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断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

下仙川 高射砲陣地

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最近は便利ですね。Google Mapが目的地まで何処をどう歩けばいいか教えてくれます。この間、調布の実篤公園の近くに所用で行った時、地図検索のiPhoneの画面に「旧陸軍下仙川高射砲陣地」という違和感のある表示。....ナニコレ?
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そして、その場所。なんてことない風景です。Y字道の辻にはベニカナメモチの生垣と町内会の看板。高射砲陣地は何処?

すかさずGoogle先生に聞くと、その町内会の看板の土台のコンクリートの塊が高射砲の土台の残骸とのこと。
風化してかなり年季の入ったコンクリートの土台。確かに町内会看板の為につくられた形ではなく、元は大きな円形の構造物の一部のようにも見えます。看板の足元はモルタルで補修してあるので、看板の土台として作られたものではなく、先にあった「コンクリートの塊」に穴を開けて看板を立てて、モルタルを充填したものだと推測されます。

しかし、これが元々は高射砲を据えた土台だったなんて、言われないと気づかない。
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高射砲陣地はこの近辺、調布飛行場の防衛用にあちこちにあったらしく、ここの他にもいくつか高射砲の台座のコンクリートが残ってるようです。 

→廃墟探索地図>調布高射砲陣地
→みたか遺跡展示室>大沢の遺跡10
そして、この下仙川高射砲陣地には町内会の看板の土台になってる高射砲台座の残骸と、付近の住宅の庭に弾薬保管庫?のような構造物が残存している模様。→仙川ポータル>下仙川 高射砲陣地跡

このロケーション。かつてここに高射砲が据えられていて、その台座を避けるように戦後、道ができて家が立ち並んだようにも見えますが、調べてみるとどうもそうでもなさそう。Gooの地図で昭和22年、38年の航空写真と重ねられるので変遷をちょっと作ってみました。
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上から昭和22年、昭和38年、そして現在の航空写真と地図。
昭和22年の地図を見ると、6基の陣地が扇型に並んでいるのがわかります。まだ、撤去された高射砲以外はほぼ残存していたらしく、この写真では判別が難しいものの、国土地理院の航空写真サービスでこの場所の他の航空写真(戦後米軍が撮影したもの)を探すと、それぞれの陣地の中心にコンクリート台座らしきものと、残存する弾薬庫らしき構造物も確認できます。図で星をつけたところが町内会の看板位置、小さな四角が弾薬庫と思われる遺構の位置。

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これは昭和23年の写真。国土地理院の航空写真サービスから。
当時の地形がよく確認できます。台座の周囲に土塁か弾薬庫など構造物で囲まれた6基の高射砲陣地。中央の台形の区画は観測機器を据えた場所、右側の直線上の部分には指揮所があったと思われます。戦後しばらくはこの状態ですが、その後、宅地開発が進んで、昭和31年の写真では上の2基を残して消失、そして前掲の昭和38年には残りもほぼ消失します。

地図を重ねて見ると、町内会の看板は一番上の陣地とも少し位置がずれていて、かつての高射砲のコンクリート台座がそのまま残っている訳ではなく、台座の残骸をそこに移動させたもののようです。おそらくは宅地開発の際に破壊されて小さくなったコンクリートの残骸を、Y字道の角に置いて、車止めに利用したんじゃないかと思います。そして町内会の看板の土台に転用されて..

こことは別な事例ですが、高射砲台座の残存例と構造がよくわかる記事。
これも開発で当初の場所から移設保存されてます。


個人的には、高射砲陣地がどのようなものであったかというよりも、遺構としてその後どのようになったかに興味があって、動かしがたい障害物として、避けるように道が敷かるなど都市計画に影響を与えたとか、簡単に撤去もできず、他の用途に変えて現在も使われているとか、そんなことを想像していたのですが、ブルドーザーなど重機のなかった中世の頃ならいざ知らず、戦後の高度成長にとっては何の障害物でもなかったようです。

高射砲の台座が転用された事例として面白いのは、逗子の披露山公園でしょうか。
巨大なコンクリートの台座がそのままに、花壇や展望台の基礎、猿の檻の中で猿山の裾野に化けています。

→魅了されたもの>披露山公園(小坪高角砲台

そんな訳で下仙川の高射砲陣地は、宅地開発の波にのまれて遺構としては殆どその姿を留めていません。
しかし、台座の一部が町内会の看板の土台に転用されて「地域の役に立っている」と考えれば、僅かに残るコンクリートの残骸が今もその役目を果たしていると言えるかもしれません。
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<追記>
国土地理院:地図・航空写真閲覧サービス

このページで各地の航空写真:戦前に陸軍が撮影したもの、戦後米軍が撮影したもの、地図作成用に撮影された最近のものまで、いろいろと見ることができます。
戦後の開発で見えなくなってしまった元地形を確認したりするのにも便利。


by hn-nh3 | 2017-06-08 05:00 | 構造物 | Comments(5)