできる限り短く、スティーブ・ジョブズのメールの返事のような完結さが理想です。

そもそも模型が語るに足るジャンルなのかは問わないにしても、たまにはティーガーとかパンターの記事も書いたほうがいいのかしら、人気ブログを目指すなら......
いちおうコレクションには、ティーガー1の中期型(DRAGON 6700)とヤークトパンターG2(DRAGON 6609)も持ってたりします。仮組みの後、まだ時期じゃないと箱に戻しましたが。

ということで今回はゴールデンウィーク特別企画。
買ってしまいましたよ!TAKOMのパンター戦車。ただし転輪のランナーだけ.....

d0360340_13454495.jpg秋葉原YSのパーツバラ売りコーナーでTAKOMのパンターがランナーバラ売りしているのを見つけて、転輪パーツだけすかさず買ってしまいました。このランナー、ずっと欲しかったんです。

なぜかというと、通常の千鳥配列の転輪パーツの他にパンターの予備転輪が入ってるんですね。ハブキャップが取り外されてボルト穴がモールドされた予備転輪の部品が2枚1組のランナーに各2個、合計4個も用意されています。

パンター戦車はⅣ号戦車などのように予備転輪が標準装備になっていないこともあり、多くのキットにはパンターの予備転輪が入ってることはなく、不要部品が山盛りのドラゴンのキットにも転輪に余りはなく、予備転輪が欲しかったら通常の転輪を型取りして改造するかサードパーティのレジンキットを探すかという選択肢しかなかったので、これは嬉しい収穫。

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美しいですね。最新の金型技術が惜しみなく注ぎ込まれたモールド。実物の雰囲気を捉えたリムの部分のディテール、ゴムタイヤのメーカー刻印は「CONTINENTAU」ではなくちゃんと「CONTINENTAL」になってます。予備転輪なので中央部のハブキャップはなく周囲の8個のボルトもボルト穴として表現されてます。さすがに穴は貫通してなかったので0.4mmのドリルで穴を開けてみました。裏面にも繊細なモールド。戦車本体を持ってなくても、これだけでもきっちり塗装して完成させたくなるクオリティです。
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で、転輪だけ買ってどうするの?となる訳ですが、まあ察しはついてると思います。
このパンターの予備転輪を使ってT-34の転輪を作ろうという話。以前に書いた記事:T-34 & PANTHER の続編です。

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これだけ引っ張って、ようやくイントロ。なんだか最近のテレビドラマみたいです...
見てますよ、ブラックペアン。

時は1945年5月9日。ドイツ降伏後のチェコに進駐する第一ウクライナ方面軍第三親衛軍所属のT-34戦車。5月5日に首都プラハで起こった市民の蜂起。抵抗する残存ドイツ兵、寝返って蜂起部隊を支援するROA(自由ロシア軍)。5月8日、ドイツ降伏。9日に赤軍はプラハを占領。一部のドイツ軍部隊の抵抗は11日まで続く。ROA部隊は赤軍の報復を恐れて南進、米軍側に投降...

ベルリンから転戦してきたT-34戦車の砲塔にはベルリン戦で描いた識別用の白帯が確認できます。もっとも、この写真の面白いところはそこではなくて、この戦車の転輪。第2、第4転輪にパンターの転輪を使っていることです。同時に撮影されたSU-85でもパンターのホイールを装着しているのが確認されてます。

(5/2 訂正:※写真のT-34は-85ではなく六角砲塔の-76であるとセータ☆さんより指摘があったので訂正しました。
 その他、車体はSTZ製であったり面白い仕様の車両のようです。詳しくはコメント欄参照)
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前回のあらすじというか、図版の再掲を含めたダイジェストになりますが、このパンターホイールを装着したT-34は撃破したパンターから転輪を引っこ抜いてT-34のサスペンションアームに差し込んでみた即興的なものではなく、おそらくは占領した地区の工場か何かで大量に入手したパンターの予備パーツの利用方法として考案され、走行試験もした「代用転輪」だということです。写真から類推するに、車軸に差し込む転輪のハブはT-34のもの。2枚のディッシュ型転輪をボルトで固定する皿状の部品にパンターのホイールを加工して取り付けたものだと推測しています。

試しにT-34とパンターの転輪の図面のスケールをあわせて重ねてみたら、取り付けボルトの構成などがほぼ一致して簡単な加工で取り付けられるように見えます。写真を観察するとパンターのホイールは8ボルト、T-34のホイールは6ボルトで穴の数は一致せず、そのままでは固定不可能なため穴を開け直しているのが確認できます。
パンター用のホイールの塗装色はドイツ軍から鹵獲したままのダークイエロー。ハブキャップとボルトは当然のことながら4BO:ロシアングリーンだと思われます。

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TAKOMのキットの予備転輪の部品をT-34の転輪ハブに取り付けられるように加工してみます。6穴ボルトの位置を作図してパーツに転記、ボルト穴を0.4mmのドリルで開けてみました。T-34の転輪ハブは、ホイールと別体で部品化されてるキットはないのでプラの汎用材から自作しました。

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といってもプラ棒とプラ板の簡単な細工。WAVEのグレーの5.5mmパイプを3mmの長さに切断。0.5mmのプラ板からサークルカッターで直径9mmのフランジを切り出して穴あけ加工。

d0360340_15421196.jpgプラパイプのカットはテキトーです。同じサイズの部品を切り出すときは、本当はジグとか用意してレザーソーとアルミの切断ガイドなんか使って正確に切り出すのが定石ですが、カッターで見当つけて切っただけです。

便利な道具は、一度プラモ作りから離れた時に全部捨ててしまったんです。レザーソーもアルミの切断ガイドも半田ごても。戦車マガジンの戦場写真集シリーズもモーターブーフの資料本も、タミヤの8輪装甲車もイタレリのオペルマウルティアも。フィールドキッチンも絶版になった時に3セットぐらい買ってストックしてあったけど全て捨ててしまったな。もう一度始めるとはその時思わなかったし。

というわけで、出戻り後の制作環境は以外とローテク。
唯一、引き出しに残ってたのはオリンポスのハンドピースぐらい。高校生の頃、彼女に買ってもらった..とかではないけど大枚はたいて買って大事にしてたものだから感傷があったのでしょうね。まだありますよ、サフとか吹くのに使ってます。
迷彩塗装など繊細さが必要なのものに使ってるのは出戻り後に買ったアネスト岩田の0.2mm(HP-BP)。

話を戻します。ラフに切り出したプラパイプは両面テープで固定してペーパースティックで高さを揃えました。穴の大きさはパイプの穴そのまま。ドラゴンとミニアートのキットではサスペンションアームの車軸の径が違うので使用するキットが決まったときに調整するつもり。

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ボルトを植えてみました。MasterClubのレジンボルト、サイズは0.9mm。ボルトヘッドだけではなく差し込み用の裏足がついているのが便利ですね。下穴をあけて差し込むことで取り付け精度が確保できます。ボルト差込み用の穴は0.6mmに拡張、裏から瞬間接着剤で固定してます。

ハブのフランジを挟んで抱かせる裏側のパンターホイールは、スペアホイールを使うのはもったいないので、通常のホイールの軸を取り、穴をリーマーで拡張して使用。さすがにこちらはボルト穴の加工は省略

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ハブキャップはMiniArtの転輪セットから流用。手持ちのT34/76の転輪混ぜ履き用にと以前に買っておいた「T-34 WHEELS SET 1942-43series」(no.35239)。側面に放熱穴あり、接地面の溝なしタイプです。軸穴はMiniArtのもののほうが正確なのか、太めのドラゴンのキットに使うには穴を拡張するなど一手間かかるのが惜しいですね。早くT-34も出してよ MiniArt。

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パンターホイールと混ぜ履きにするなら、本当はT-34/85でよく使われている側面の穴と接地面の溝のないタイプ、MiniArtの「T-34 WHEELS SET 1943-44series」(no.35239)と併用するのが正解なのでしょうが、今回はハブキャップだけなので購入は見送り。そもそもT-34/85のキット持ってないし。

T-34/85はトップヘビーなシルエットがあまり好みではないということもあったし、MIniArtからリリースされた時にでも買おうと思ってたけど、いっこうに発表されないですね。そうこうするうちにズベズダから新金型で発売されるみたいですが、出来はどうなのかしらね。

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T34 & パンターホイール完成です。TAKOMのキットには4個分のスペアホイールが入っているから、通常のホイールを改造したものと組み合わせれば、4個の転輪が作れる計算。塗装の際にはホイール部分をダークイエロー、ハブキャップは4BOグリーンで塗り分けてみたいですね。

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T-34の純正転輪と組み合わせて並べてみるとこんな感じ。第2、第4転輪がパンターホイール改造転輪。比較用にパンターのノーマルの転輪も上に並べてみました。さっそくT-34/85に装着!と、行きたいところだけど..わが戦線に戦車本体は未受領。

by hn-nh3 | 2018-05-01 19:00 | 資料 | Comments(3)

4BO色

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ソ連戦車の色。4BOと言われるロシアングリーンは実際どんな色だったのか。
第二次大戦当時の写真はモノクロが大半で、カラーフィルムで撮影されたものの発色の問題があったり時代を経て退色してしまっていたりで、実際に目で見た感じのリアルな色からは程遠い。

d0360340_19113575.jpg最近出版された「AFVリアルカラー」は塗装色の資料本としてかなり充実した本です。当時のカラーチャートやオリジナルの塗装が残る部品の写真、最新知見に基づいた解説、何よりも日本語版というのが有難い。

ソ連戦車の色も詳しく解説されてます。戦前のプロテクティブグリーン、ZB AU、そして標準色となる「4BO」。迷彩用の6Kブラウン、7Kサンド、6RPブラックなど、再現された色見本や車両への塗装例の綺麗なイラストでとても参考になります。

4BOはダークグリーンに少しイエローオーカーが入ったような色調ですが、実際には色の配合比率にばらつきがあって、いろいろなニュアンスのグリーンがあった、とのこと。

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「AFVリアルカラー」からの抜粋。(ページを写真に撮った段階で発色が変わっているので正確さには欠けます)左が出版に際して再現された色調。右は当時のカラーチャート。退色したのか、左のサンプル色とも既に違ってますね。

「4BO」は正確にはどんな色だったのか、というのは気になるところですが、それ以上に知りたいのは4BOに塗られていた車両が戦場ではどんな見え方をしたのか、という部分です。例えば同じ色の塗料でもツヤありとつや消しでは色の濃さが違って見えるし、退色したり土埃にまみれて色が変わって見えたり、レニングラードとコーカサスでは光の色が違っていただろうしで、実際にはどんなトーンの色調で見えたのか。

当時のカラー写真はそのイメージを探る貴重な資料ですが、フォルム特性で青みが強く発色していることも多く、またそこにフィルムの退色が発生して赤みが強くなり、紫色を帯びて補色となる緑が黒っぽくなっていたりします。

実験ですが、当時の写真をPhotoshopで色補正。退色して抜け落ちてしまっている色もあるので擬似的な退色補正でしかないけど、なるべく目で見た感覚に近い色調が出るように調整してみました。2枚組の右側はオリジナル画像。左が補正後。

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3枚目と4枚目の写真のT-34/76は1942年ウクライナで撮影のものと思われますが、夏の強い日差しと土埃でかなり白っぽく見えてます。4BO自体が明るめのグリーンだった可能性や塗料の劣化でチョーキング(白亜化)を起こして明るい色調になったと言うことも考えらます。ただ、4枚目の写真の先頭のT-34の砲塔上面〜防楯や右フェンダーに強いグリーンが残っているので、やはり埃まみれになってこんな色調で見えていたのでしょうか。3枚目の写真も防楯周りに4BOらしき色。

d0360340_21263874.jpgただ、よくわからないところもあって、右のモノクロ写真はT-40Sのスクリュー廃止部分がわかる貴重なバックショットですが、この車体の色調はどう見ても暗色の4BOではないような気もします。

上からのショットなので、光の反射で明るく見えるということもありますが、別のカットでアイレベルから撮ったものでも明るい色調。新品車両だから退色したり埃をかぶって真っ白ということもなさそうだし。

グリーンというよりドイツ軍のダークイエローにも似た明度は、迷彩用の7Kサンドの単色で塗っているのかとも考えられますが、確たる証拠もなし。

さてさて、製作中のT-60 はどんな色調で仕上げようかしら..






by hn-nh3 | 2018-03-04 21:56 | 資料 | Comments(2)

魚市場の1日

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その巨大なスケール、夥しい数の魚、魚、魚。場内を縦横無尽に走り回るターレ。忙しく働く市場の人々。初めてここを訪れると、とにかく物量の凄さに圧倒される。目に映るものの意味が理解できなければ、一瞬ここはどこの国の風景かと思ってしまうような迷宮的空間。

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築地市場の攻略本を見つけました。
「築地市場 絵でみる魚市場の1日」
判型31×22cm 16ページ の絵本
著者は、このブログを見ている人ならご存知、あのモリナガ・ヨウさんです。

雑誌「Armour Modeling」の連載などで、イラストの描き語りともいうような手法で表現されるディテールへの眼差しが魅力ですが、そのトーンで築地市場の謎を解き明かしてくれます。

表紙からして凄いですね。セリ場や仲卸の店を俯瞰的に微細なディテールを描き分けています。ターレットトラックだって、ひとくくりに「ターレ」ではなくエレトラック、マイテーカーなど車種の違いも表現されてます。

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物語の軸は「築地市場の1日」。始まりは前日の夜から早朝3時頃の風景。各地の漁港からセリにかける魚を運ぶトラックがやってきます。正門を続々と通過する大型トレーラー。普通目にすることのないこの風景は、やはりここは「物流センター」であることを実感させます。

当初は船や鉄道での運び込みがメインだったので、この正門が搬入路として想定されてなかったこともあり、歩行者はトラックがビュンビュン通り過ぎる横をする抜けるように入っていくことになります。歩行者通路はバリケードや赤いコーンでかろうじて確保されてるそんなディテールもよく描かれてます。

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築地といえばマグロのセリ。五時半の開始に先だって仲買人が品定めする場面。マグロは肉質の確認用に尻尾が切り落とされてます。産地や目方を示す黄色い紙や赤いペンキで書かれたセリ番号.. マグロの並べ方が卸売会社ごとの島に分けられてるエピソードが吹出し的に挿入されるなど、その場からは見えない物語も説明的にならない描写はさすがですね。この島ごとにセリは行われるので、時間とともに風景は移動していきます。

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セリが終わって魚は仲卸の店に並びます。店ごとに取り扱う魚の種類も違って、その数600あまり。市場の巨大な大屋根の下、ピカピカとした電球に照らされて魚が所狭しと並べられている風景。上から見た図解的なイラストは魅力的。ここは街の魚屋さんとか料理店などの買付人と言われるプロのための店。魚の問屋さんですね。

最近は一般の買い物客にも売ってくれる店も多いです。魚につけられた価格(キロあたりの単価が記載)を見て、自分でどの魚にするか選んで、上からぶら下がるビニール袋に魚を入れてお店の人に渡すと、目方を計ってくれて売値(キロ単価×目方)が決まります。公設市場なので基本値切りはなし。店の奥の帳場に行ってお金を払って品物を受けとって店を出ると言う仕組みになってます。

イラストは本当によく描けてます。魚を包む紙、輪ゴム、クリップで吊られた注文伝票、濡れないようにラッピングされた計量計。上を見上げると目にする「2階」や、活け締めの魚の鮮度を保つための「神経抜き」の技など小ネタも満載。描くためにかなり通いこんで、お店の人に聞き取りをして、写真だってこんなに描けたりはできないでしょう。

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9時を回ると築地の1日もそろそろ終わり。買付人の波も去り仲卸の店は片付けを始めます。休憩の食事をとったり売り場の清掃。12時を過ぎると場内に人はほとんどいなくなって市場は空っぽになります。

市場の1日はそこで終わりますが、魚はスーパーや街の魚屋に並んでそれぞれの家の食卓に。

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ターレやフォークリフト、小車と呼ばれる木製の台車など場内で見かける車両が克明に描かれてます。ターレも最近のバッテリーモーター車だけでなく旧型のガソリンエンジン車もあったり、ターレーの積載量も1tと2tの2タイプあることがしっかり押さえられてます。荷台下のバッテリーボックスも蓋を開けてもらったのでしょうか。中の様子がわかるイラストは貴重です。ボックスが2つにセパレートされてるのはショートタイプの1t 型ですね。

ターレの前輪ガードがボコボコで錆びてたり、木製の小車の荷台にはガールフレンドの名前、スクーターの足元に置かれた荷物や傷んで破れたシートにかけたビニール袋、などなど。「魚市場の1日」というテーマには直接関係なさそうなディテールが満載。というか作者の興味はまさにそっちか。物語はディテールに宿る。

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白眉はやはりこの本のカバーです。表紙と裏表紙、見返しに折り込まれた部分までびっしりと市場の鳥瞰図が描き込まれてます。隅田川沿いの荷揚げ場、セリ場、仲卸、買荷保管所(茶屋)、正門まで実際の空間が絵巻物のように広がっています。「異時同図法」と言われる、ひとつながりの空間に築地市場の夜から昼までの時間を描いた表現は、ある日の魚市場の1日でもあり、変わることなく繰り返されていきた日々でもあり。




by hn-nh3 | 2018-01-30 08:24 | 資料 | Comments(3)