断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

カテゴリ:valentine戦車( 9 )

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昨日はホワイトデー。バレンタインのお返し、ちゃんとしましたか? 
思い出すのは作りかけて中断しているバレンタイン歩兵戦車。タミヤから発売されたMk.Ⅱ/ⅣとAFVクラブのMk.Ⅳの2台の制作記(Ex.バレンタイン沼)も遠い日となりつつありますが、忘れてはないですよ。またそのうち再開します。

で、今日はもう1台隠し持っているMiniArtのMk.Ⅵ初期型の簡単なキットレビューをやります。
TFマンリーコさんのブログで、AFVクラブのMk.Ⅱを改造してカナディアン・バレンタインMk.Ⅵを制作する話(https://blogs.yahoo.co.jp/maefuna/16184316.html)を受けての便乗企画ですね、早い話。

バレンタイン戦車のシリーズの中でもMk.Ⅵ、Mk.Ⅶはカナダで生産され、主にレンドリースでソ連に送られた車両です。外観はイギリスで生産されたMk.1〜Mk.Ⅱ/Ⅳに準じた内容で、Mk.Ⅶになると砲塔や車体に鋳造部品が多用されるなど本国仕様とは異なる仕様になったりして、模型制作的には面白いところ。この辺りの違いは以前の記事:バレンタイン沼リスト化してるのでそちらを参照。
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Mk.Ⅵ初期型は仕様的にはほぼほぼMk.1と同じで、はっきり言えばあえてキット化する意味があるのか、カナダ人以外に買う人がいるのかと思ってしまいますが、まあここに買っている人がいるので、それなりには需要があるのかも知れませんね..
MiniArtのキット。やはりMk.1との違いを出すために、レンドリースでソ連に送られた車両のマーキングをデカールで用意。ソ連戦車兵のフィギュアセットがついてます。Mk.1には入ってなかった仕様として、メッシュのマフラーガードがエッチングパーツで用意されてます。
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転輪は初期のリブ型のプレスパターンのものが入ってます。リブ型パターンの誘導輪と筒型ヘッドライトのランナーも追加されてます。砲塔の左側面にはD型のハッチがあるものとないものの両方が入ってます。Mk.Ⅵ初期型はD型ハッチのない仕様。

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MiniArtのバレンタイン戦車シリーズはプロポーションに難があるらしくPMMSのレビューでも問題になってました。
同じレビューで転輪もAFVクラブのものと大きさが違うとか指摘があったので比較してみました。タミヤとだいたい一緒か。
バレンタイン戦車の転輪はゴム部分の断面形状の丸みが特徴的ですが、タミヤのキットは一番新しいキットなのにその特徴は完全に無視。MiniArtの転輪はちゃんと丸みが表現されてます。ややオーバーな感じもするけど雰囲気は悪くない。
プレスパターンはカナダのボーデン博物館に残る実車の写真をみると、キットのリブはエッジの丸みが不足気味か。

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車体はMiniArtもスライド金型を使って箱型の一体整形。裏面のモールドは各社まちまち。MiniArtのものはドライバーズシート付近の車体下部にハッチらしきもの。工場で撮影された写真がこの記事に掲載されているので、それを見るとMk.ⅥはMiniArtのキットのようにハッチがあるのが正解。

同じ記事、その写真の下に掲載されてる工場風景を描いた絵は、カナディアン・バレンタインの塗装色が何色で塗られていたかという問題を解く貴重な資料。絵なので正確さには欠けるとはいえ、オーカーの入ったグリーン。いわゆるカーキグリーンno.3という色でしょうか。カーキグリーンno.3は茶色なのか緑なのかよくわからない色ですが、少なくともSCC2 ブラウンではないですね。ソ連に送られたマチルダとかバレンタインなどイギリスとカナダから送られた車両の色は緑だったのか茶色だったのか、ミシリンでもいろいろと議論がありましたが。

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サスペンションのコイルスプリングは、AFVクラブのキットはスライド金型を使って本当に可動するバネを再現した驚異的なモールドでしたが、MiniArtはそこまではやってません。それでもシャープなモールドでこれで十分。このスプリングは実車の写真を見ると丸ではなく角形断面のロッドが巻いてある形状ですが、MiniArtのはそれをしっかり表現してます。それに対してAFVクラブのものは丸型断面のロッド。現存車両ではアバディーンの実車(Mk.Ⅱ)も角形断面のロッドなので、AFVクラブのような仕様が果たしてあったのか。これはもう少しリサーチする必要がありそう。

とりあえず今日はここまで。気が向いたら砲塔も少しレビューするかも。
そもそも、MiniArtのMk.Ⅵ初期型のキットは転輪や角形ヘッドライトなどタミヤのキットとのコンバート用に買ったのですが、せっかくならパーツ取り用だけでなく、残り部品で何かしてみたいところだけどまだ妙案はなし。

by hn-nh3 | 2018-03-15 20:59 | valentine戦車 | Comments(4)
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バレンタイン戦車の製作もいよいよ佳境..  今回は砲身です。
搭載するのは2ポンド砲。イギリスは砲弾の重さで表記するんですね。口径でいうと40mm。

砲身が取り付く防盾には、機銃口周囲の張り出しが有るか無いかの2タイプがあり、タミヤのはそもそもの高さが不足しているのでは、とかば◎さんも指摘、このMk.Ⅶの製作でもAFVクラブのを参考に防盾の形を修正したのが前回までのあらすじ。

カナディアンバージョンのMk.Ⅶの砲身は、タミヤのキットに入っているような段付きの砲身ではなく、テーパー付きの初期型砲身を使用していたようです。先端に向かって細くなるだけでなく砲口部分がラッパ上に広がるというちょっと変わった形で、PassionModels から出ているマチルダ用のアフターパーツが流用できそうです。


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その際に、防盾の高さを1.5ミリほど延長した結果、砲口の先端がどの位置になるか、つまり延長分だけ先端も伸ばす必要があるのか、あるいは長さは変わらないのかが、よくわからなかったこともあり、まずは段付き砲身の場合にどうなるかを検証してみました。比較のため、AFVクラブのものと、この間買ったマチルダさんにも急遽参加してもらいます。
砲身の付け根部分についているリコイルシリンダーの調整用ボルトは、2ポンド砲のコンポーネントに変更がない限りどの車両でもその位置は共通、と推測ができるので、ボルト位置を基準に砲身の長さを比較してみました。

結果、どれもボルトから砲口先端までの長さは同じ。タミヤのキットは防盾の高さを延長した分だけ、砲身の見えがかりが短くなる、というのが正解でしょうか。砲身途中の段の位置は、タミヤのバレンタインとマチルダはほぼ同じ位置、AFVクラブのものだけ違う位置になっています。
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横に写真を置いてみると、修正後のタミヤの砲身は写真の砲身のプロポーションとほぼ一致していることがわかります。AFVクラブのものだけが段の位置が違っているようです。(そういうタイプがあった可能性もあるが、それは未検証)
Mk.Ⅱ/Ⅳに搭載されている同軸機銃(BESA)の先端は、2ポンド砲身の段の位置より少しだけ下がった位置にあることが写真でわかります。AFVクラブのものはこの関係もずいぶんと異なる結果になっています。

Mk.Ⅶの場合、2ポンド砲はテーパー付き砲身のタイプ、同軸機銃はブローニング1919に換装されているので、試しにセットしてみました。機銃の長さは写真を見ながらの目分量。
カナディアン・バレンタインに限らず、機銃口が張り出しているタイプの防盾には、照準口の前に丸いフタのようなものがついているので、これもエポキシパテで表現。何かの機能があるとも思えないので鋳造用の湯口の跡かもしれません。

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できました。こんな感じ。来週はいよいよMk.Ⅶの最大の特徴である一体鋳造型砲塔の加工が始まります...

と、今回の製作はここまでにしておきますが、
上掲の防盾の加工前と加工後のラインの比較図を作っていて、何故か思い出したのが下の図版。
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図版出典:産業技術研究所 火山研究解説集:有珠火山>噴火の概要

1943年9月から1945年2月にかけて昭和新山が生まれる過程を記録したもので、「ミマツダイヤグラム」と呼ばれる有名な図です。有珠山の火山活動で麓の麦畑が隆起して山になっていく姿を地元の郵便局長だった三松正夫氏が定点観測で記録していました。(詳しい記事はこちら
戦時中でも、こんなものをひとり作っていた人がいたんですね。本当にいい仕事。


by hn-nh3 | 2017-05-13 04:03 | valentine戦車 | Comments(6)
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カナディアン・バレンタイン Mk.Ⅶ 製作編、防盾の回。鋳造一体型の砲塔の製作の前に内装式の防盾を修正します。

当時の写真で確認する限り、Mk.Ⅶの大半は機銃口部分のエラが張ったタイプ。カナディアン・バレンタインに関しては、タミヤのキットのような機銃口部分が窪んだ形状のものは、プロトタイプのMk.ⅥおよびMk.Ⅶの初期50台(リベット車体に鋳造一体型砲塔)までは使用していることが確認できるものの、100台以降で採用されたと言われている鋳造車体タイプでは砲塔防盾はエラ張りタイプが一般的。砲身は当初仕様の初期型のテーパータイプが生産後期になっても使われていたと推測できます。

本国イギリスで生産されたMk.Ⅱ/Ⅳはどうか言うと、初期のタイプでエラ無し防盾テーパー付き砲身が見られるものの、エラ付き防盾になってからはタミヤのキットと同じ、段付きの砲身に変わっています。
タミヤのキットのようなエラ無し段付き砲身の組み合わせは一般的なものではなかったように思います。(ちなみにタミヤが参考にしたボービントンの車両はエラ無し防盾テーパー付き砲身)

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前回、タミヤのキットの防盾は高さが少し不足している鼻先をかさ上げして、エラの張った形状をプラ板積層で作りました。今回はそれを原型にエポキシパテを盛って全体の形状を整えました。防盾の付け根の部分も削り込んで砲耳のリムより少し面落ちした位置に修正してあります。各部分の高さや位置関係は、AFVクラブのものを参考にしました。

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この部分、タミヤとAFVクラブのものではずいぶん高さ関係が異なっています。(写真は前回の加工中のもの)

どちらが寸法的に正しい、とかはここで言うつもりはありませんが、AFVクラブの基本形の方が周りとの位置関係でツジツマがあってるように思いました。

タミヤのものは、実物では楕円形断面になっている鼻先が、ただの円形断面で再現されていたりと、寸法以外にもいろいろと「情報圧縮」があります。

しかし、模型を写真にとって拡大してみるとあちこちアラが目立ちますね。ヘッドルーペで見ながら丁寧に加工したつもりでも、カメラ目線で確認すると肉眼では気がつかなかったものが見えてきます。

防盾もまだ、もうちょっと調整が必要です。



by hn-nh3 | 2017-05-08 21:43 | valentine戦車 | Comments(0)
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バレンタイン戦車の標準的な3ピースボルト接合型の砲塔側面装甲板は、鋳造ではなく圧延鋼板を曲げ加工したものを使ってるのではないか? というのが前回までのあらすじ。

今回、タミヤのキットを改造して作ろうとしているMk.Ⅶは、カナダで製造するにあたり砲塔を鋳造一体で型に基本設計を変えています。標準60mmの圧延鋼板もしくは65mmの鋳造とするように仕様で定められていたので、おそらくはこの一体鋳造タイプの砲塔では、側面は60mmから65mmに増厚して生産されたと推測されます。

だとすると、鋳造一体型では側面・後部ともに65mmでシームレスに連続するラインになり、標準の砲塔では側面と後部パーツの装甲厚の違いから生じていた微妙な段差が解消します。実際には鋳造の施工誤差を考慮して65~70mmの範囲で作っていたのでしょうから、模型的には1/35換算で0.14~0.28mm程度、エポキシパテを薄塗りして鋳造表現するとよさそうです。側面上部にうっすらと見られるパーティングライン、抜きテーパーと思われる微妙な傾斜、エッジが僅かに丸くなっているところなど、その増厚分のなかで表現できます。
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写真出典:2点ともにWikimedia Commonsより

さて、ここで少し悩んでいるのが、前部のパーツとの連続ラインをどう作るのか。
標準のボルト接合砲塔では、耐弾性を考慮してか、側面装甲板に被せるように前面パーツを嵌めこむ構成になっていたのに対し、Mk.Ⅶの砲塔は鋳造でなめらかに一体成形されています。そのラインはどのようになっているのか? 要は側面が前部に繋がるところで外側に膨らむのか、前方のパーツが絞り込まれるのか、あるいはその両方か.. この問題を図面化してみます。
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とりあえず「前部パーツ絞りこみ説」で考えてみました。些細な話ではあるけど、以前の記事で触れた「装甲増厚で操縦手バイザーが閉まらなくなる問題」のように基本設計を変えるとあちこちの部品に影響がでます。

どの戦車でもそうですが、型式を重ねるにつれて各部のパーツもアップデートされていくけど、基本形がそれほど変わらないのは、そんな問題が絡んでいるんじゃないかと思います。
基本設計を変えるってのは大変なんです。ちょっとしたことでもあちこちに波及して細部に渡る調整が必要になります。前のバージョンの部品が殆ど使えなくなったり。
型式の切り替えでもパーツの残庫がでないような発注管理システムなんて当時はなかったでしょうし、モデルチェンジの不具合で納車が遅れるとかは避けたいですから。
Ⅲ号戦車なんか途中で足回りをガラッと変えてますが、よっぽど使えなかったのか。

話を戻しますが、Mk.Ⅶの鋳造一体型砲塔の基本形状の変更点、ちょっとまだ読み解けてません。現存する車体は1台だけ。当時の写真などで細部のわかる写真も少なく、もう少しリサーチを重ねたいところ。求む情報!
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いずれにせよ内装式の防盾の加工は先に済ませる必要はあるので、そちらの作業をちょこちょこ進めます。実車写真でもわかるように、Mk.Ⅶの初期型を除き、防盾は機銃口周りが張り出したタイプなので、プラ板を積層してピースを作成。キットの曲面にあわせて削ったり嵌め合いを確かめたりで、歯の治療の仮歯を思い出します。大きさも似てるし。

照準口、タミヤのは少し凹みすぎなので、側面のリブから少し飛び出る高さになるように一度削ぎ落として、下にプラ板を足して再び接着。砲身周りの鼻先も少し高さが不足しているのと、形状が楕円形になっていないので、これもプラ板積層の削り出しでつくって接着。(写真:左がタミヤ、右がAFVクラブ)

とりあえず、基本形をプラ板で加工して、後はエポキシパテを盛ってラインをなめらかに成形する予定。

by hn-nh3 | 2017-05-05 20:41 | valentine戦車 | Comments(4)
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タミヤの新作、バレンタイン戦車 Mk.ⅣをMk.Ⅶに改造してみよう!その3

カナダ製Mk.Ⅶの砲塔は、 Mk.Ⅳのような3ピースボルト接合ではなく、一体で鋳造された形状になってます。工作も継ぎ目やリベットを消していく作業がメインになるので、基本的には簡単。ただ砲身基部の防盾が内装式になっているので、先に防盾の工作をしてからでないと改造作業に入れないので、砲塔はしばし待機中。
(写真の砲塔:緑がAFVクラブ、黄色がタミヤ)
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そんな訳で、改修点のチェックを兼ねてタミヤとAFVクラブのキットを比較観察。
サイズ、各部のバランスは両者ほぼ一緒。パーツ分割とかディテール表現に考え方の違いが見えます。(まだ接着してないので、歪みがあったり嵌合精度が悪いとかではないので誤解のなく)

タミヤのキットは部品数を少なくするべくパーツ分割が工夫されていて、天板前面の換気用スリットなんか砲塔前部のパーツをはめるだけで自然に出来上がるようになってます。こういうところは流石と思います。しかし細部の表現となると、AFVクラブは天板の六角ボルト、リベット、マイナスネジと、実車の要素をできるだけ表現しようと努めているのに対して、タミヤは六角ボルトであるはずのモールドはただの丸。ひょっとするとひょっとすると六角ボルトになってるのかもしれませんが、肉眼で見る限りは判別できません。

防盾の張り出しの長さが両社でずいぶんと違うので、ここは要検証。
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写真出典:Wikimedia commonsより

そんなことも含めて実車の写真をあれこれ観察。側面の湾曲した装甲板に前部の砲耳部分のパーツをかぶせてボルトで止める構造になってます。前部のパーツは天板とツライチで嵌ってるのに対して、側面と後部は側面装甲板に天板を載せるような納まり。おそらくは部品の加工が悪くても誤差がそこで吸収できるようにとの設計なのかもしれません。
天板がはみ出る厚みはボルト高さ程度。その部分、タミヤのキットは、パーツが合わないんじゃなくて実物でも段差があるんだよ、ということが伝わるように、もうちょっと誇張して表現したほうがいいかも。

側面の装甲板と後部のちょっと面白い形をした鋳造部品との継ぎ目には微妙な段差があります。これは車両によって差があって、ほぼツライチな車体もあればはっきりとした段差になってるものもあります。タミヤのキットは段差がはっきりタイプ。AFVクラブは割とそろってるタイプ。
最初は鋳造したときの鋳型の型ずれ?とも思ったのですが、調べてみると側面と後部は別パーツになっていて内側からボルトで組み合わせる構成になっているようです。
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この曖昧な段差ができる理由として、「装甲側面板は実は鋳造部品ではなく圧延鋼板を曲げたものでは」ということに気がついたのは前回の記事で書きましたが、側面装甲板の表面はずいぶんとガサガサで、一見すると鋳造っぽいのも事実。タミヤとAFVクラブのキットにもそれぞれガサガサの肌合いが表現されています。確かに車体前面装甲板などの同じ厚さ(60mm)の圧延装甲板と比べてもまるで表情が違います。

じゃあやっぱり砲塔側面部品も鋳造なのかというと、鋳造にしては不思議な荒れ方で前後の鋳造パーツとも違う独特な質感になってます。
そのあたりがよくわかる写真をいくつか。→1.2.3.

砲塔前部と後部の部品の表面は、不規則なアバタ等いわゆる見慣れた鋳造肌なのに対して、側面の湾曲した装甲板は、どちらかというと規則的なさざ波のような模様。これはやっぱり鋳型に溶けた鉄を流し込んだときに生じた表情ではなく、何か機械的な加工をしている最中についた傷なんじゃないかと。

板金プレスとかには疎いので確かなことは言えないのですが、厚みに対して過大な曲げ加工を行うと、表面にシワを生じて破断するなどの「曲げ割れ」という現象があるそうです。そこまででないにしても、60mmという厚い装甲板をぐいっと曲げる加工を行ったときに鉄の表面に変化が生じた、と考えるのは不自然ではない気がします。

バレンタイン戦車の側面装甲板が圧延鋼板でできているというような直接的な言及はオスプレイ本の本文にはなく、確かな資料での確認は未だできていないのですが、状況証拠的には「鋳造ではない」と思われます。少なくとも鋳造一体型のMk.Ⅶ以外の3ピースボルト接合タイプの砲塔を模型で作る場合は側面をいわゆる鋳造肌にはしないほうが良さそう。


by hn-nh3 | 2017-05-03 05:37 | valentine戦車 | Comments(4)
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1. 車体前部鋳造パーツへの改造(後編)
バレンタイン戦車 Mk.Ⅶ 製作その2。前回に続いてこのタイプの最大の特徴である車体の鋳造パーツの表現です。
Mk.Ⅱ/Ⅳでは圧延鋼板をリベット接合していた車体前部が鋳造一体型に変わったため、操縦席前面の装甲の位置で側面の装甲板にジョイントが設けられています。このディテールはフェンダーや履帯に遮られてなかなか見えないのですが、工場で製作中の写真などで確認することができます。

模型としては、継目となるラインをスジ彫りして、リベットをチマチマ植えて、車体前部の鋳造装甲と後部の圧延装甲板のテクスチャーの違いを表現してみました。鋳造の表現は、ラッカーパテを塗って硬い筆でポンポン叩いてテクスチャーをつけるのが一般的ですが、それはやりません。もっさりした感じになるし、シンナー臭いし。
使うのは瞬間接着剤。表面に塗って爪楊枝の先でぐりぐりと表面を擦ってやると、表面がガサガサに固まって鋳造肌のような感じになります。

圧延装甲板は流し込み接着剤を塗って、硬いブラシで叩いたりして鋼板の圧延時の傷やヘコミを表現してやります。まあ、本当のことを言えば、パーツを抑える指の下に接着剤がまわってしまって指紋の跡が残ってしまったのをペーパーかけて均しただけなんですが...

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車体前部上面と操縦席前面も同じように瞬間接着剤+楊枝グリグリで鋳造肌を表現。
Mk.Ⅶでは操縦席の窓の周りがリブ状に盛り上がった形状になっているので、プラペーパーを貼って表現。クラッペを受ける軸の部品も形が単純になっています。装甲バイザーは回転軸の上面にドリルで穴を開けてプラ棒を埋め込みました。

この装甲バイザー。前線で待機あるいは放棄された車両の写真を見ると、だいたい開けっ放しになってるようです。窓にはちゃんと防弾ガラスもあるとはいえ、弾が飛んできたら怖いから閉めたくなるような気もするけど、ペリスコープだけでは操縦しにくいのかしら。

模型の装甲バイザーも開けたり閉めたり動くようにしてあるのでけど、実は閉まりません。窓周りの縁の張り出しが邪魔して閉まらないのです。回転軸をずらずか、バイザーの干渉する部分を削ったりする必要あり。
実際、どうしてたんでしょう。当時の工場長に聞いてみたいところ。

2. 装甲板の厚み
この鋳造パーツの前面部分がひょっとすると増厚されているんじゃないか?と前回の記事で書きましたが、気になって少し調べてみました。オスプレイ本の記述でこんなの見つけました。

装甲板についてのリストの中に、" Specification,14 April 1939 / 60mm basis (60mm rolled or 65mm cast "
という表記がありました。つまり、装甲板は60mmを基準として、圧延鋼板の場合は60mmを使用、鋳造の場合は65mmとする、というような仕様が定められていたことが伺えます。
同じ表の中に、砲塔の防盾部分は" 65mm " となってます。防盾は鋳造パーツですから、この仕様基準に倣ったものと言えます。とすると、圧延鋼板では60mmで作られていた前面装甲板を鋳造パーツで製造する場合には65mmにする必要があるということになります。、Mk.Ⅶの欄に装甲厚が変更になった表記はありませんが、オタワに残る実車の牽引フック脇の段差や、この仕様基準から考える限りは、実際には増厚されていると考えるのが自然です。

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図版はWikimedia commonsから。

鋳造装甲の厚みの話。本題はMk.Ⅶの前面装甲板のことではありません。これは模型的にはどうでもいいんです。
やっぱり気になってたのは砲塔です。上記の図版を見ると、砲塔前面の防盾パーツは65mm、側面の円形の装甲板は60mm、後部の張出部分も65mmとなっています。オスプレイ本でも65/60/65mmとなっています。

これでわかりました。砲塔の前面と後ろのパーツは鋳造で作られたものですが、側面の円形の装甲板は圧延鋼板で作られている、ということです。(タミヤのキットには同じような鋳造表現が施されてはいますが..)

by hn-nh3 | 2017-04-29 20:26 | valentine戦車 | Comments(4)
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この間発売されたタミヤのバレンタイン戦車。いよいよ製作開始。ただし、同じレンドリースバージョンでも英国製Mk.Ⅳではなく、カナダ製Mk.Ⅶに改造します。

(勢いあまって買ってしまったAFVクラブのバレンタインMk.Ⅳは現地改造の30mm増加装甲で製作予定)

Mk.ⅣとMk.Ⅶ、ぱっと見で違いはあまりわかりません。よく見ると鋳造部分のパーツが増えてたり細部の仕様が違ってたりする程度。実際はMk.ⅦなのにMk.Ⅳというキャプションがついてる写真も多いです。

先ずは改造箇所とかディテールアップのやることリストをつくります。
製作に間があいたり、他のものに手をつけたりする間によく忘れてしまうので。


Mk.Ⅶへの変更箇所

・鋳造一体型砲塔

・砲塔防盾は機銃口周りが盛り上がったタイプ

・2ポンド砲身は初期型のテーパー付き

・同軸機銃はブローニングM1919

・車体前部鋳造(操縦手前面装甲板の位置で車体にリベット接合)

・操縦手バイザー周りのディテール変更

・初期型の放射状リブの転輪

・誘導輪基部は補強リブ付のタイプ

・右フェンダー上の雑具箱はMk1同様の短いタイプ(放射上リブ付)

・ヘッドランプは筒型形状のものを使用?


さらに改造してMk.Ⅶaにする場合のMk.Ⅶとの違い

・履帯にスパイクのついた新型履帯を使用

・ライトガード(形状未確認)

・脱着式増設燃料タンク(使用例未確認)

・誘導輪は中期型(リブなしのフラットのもの)?

・このタイプでも初期型転輪使用の可能性が高い


タミヤキットで未再現、要修正の箇所

・防盾下の砲塔アゴ部分に省略されたボルトの再現

・砲塔の擲弾発射機構の省略されたボルトの再現

・同上、えぐれ部分の形状修正

・省略されたライトコードとか照明基部のディテールアップ

・サスペンション基部の省略されたボルトを再現するかどうか..

・フェンダーの穴から突き出す誘導輪位置調整レバー

・誘導輪基部の回転用の工具差し込み穴

・履帯ガイドホーンの穴


1. 車体前部鋳造パーツへの改造(前編)

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カナダ製バレンタインMk.Ⅶの最大の特徴は、車体前部がリベット構造ではなく鋳造一体型のパーツになっていること。工場で取られた当時の写真を見ると、正面と側面のエッジ、操縦席前面装甲板の入隅が鋳造特有の丸みを帯びた形態になっているのがわかります。先ずは、この形態を再現するべく、タミヤのキットからリベットを潔く削ぎ落とします。せっかくのディテールを消していくのはちょっと抵抗感あったけど、そこは心を鬼にして作業続行。ごめんねタミヤさん。

はい、もう引き返せません。前進あるのみ。

リベット構造では段差がついてる継ぎ目部分に同色の伸ばしランナーを貼って、流し込み接着剤で溶かして溶着。模型上もシームレスな構造にして削り込みます。同色だと、作業の痕跡が見えにくくてブログ写真的には見栄えが悪いのだけど、作業中に形を把握しやすいので、いつもそうしてます。
上面装甲板に一体でモールドされていたヘッドライトの基部は邪魔なのでひとまず削ぎ落として、操縦手バイザー前のスプラッシュガードは実車ではMk.ⅣのようなL型の形状ではなく、直線上の突起が浮き彫りにされているだけなので、それも削ります。

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大まかに形ができたら、瞬間接着剤をペタペタ塗って細かな穴埋め。多面体の各面にも塗り込んで微妙な起伏を表現。圧延鋼板を溶接したのではなく鋳造部品だとわかるように、直線も定規でひいたようなブレのない線ではなく「ゆるやかな直線」になるように。鋳造肌を表現する前にやっておきます。

実車の写真を見ると、前面装甲板の両サイドの牽引フック取り付け部分が凹んでます。現存するMk.Ⅶaの写真 を見ても同じようになってて、この鋳造パーツに共通する形状のように思えます。

推測ですが、鋳造パーツに変更するにあたり前面装甲板を増厚している可能性はあります。鋳造装甲は圧延装甲板に比べると強度が落ちるので、前面の厚みを増やしたいけど、牽引フックのパーツは誘導輪基部との関係で位置は変えられないので、その部分の厚みはそのままで。。というような。


模型としては戦うべき敵はいないので、そんなこと気にしなくてもいいのかもしれないけど、せっかくなので、瞬間接着剤(シアノン+シッカロール)を盛って、厚みと段差を表現。穴埋めとかちょっとした盛り上げには、最近はラッカーパテは殆ど使わないで、もっぱら瞬間接着剤。すぐ乾くし塗装時にヒケの心配しなくていいし。

(つづく)


by hn-nh3 | 2017-04-26 20:13 | valentine戦車 | Comments(6)

バレンタイン沼

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海を超えて静岡から届いた新型砲塔を検分するロシア兵

思わぬところからレンドリースバレンタイン、Mk.ⅣとMk.Ⅶを2台同時製作することになったものの、手持ちの資料ではわからないことだらけ。Google先生に聞いてもわからないことは、かば◎さんに教えてもらって、なんとかそれぞれのタイプの特徴がわかってきました。とりあえずリストにまとめたのでアップしておきます。(4/22:増補改定)

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これ、試験に出ます、覚えておきましょう。

間違ってたり、こんな情報もあるよ〜という人いたら、ぜひ教えてください。
ネット上に転がってる写真を見ていくと、レンドリースバレンタインにはカナダ製のMkⅦと思われる写真が意外なほど多く残ってることに気がつきます。生産台数で見てもMk.Ⅳは524両、Mk.Ⅶは1390両、その大半がロシアに送られたと考えれば、数量的にもそれを裏付けるものがあります。

もっとも、部品の生産がゆるやかに切り替わったり、あるいは工場の違いだったり、型式の区分は曖昧です。その他にも修理などで違うタイプの部品をつけたりすることもある(Ex.クビンカの車両は中期型と後期型の転輪を混ぜ履きしている)と思われるので、実態はさらに複雑。

Mk.Ⅳの増加装甲付きタイプを調べていたら、こんな写真を見つけました。
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車体と操縦席前部に増加装甲のついたMk.Ⅳ 。砲塔のリングガードもついてます。少なくとも手前の2台は増加装甲付きとわかるので、この小隊は全て同じ仕様だと想像できます。増加装甲タイプは探すと、この他にも写真が見つかります。レンドリースでソ連に送られた車両のうち、どのくらいの数がこのタイプに改造されたのか、興味がわきます。

でね、この写真の砲塔をよく見てください。タミヤでも表現している主砲マウントが別部品でボルト接合されたMk.Ⅳのものではなくて、マウントも一体鋳造で接合ボルトのない、カナダ製Mk.Ⅶのタイプです。
でも、車体前部はMk.Ⅶに特徴的なヌルっとした鋳造一体型でなく、リベット接合のMk.Ⅳのもののように見えます。

まさか、ⅣとⅦを戦場でPPAPしたキメラ車体。ということではないとも思うので、カナダ製Mk.ⅥとⅦの間に過渡的なこういうタイプがあったのか.... 調べれば調べるほどわからないことが増えていきます。


by hn-nh3 | 2017-04-21 12:54 | valentine戦車 | Comments(3)
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夏の始まる頃に学校のプール掃除で捕まえたヤゴ2匹。..じゃなくて、
タミヤのバレンタイン戦車Mk.Ⅱ/ⅣとAFVクラブのMk.Ⅳそろい踏み。

なんで同じ戦車を2台も作ってるかというと、タミヤの最新作についてのかば◎さんのレビュー(かばぶ:バレンタインの日)に転輪のゴム部分の丸みが表現されていないとの指摘があるのをを読んで、さてどうしたものかと気になってAFVクラブのバレンタイン戦車Mk.Ⅳ(レンドリース/ソ連仕様)も買ってきてしまった次第。
...ずっと買おうかどうしようか迷っていたキットではあったので、背中を押してもらった感じですね。
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黄色がタミヤ、緑がAFVクラブ。ともに中期型の転輪が用意されています。
タミヤのを大小それぞれ2個づつ並べたのはオリジナル(左)と修正試作品(右)

比較のためにも寸法を測ってみました。

転輪大(T:外径17.0・リム径14.8/A:17.3・14.7)

転輪小(T:外径13.5・リム径11.4/A:13.8・11.3)

転輪厚(T:ゴム部3.8・リム部4.0/A:4.1・4.0)

※Tはタミヤ、AはAFVクラブ:計測は100円ショップノギス)


AFVクラブのものは接地面と側面にともにゆるやかな丸みが表現されているのに対して、タミヤのはカチッとした直線です。で、実車はというと。

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wikimedia commons からキャプチャーしたボービントンに現存するMk.Ⅱです。

似てるのはAFVクラブのほうですね。模型としては両社の0.3ミリの差が表現の違い、ということでしょうか。


タミヤの転輪もなんとか実車の雰囲気を出せないかと修正方法を考える訳ですが、薄いプラ板を接地面とゴム側面に貼ってゴリゴリ削って丸みを出すのは、転輪の数を考えるとしんどいので、プラ板は貼らずに接地面から角にかけて丸みをつけて、リムとゴムの継ぎ目にナイフをあてて溝を切り込むように丸みを表現、リムも少し薄く、背を低く削ってみます。

完璧ではないけどこれなら、1個5〜10分くらいで加工できるのでなんとかなりそう。


さてさて、 一挙に我が家にやってきたタミヤとAFVクラブのこの2台... 同じものを作るのもなんなので、タミヤのはカナダ製のバレンタインMk.Ⅶに改造してみたいと思います。

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実車がオタワに残っています。写真集はココ→ Dish models

特徴的なのは、車体前部が鋳造で一体成形のパーツになっていること、砲塔もMk.Ⅱ/Ⅳでは別部品の砲座も一体で鋳造された砲塔。それほど改造はそれほど難しくなさそうです。


戦時中の写真も探してみると.... ありますね。

Mk.Ⅳと思っていた写真の中にもちょこちょこMkⅦの写真が混じってます。

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当時の写真では細部が詳しくわかる写真がなかなかないので、なんとも言えないんですが、オタワの現存車両をつらつらと眺めていたら、いやなことに気がついてしましました。

転輪がタミヤのに入っている中期型のタイプじゃなくて、
どうやら初期型の転輪を履いているようなのです。。

by hn-nh3 | 2017-04-19 20:23 | valentine戦車 | Comments(14)