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断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

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タルチンスキ本

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先月ポーランドの本屋さんから購入した”Pojazdy Powstancow Warszawskich-1944”
ワルシャワ蜂起の研究家:ヤン・タルチンスキさんの著書「ワルシャワ武装勢力の車両1944」2009年刊

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17×24cm 厚みは1.7cm 168ページ ハードカバー。A4より一回り小さなサイズとはいえ、ずっしりとした本で測ったら540g。これで送料含めて2,800円ならお買い得か。

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しかし、テキストは完全にポーランド語。全く読めません。。その意味では「可食部」は写真に限られるので、コストパフォーマンスはぼちぼち。せめて写真のキャプションに英語併記してほしかったよー。

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目次。2ページに分かれていて、写真はその前半部分。1944年のワルシャワ蜂起でポーランド国内軍が鹵獲使用した車両が、車両ごとに解説されてます。記述は詳細なのでポーランド語が読めるとこの本の価値がわかるのでしょうが。。

ちなみに、著書のヤン・タルチンスキさんは1994年に”Pojazdy Armii Krajowej W Powstaniu Warszawskim” という本を出してます。その本は未見ですが、ネットで部分を確認する限りは構成は同じ。
今回購入の2009年版の本は、1994年版の増補改訂版になるものと思われ、どうやら新編集の本ではなさそう。

それはともかく、蜂起軍が使用した車両が1冊にまとめられていることは重要。写真の大半は現在ではネット上でも収集できるものですが、情報としてまとまっているという価値は本ならではのもの。

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鹵獲パンター。2両をドイツ軍から鹵獲して使用したようですが、テキストがポーランド語なのが歯痒いところ。写真は半光沢のアート紙の印刷なので再現度は悪くないです。

もっとも最近の出版物で見るような「オリジナルネガからの新規スキャン」「デジタルエンハンスをかけてディテールを強調」というのと見比べると、ちょっと物足りなさを感じる写真も。
出版が2009年ですから、この10年の隔たりはそんなところに。

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鹵獲されてバリケードに組み込まれたヘッツァー駆逐戦車「Chwat(フファット)号」のページ。
国内軍兵士に火炎瓶攻撃を受けて内部で誘爆が起きたのか、側面装甲にはヒビが入って、天板はボルトが飛んでめくれ上がってしまったのがこの写真でも確認できます(黄色い矢印)

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後で回収されて修理された時の写真。装甲板のヒビは溶接して補修してあるように見えます。上面装甲板はめくれあがったままですね。

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トラック(シボレー157 or155)のシャーシに自作の装甲ボディを乗せた国内軍オリジナル装甲車「Kubuś(クブシュ)」
ドイツ軍が拠点としていたワルシャワ大学に攻撃を仕掛ける、という華々しい「戦果」もあってか、ミラージュホビーからキットもでている有名な車両ですが、退却時にバリケードを通過できなくて放棄されてしまったのが残念。

ヘッツァーChwat号も回収修理して自走できるようになったものの、結局は拠点のバリケードから外に出られなくて戦果もなく役目は終わってたりと、なんだかあまり有効に使われなかったみたいですね。

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シボレー157に装甲板を張った簡易装甲車。アンバランスなデザイン。”AK”の派手なロゴもあって模型映えしそうなアイテム。ミラージュホビーで是非ともキット化してほしいところですが、たぶん買わないだろうなー(笑)

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DKW F5? のバンタイプの車両に派手はロゴ。救急車として使用されていたらしく後ろ姿の写真には赤十字マークの旗とキューピットのハートマークが描いてあるのが確認できて、これも模型で再現したら楽しそう。
というか、この類の非正規車両の面白さは、結局はマーキング次第なんですよね。それがなければただの普通の車両。

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トラックの類もあれやこれや。ちょっと前に vol de nuit さんのところの記事(Archive: Vehicles in Warsaw, 1944)かば◎さんらとわいわいと車両特定をやったので、だいぶ詳しくなりました。上の写真のトラックはタトラT27。下のトラックはボルグヴァルトL1400。

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バイクの類も。兵士が乗っているのはVictoria V98か。
個人的には横に写ってるケーブルドラムがとても気になります。前にChwat号のバリケードに使われているケーブルドラムのメーカーロゴを特定した記事も書きましたが、これはロゴの入ってないタイプでなんだか新鮮。

本のレビューは結局、この本の本当の価値であるテキストではなく掲載写真の話になってしまいました。
言葉が解るか解らないかといったら、出来たほうが100倍楽しいと思うけど、この歳になってポーランド語の勉強をしようという気にはやっぱりならないし。

記事の写真は全て”Pojazdy Powstancow Warszawskich-1944”から。
高い本ではないので興味がある人は是非、買いましょう。積んでおくだけのプラモよりは役に立ちます。

03/24追記;
セータ☆さんに携帯のGoogle翻訳にカメラ撮影>OCR読み取り>翻訳の機能があるよと教えてもらって、早速、読んでみました。鹵獲使用した車両の運用履歴など詳細に語られてます。その情報の多くはネットでも拾えたりしますが、というかこのタルチンスキ本が、そうしたネット情報のソースになってたのだと再認識。

by hn-nh3 | 2019-03-23 18:44 | 資料 | Comments(11)
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季節はあっという間に過ぎていきます。時間に追われて、本も読まずに積んだままの日々。
そうそう、モデルグラフィックスの2019年4月号も買ってます。映画「この世界の片隅に」の映像世界を模型で読み解く好企画。もうちょっと早くレビューするつもりだったんだけど。。

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「この世界の片隅に」は映画を見て、原作となる、こうの史代さんの漫画も買ってしまったクチですが、本屋で表紙をめくるまでは正直期待してなかったですね。今年公開が予定されている新作の映像追加版:「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の宣伝を兼ねたタイアップ記事、ぐらいに考えてましたが、いやはや、パラパラっとページをめくった次の瞬間にはレジに向かってましたね。巻頭から後ろのページまでみっしりと特集記事。

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映画のシーンを再現した見事な作例もさることながら、片淵監督特別監修ということだけあって、映像の中でのメカの描かれ方なども詳細に語っていて、模型作りのヒントになります。

ブログ中の記事の紹介写真は絞りを浅くして撮ってます。ピンボケしちゃったんじゃないよ。ちゃんと買って読もうね。

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主人公のすずさんが嫁いだ北條家の段々畑をリアルに再現した記事なんか好きです。制作を担当しているのは、AFVモデラーにとってはカリスマ的存在の吉岡和哉氏。装甲車が登場するでもなく野菜が植わってるだけの段々畑ですよ。なんという才能の無駄遣い。(笑)

映画の考証は徹底してます。片渕監督は呉市で栽培されていた野菜も調べていたとのこと。記事の写真は野菜の栽培カレンダー。これに応えて吉岡氏もさつま芋、かぼちゃ、葉物の野菜の葉の写真からデーターを作って、レーザーカットで切り抜いた自作野菜パーツで見事に再現。制作記事の解説も簡潔にして的確な文体。これぞプロの仕事。

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個人的にはこういうページが好き。映画の片隅に写っているメカを同定してます。

終戦直後の呉に着底する艦船群を米軍が撮影したカラーフィルムは有名ですが、映画の風景は当時の記録に基づいて精密に再現されていることがわかります。


https://www.youtube.com/watch?v=RnFHIbhng84

映画「この世界の片隅に」を見てる時は気がつかなかったけど、劇中、こんなに映ってたんだっていうぐらい、いくつもの艦船、飛行機がチラッと登場してたんですね。艦船や飛行機で自分の模型ジャンルとしては守備範囲外のものばかりですが、前に記事(一円陣地)でちょっと書いた八九式12.7cm連装高角砲なんかも映ってます。その他にも広島市内を走っていた市電やトラックの類も型番まできちんと考証されているのが解説されていて楽しい。

しかし、こうした軍艦や戦闘機が映画の中の風景に描かれているのに映画の物語ではほとんど説明されないんですよ。
それは映画の文体でもあるけど、主人公のすずさんが知りえないことは(同じ世界に存在していたとしても)説明されることがない、ということなのか。 確かに現実ってそうだよね。

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そんな話はB29と戦艦大和の描かれ方にも現れてます。B29は10,000mもの高高度を飛ぶから飛行機雲が出るんだけど、空の飛行機雲を見て、「知識として知っている」ぼくらはそれがB29だと気がつくけど、初めて空に見るすずさんにはB29は見えない。

戦艦大和は前に呉軍港に入港しているのを「あれが大和だ」と旦那の周作さんから教えてもらったから大和だと知っている。しかし、そのB29が向かった先の海に浮かぶ大和らしき姿が映るシーンには何の説明もない。ぼくらはそれを見て沖縄に出撃する戦艦大和だと想像する訳だけど、それは呉で暮らしている主人公のすずさんが知らない世界で起こっていること。山の向こうの広島に落ちた原爆も同じで、原爆症のことも描かれても語られない。

ちょっと模型誌レビューから脱線してしまったけど、映画評では物語の背景世界についての話が少なかっただけに、片渕監督自身が解き明かす戦艦大和の最後のシーンのことなど、腑に落ちた感じ。

by hn-nh3 | 2019-03-17 16:27 | 資料 | Comments(0)