断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )
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いつのまにか蝉の声を聴く季節。新刊の模型の手帖はKV戦車特集ですね。

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TAKOMからはKV戦車の親玉、SKMも発売になるし、タミヤさんからはレンドリースM3スチュアートもリリースされたし、今年の夏はロシアが熱い!

サッカーのワールドカップ、ロシア大会もなんだかんだ盛り上がりましたね。会場が置かれたロシア各地の都市にはヴォルゴグラード(旧スターリングラード)とかロストフ、サンクトペテルブルグ(旧レニングラード)など、どこかで聞いたような名前がいくつもあったりして。こんなところで歴史と現在が繋がってリアルを感じます。会場の一つ、バルト海に面する都市のカリーニングラードは、その昔はケーニヒスベルグと呼ばれた旧ドイツ領、東プロイセンだったんですね。歴史は複雑。

模型に話題を戻します。M3スチュアートは買ったけど、SMKは様子見。その前にケーブルドラムのキットとか難民セット買わないとだし、それ以上にその前に作りかけのKV−1戦車を何とかしないといけないし。という訳で久しぶりにKV−1。前回の記事は5月でしたね...

KV−1の制作再始動。冒頭の雑誌はフェイクです。モチベーションアップのために作ってみました。
パーツの検証記事のカバーヴィジュアルとして、「暮らしの手帖」を何となくイメージしたものの、どこか「美術手帖」っぽい感じにもなってしまって、グラフィックデザインなかなか難し。もう少しこだわってみたかったところではあるけど、そんなことしてないで早く模型作れよって声も聞こえるし。

KV-1の製作が中断したにはちょっと理由があって、それはエンジングリル。
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トランペッターのキットはエッチングパーツを使わずに全てプラで表現するという潔さ。グリルは両端がカマボコ型になった初期のタイプと片側がフラットに潰れた後期のものの2タイプの選択式。ディテールはしっかりしていて、中間部の枠がメッシュの外側にくるのと、枠をメッシュがまたぐ違いも丁寧に再現。欠点はメッシュがプラスチックのモールドである、ということぐらい。

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メッシュを表現するならやっぱりエッチング。試しにボイジャーモデルのものを購入。値段も手頃で「フェザータッチ」と銘打った繊細さをうたったシリーズに期待。透けぐあいとかが気になります。
しかし、問題はそれ以前の話。寸法が少し幅広でトランペッターのキットにはうまく納まらない。。

d0360340_23253331.jpgそれで結局アベール。繊細さと精密さは定評あるメーカー。問題はお値段か。。と思いきや、エンジングリルだけならそれほどでもなかったので買ってみました。

ついでにフェンダー上の増設タンクのパーツも買ってみました。タンクはドラゴンのT-34についてるパーツを流用できるかなと思ってましたが、固定用の金具を必要な数だけプラ板でスクラッチするのはちょっとしんどいかなと、ここはエッチングのキットに頼ってしまおう。

しかしこれが海外からの取り寄せになるとのことで、2〜3週間待ち。パーツが届くまで暫しクールダウン。そして..そのままいつものごとく月日が過ぎて3ヶ月。

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エンジンのグリルメッシュ。アベールのエッチングパーツの構成はこんな感じ。ボイジャーモデルでは省略されていた中間リブの内部構造もパーツ化。メッシュも両端カマボコ型(右上)と片側フラット型(左下)をきちんと再現。フラットになる部分の幅が平面の展開状態では少しすぼめられてるところとか重要。立体にしたときに幅がちゃんと平行になるようになってるんですね。ちなみにボイジャーモデルのものは未対応。

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アベール(左)とボイジャーモデル(右)の比較。片側をフラットにしようとするとボイジャーモデルのものは幅が平行にはならないのがわかりますね。ボイジャーモデルでは枠は外周しかなかったので内部をプラ板で追加工作。アベールのパーツは枠部分もすべてエッチング。縁を折り返してつくるような仕組みになっていてエッチングでは再現が苦手な「厚み」を再現できるようになってます。しかし折り返しの幅とか工作の限界を超えているのではと思わせる細さ。無理やり作ったらちょっと歪んでしまった。これを作るにはいい道具が欲しい。

しかし、枠の仕上がりの幅が全然違う。ボイジャーモデルのものが製作誤差で幅広になってしまった、ということではないのがわかります。

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アベールのエッチングパーツとトランペッターのプラパーツの比較。左が片側フラットのタイプ。右が両端かまぼこ型。仕上がり幅がトランペッターのキットと揃ってくるのが分かります。メッシュは2タイプ用意されてますが、枠は端部のリブの片側を切り飛ばしてフラットタイプに対応させる選択式なので、そのまま作るとどちらか1セットしか作れないことになります。

それで片側フラットの枠はプラ板で自作してみました。これを制作中のKV-1に使って、両端かまぼこ型のエッチング枠は「組立待機中」のKV-2に使うつもり。

しかしアベールのは、メッシュの周囲のリベットも作らないといけないんだね。気が遠くなる。
こうして考えると、トランペッターのオリジナルパーツは透過度以外は遜色のないディテールであったことを認識。塗装でそれらしく表現してやれば全然問題なし。

というのが3ヶ月かかって知りえた事実。

( 7/30訂正:文中のエッチングメーカーの名前が間違ってました。エデュアルドではなくアベールが正解...)

by hn-nh3 | 2018-07-30 06:14 | KV-1戦車 | Comments(12)

KVポケット (KV-1 vol.4)

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どれだけ写真を撮ったところで物の内側が映ることはない。空港の手荷物件でX線に通さない限りはスーツケースの中身も見えないのと同じで、人の内面だって何もわからない。だのにその人の顔の表情はいつも何かを映しているようで見る人の気持ちを惑わせる。

製作中のKV-1戦車はちょっとそんな迷宮に足を踏み入れてしまったようです。

d0360340_17585750.jpg右の写真の車両は強化型鋳造砲塔に42年型車体でエンジンアクセスハッチはフラットなタイプ。フェンダーには増設燃料タンクの固定金具がついてるのが確認できます。1941~42年型車体で見かけるエンジンデッキの点検ハッチをフラットなタイプに改造してみたのは前回までの話。 ...しかしこのフラットハッチ。生産簡易型というものではなく、通常のV-2Kディーゼルエンジンの供給不足を補うためにM-17Tガソリンエンジンを搭載した車両を特徴づけるハッチではないか、そんな解釈が近年の有力な説であることをセータ☆さんから教えてもらった。


d0360340_17512778.gif考えてみると、標準ハッチのドーム型の膨らみにはアフィルターが収まっていて、フラットハッチを使うためにはエアフィルターが他所に移動する必要がある訳です。しかし42年型車体のすべてがフラットハッチでもなく後継のKV-1Sではドーム型のハッチに戻っていることを考えれば、フラットハッチはエアフィルターの位置が違うエンジンが一時的に採用されたことによる限定仕様、と考えるのが自然かもしれない。40~41年の一時期、M-17Tガソリンエンジンを搭載した車両が生産されたという記録もこのフラットハッチの登場する時期とかぶってくる...


結局のところ、フラットハッチの内側がガソリンエンジンかディーゼルエンジンかは模型的にはどっちでもいいのです。中は空っぽ、プラスチックのハリボテですから。モーターライズでもないし。


ポケットの中にはエンジンがひとつ。ポンとたたけばエンジンは二つ。

しかし、見えることのないエンジンの問題から避けて通れない理由がひとつあって、それはフェンダー上の装備品の話。

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従来はフェンダーに筒型増設燃料タンクを搭載している車両がM-17ガソリンエンジン車とされていたようですが、近年はエンジンの種別に関わらずチェリャビンスク・キーロフ工場製車両に見られる装備、という説が濃厚。これもセータ☆さん情報。

確かに後継のKV-1Sで筒型燃料タンクが標準的な装備であることを考えれば、ガソリンエンジン車に限った装備ではないと考えるのが自然。もちろんガソリンエンジン車の場合、航続距離や補給の問題で増設燃料タンクがマストアイテムであった可能性はあるけど。

d0360340_18140426.jpg模型製作上の問題は、エンジンのハッチがフラットな車両にする場合、M-17Tガソリンエンジン車の可能性も考えて、増設燃料タンクを積んだ仕様を再現するのが妥当ではあるけど、右の写真の車両のようにタンクを積んだ形跡が見られない車両もあることをどう考えるのか ..未装備の訳は何か? あるいは取れてしまった理由は?..とか、悩みはつきない。

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試しにタンクを乗せてみました。キットには入ってない増設燃料タンクはドラゴンのT-34から流用が出来そう。ただしフェンダーへの取付ディテールを調べる必要あり。


d0360340_18380383.jpg増設タンク付き車両では工具箱は40年型から使われている大型のタイプを装備しているパターンが殆どで、これはKV-2のキットから流用できるものの、トラペのKV初期型のキットはフェンダー幅が間違っているらしく工具箱のパーツも奥行きが長くなってしまっているので、流用するには奥行きを切り詰める必要がある…. さてどうしよう。


フェンダー上の装備の問題は、最終的な塗装やマーキングをどうするかという話とも関わってくるので、問題先送りで未完成とならないようにするためには、どこかで腹を括って決める必要がありそう。

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とりあえず、エンジンデッキのメッシュを追加工作。キットにはエッチングパーツはなく、プラスチックの部品のみ。メッシュグリルのパーツは両サイドがかまぼこ型になったタイプと砲塔に近い側がフラットになったものの2パターンが選択可能。41年型車体では後者の片面フラットのパターンであることはボービントンやアバディーンの現存車両や事例写真で確認できます。

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Voyager Modelからエッチングのメッシュパーツが出てるので試しに使ってみます。メッシュは繊細で透過率も高くていい感じ。実車の写真を見ると、メッシュグリルの中間部にはリブがあってロッドで補強されている様子。リブも実際はもう少し複雑な形状と思われますが、メッシュ越しに見えるだけなのでプラ板で簡略的に再現。真鍮のパーツの枠内にプラ板で補強しながら組んでみました。

と、ここまではよかったのですが、車体に載せてみたら…..なんと両側のリベットの間隔より幅広で嵌らない…どゆこと?
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折り曲げたときの真鍮板の厚みが計算に入っていないのか、0.5~1mmほど幅が広すぎる。真鍮パーツなので削るのも簡単ではないから、本体のほうのリベットを移植して取り付けスペースを広げる? とも思ったけど、ミスのフォローでミスを重ねて取り返しのつかないことになりそうで思いとどまりました。

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はい、作り直します。実車の写真もガイドにしながら、メッシュグリルのリブのパーツ図面を修正して、プラ板で最初から作り直し。当然のことながらメッシュのパーツも幅広で使えないので、汎用品のメッシュから形を起こす必要あり。全て自作になるなら、アフターパーツなんかに頼らないで最初からスクラッチすればよかった。半月型のリブは多めに切り出して、精度がよくできたものを選んで使用。グリルの枠は0.5mmと0.3mmプラ板の細切りの積層。
JAPANミリテールでhiranumaさんが連載中のケッテンクラート超絶工作に比べたら、このくらいで悲鳴をあげてはいけないのだと思う。

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エンジングリルはとりあえずここまでリカバリー完了。後はメッシュを貼ってフレームを作らないと...

目の細かいメッシュは細い銅線を編み込んで.. なんてことはもちろんやりません。


※5/11誤記訂正:M-17ガソリンエンジンのM-17がF-17となっていたので訂正しました。


by hn-nh3 | 2018-05-09 19:08 | KV-1戦車 | Comments(16)

1941~1942 (KV-1 vol.3)

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KV-1戦車の鋳造砲塔タイプ。1941年型と1942年型の識別ポイントは大きくは3箇所。車体後部のオーバーハング部分の装甲板形状が丸いかフラットか。砲塔リング部分の幅が車体幅に納まっているかはみ出すか。砲塔後部の機銃マウント周りに補強リングの有無。
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この分類はざっくりとしたもので、実際には1941年型の車体に機銃マウント周りにリングのある装甲強化砲塔を搭載した車両や、その逆の組み合わせの車両もあったりと、なかなか悩ましい。考証の楽しいところではあるけど。
製作中のキットは車体後部が丸くて、砲塔後部の機銃周りのリングがない仕様で、1941年型と言われるタイプ。
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キットの砲塔はタンコグラッド本の図面を参照しているのか寸法的には図面と一致。しかしCADで設計したものにありがちな幾何学的で抑揚に欠ける印象。曲線部分と直線部分もぱっきりと分かれていて、鋳造というより圧延鋼板を組み合わせて作ったようにも見えてしまうので、そのあたりを調整すると雰囲気はよくなる。

まずはエポキシパテを盛ってバッスル下部の鋳造湯口を強調。1942年型の装甲強化タイプでは切断面がフラットで湯口の盛り上がりがはっきりと外観にも現れていますが、1941年型の初期標準型では湯口が砲塔の形にあわせて面取りするように2段の切断面になっていることが多くシルエット的には控えめ。

鋳造湯口はとりあえずパテ盛りした段階で、生産時期による湯口の溶断跡の違いの再現はこの後に行う予定。鋳造のパーティングラインもエポキシパテで再現。型ずれなど溶接跡とは違う表現をなるべく意識。
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キットのバッスル下面の砲塔リングに接する部分の形状が鋭角的でここも鋳造の雰囲気に欠けるところ。入隅の部分にエポキシパテを詰めてラインの切り替わりがゆったりするように成形。

砲塔前面と側面につながる部分のラインも修正。キットでは側面上部の角が面取りされた形状になっていて、これはボービントンの車両でも見られる納まりで正解でもあるのだけど、記録写真でよく見かけるのは全体に面がとれたバージョン。鋳造の木型が複数あったのか、装甲強化型への移行の過程で木型に変更が加えられたものなのかは、もう少し調べてみたいところ。

その他の修正点としては、主観的なものになってくるのだけど全体にパテを薄く盛って側面の曲線と直線部分のつながりをゆったりとした感じに調整。ほんの僅か、厚いところで0.5mmも盛ってはいないのですが、鋳造特有の柔らかいフォルムを表現すべく、直線の部分も定規で引いたような線ではなくフリーハンドで引いたような「ゆるやかな直線」になるように修正しました。砲塔天板の圧延鋼板となる部分はサンドペーパーで面出しするなど対比的な処理をしてます。

鋳造肌の表現はラッカーパテではなく、瞬間接着剤を楊枝でぐりぐりと塗り伸ばして肌荒れを表現。シアノンにベビーパウダーを混ぜてペースト状にしたものと原液に近いもの、粘度の違う瞬間接着剤のペーストを塗り重ねて鋳造肌の粒子感を調整。ニュアンスの調整がしやすいので最近はいつもこの方法。
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砲塔の車長ペリスコープに従来タイプの筒型ではなく、角形のタイプをつけてる車両も見かけます。レンドリースで送られたバレンタイン戦車のMk.4型ペリスコープをコピーしたもので、写真の車両は砲塔機銃周りに補強リングのある装甲強化型(別アングルの写真で確認)。1941年型の標準型の鋳造砲塔で搭載例があるのかは要確認。

(5/2訂正:※角形のペリスコープはMk.4のコピーではなく別種の間接視認装置とのこと。STZ製T-34にも同様の搭載例あり)

Mk.4型ペリスコープを搭載した車両の写真自体は見つかるのですが、1941年型に多い標準型の鋳造砲塔なのか、1942年型で見られる装甲強化型砲塔なのかを識別するのが以外と難しい。識別ポイントとなるのは砲塔リング周りの広がりや機銃マウント周りの補強リングですが、確認できるアングルではなかったり、砲塔後部が見えても機銃周りの補強リングがあるにはあってもはっきりとしない浅い感じのものもあったりして、なんとなく標準型から強化型への移行過程の中間型もあるような気もしないでもない。

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1941年型車体で気になる事例写真。出典はPeko本の「KV TANKS ON THE BATTLE FIELD」から。車体後部のハング部分が丸い1941年型の車体にスプリットタイプの履帯を装着。この車両、エンジンデッキのアクセスハッチが1941年型では一般的なドーム型の膨らみのあるタイプではなくフラットなタイプを使用しているようにも見えます。...誘爆でハッチが吹き飛んでしまっただけの可能性もありますが。

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同じくPeko本からの出典で、車体後部のハング部分が丸い車体で、エンジンアクセスハッチにフラットなタイプを使用しているのがよくわかる事例。ただしキャプションにはM17エンジンを搭載した車両からの改造車の可能性あり、との記述で事例としては少しややこしい。

d0360340_23161333.jpgこれもPeko本からの事例。1941年車体の車両でエンジンアクセスハッチはおそらくフラットなタイプ。

トランペッターのキットには1941年型、42年型ともにドーム型のハッチしか入ってないけど、1942年型への移行期の仕様として、このフラットなハッチは模型で再現してみたいポイント。

写真の車両、鋳造砲塔は初期の標準型で一般的な砲塔基部の膨らみがないタイプに見えるものの、機銃周りのリングの有無が確認できないので判断はつかず。

仮に砲塔も標準型から装甲強化型へ移行する中間型があるならそれも再現してみたいところで、生産時期によって変わってくる鋳造湯口の処理を保留にしている理由はそんなことだったりするのだけど、果たして中間型と言うようなタイプが実際にあったのかの確証はなし。

鋳造砲塔の初期の標準型と装甲強化型の違いは外観の印象以上に図面的な寸法の違いは大きく、冒頭のタンコグラ本の図面を信じるなら、装甲強化型では1/35換算で砲塔の幅が4ミリ、長さが3ミリ拡張されていることになる。室内側は寸法が変わると機器のレイアウトに影響がでるから単純に外側に増厚されたとするなら、側面で70ミリ、前後面でそれぞれ50ミリの増加と、にわかには信じがたい寸法。強化型では最大120ミリ厚の装甲になったとのことだが、鋳造砲塔の標準型の装甲厚がわかる資料がなく、砲塔サイズの変更部分が検証できていないものの、標準型と装甲強化型では基本設計自体も少し変わっているのだろうか。少なくとも機銃周りに補強リングを追加しました的な単純な変更ではないことは確か。

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d0360340_10212068.jpgエンジンのアクセスハッチをフラット型に改造してみます。ドーム型のハッチの中央部分を切り飛ばして0.5ミリのプラ板で置き換え。リングガードは積層したプラ板。リングガードの上面に見えるバーナーで鉄の厚板を溶断した切断痕はカッターで入れた筋目に接着剤を塗って溶かして表現。パネルへの溶接の再現は接着剤で溶かした伸ばしランナー。

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d0360340_10314439.jpgエンジンデッキ後部の丸型の点検ハッチは、1941年型では周囲とフラットに納まるタイプ。キットは42年型とパーツを共通にしたのか、一段盛り上がってハッチの縁が面取りされた形状なので要修正。キットの車体側のハッチの穴をリーマーで拡張してプラ板で裏打ちの後、ハッチを落とし込み。ハッチの縁には瞬着パテ(シアノン+ベビーパウダー)を盛って削って成形。地味に手間がかかる割には結果として見栄えのしない改造。

タミヤのキットだったらちゃんと再現されてる部分でそんなことする必要もないのに…と模型の神様が言うのが聞こえてきます。なんだろうこの報われない充実感。

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こんな写真もあるよと、追い討ちをかけるように神様が言います。鋳造砲塔で車体後部のハング部分が丸い1941年型の車両と思われますが、例の丸型ハッチが一段盛り上がっているようにも見えます。1942年型のハッチが既に使われ始めている事例なのかしら? ハッチをわざわざ修正する必要はなかったのか....(汗)

しかし、この丸型ハッチの変更は車体後部の形状変更によるエンジンデッキのパネル寸法の変更とセットな気もします。ひょっするとこの車両は1941年型以前のタイプで、皿形ハッチを装備した車両からの改造車という可能性も。たとえば、フェンダー上の予備燃料タンクの存在からの推理でM17エンジン搭載車とか。上掲のPeko本のエンジンデッキのフラットハッチがわかる写真の車両もキャプションでM17エンジン搭載車とする根拠はフェンダーに残る筒型燃料タンク取り付け基部が存在することとなっています。

予備タンクの有無とM17エンジン搭載の因果関係を示すソースが何にあるかを知る必要はありますが、1941〜42年型車体で筒型燃料タンクを積んだ車両はチラホラ見かけるので気になるところ。

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車体前面の増加装甲。車体への溶接痕を伸ばしランナーで追加。位置を修正したライトコードのスリットに配線用チューブの部品を取り付け。キットの部品を利用して、写真ではわからないけど端部に配線用の銅線を差し込める穴を開けてあります。

上方に延長された増加装甲の切り欠き部分からのぞくペリスコープカバーは先端が装甲板より少し前に飛び出ているように見えるので、一度接着してあったパーツをエナメルシンナーで剥がして位置を修正。このカバーの位置は車両によってばらつきがあるようなのでキットの位置そのままでも間違いではなさそう。

ボービントンやアバディーンに残る実車でも確認できる上方に延長された車体前面の増加装甲。これは第200工場で作られた車両に見られる特徴で、上部に伸びてないタイプはウラル戦車工場(UZTM)製の車両だとか。Peko本や複数の文献でその記述があります。

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チェリャビンスク・キーロフ工場(ChKZ)で撮影された写真に写っているのは車体後部のオーバーハング部分がフラットになった1942年型車体で車体前面の増加装甲は上部に延長されたタイプ。砲塔は鋳造砲塔(強化型?)と溶接砲塔の2タイプ。鋳造砲塔は上面装甲板が組み継ぎになっていることが確認できます。

エンジンアクセスハッチは、従来からのドーム型のふくらみのあるタイプを使っていたりして、これまた悩ましい。細部の仕様のバリエーションが生産時期によるものなのか組み立て工場の違いによるものなのか、もう少し整理する必要があるのかも...

(5/2追記:※フラットタイプのハッチはM-17T ガソリンエンジン搭載車用とするのが近年の有力な説のようです)


かば◎さんのブログでトランペッターの1942年型鋳造砲塔型の連載?が始まったので、KVに関する様々な謎が解き明かされることを期待。そちらも参照のこと


5/2 追記訂正:角形ペリスコープとフラットタイプのエンジンアクセスハッチについて、かば◎さんとセータ☆さんより情報をいただいたので記述を修正しました。

by hn-nh3 | 2018-04-28 11:54 | KV-1戦車 | Comments(9)

はじめてのKV-1

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KV-1 1942 (写真出典:Bundesarchive/wikimedia commons)

先日チラ見せしたトランペッターのKV−1。仮組みで箱に戻すつもりが、ちょっぴりやる気モードにシフト。キットの検証やらディテールの考証など、あれこれ調べているうちに気がついたら、いつのまにか接着剤とか使って組み立て始めている始末。

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KV-1戦車のキットといえばタミヤの往年の名作キットやトランペッターから各種バリエーションがリリースされてますが、自分で作るのは実は初めて。出戻り後もそれ以前の出奔前もなんとなく縁がなくて、今回再販されたトランペッターの「mod.1942 Heavy Cast Turret」が自分にとってはKV-1入門キット。

キットのタイトルは少し変ですね。車体後部のオーバーハング部分が丸型のタイプに、装甲強化前の標準型鋳造砲塔を組み合わせた1941年型と言われるタイプ。現存車両としては、アメリカのアバディーン、イギリスのボービントンに残っているのがこのタイプですね。砲塔後部機銃マウント周りに補強リブがなく、砲塔基部下端が側面の増加装甲外面の内側に納まっているのが初期の標準型鋳造砲塔の識別ポイント。

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タミヤのキット「KV-1 C型」もこのバージョン。これらの車両を取材したと思われます。エンジンのアクセスハッチはドーム状のふくらみのあるタイプ。

現存車両 Walkaround:

d0360340_09013096.jpgこれに対して装甲強化型砲塔 1942年型といわれるのはフィンランドのパロラに残るこの車両のバージョン。
砲塔機銃座の周りの補強リブ。鋳造の湯口の切断痕は大きめ。車体後部装甲板はフラット。エンジンのアクセスハッチはフラットで砲塔リングの保護ガードが溶接されてるタイプ。
(現存車両写真出典:wikimedia commons)

これらのバージョンを含めた各年式の違いをビジュアルでざっくりと紹介しているページはココ。

日本語のサイトでは伝説的なサイト:T-34 maniacs の姉妹板で KV maniacs というのがあったのだが、サーバーの関係で既に閲覧できなくなっているのが残念。
そんなことになる前にちゃんと勉強しておけばよかった。少年老い易く学成り難し..

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手持ちの資料としては、Tankograd のKV−1(LateVariants)/Soviet Special No.2003 が良本。1/35スケールの3面図。記録写真、博物館車両のwalkaroundなどなどコンパクトによくまとまってます。

d0360340_09581937.jpgその他には、Peko本の KV TANKS ON HTE BATTLEFIELD。グランドパワー2017.8月号別冊ソ連軍KV重戦車、などが手元に。
まあ、あまり大きな声ではいえないけど、Wydawnictwo MILITARIA のKV(KW)シリーズ:no.163、168、320 なんかはロシア語サイト経由で.....

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トラペのKVシリーズにはトラップがいくつかあるらしい。その1。第一上部転輪が後ろすぎる。3mmほど前に移動させる必要あり。写真は取付用の穴を開け直した修正後。6つ穴があるうちの2つしか使わないので、修正も2箇所だけ。露出する不要な穴は伸ばしランナー充填で塞ぎ。

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その2。駆動輪の歯の取り付けボルトの位置関係がずれているという罠。スプロケットの歯とボルトが一対一対応するのが正解。
キットのリベットを削ぎとって、下穴あけてMasterClubのレジンボルト(1mm)を植え直し。とりあえず1個のみ試作。
実車の写真を見ると、スプロケットの歯のリングとボルト部分のリングの段差がキットは少しオーバースケール。スプロケットの厚みを削って段差を低くするのがイメージ的にはよさそうだが履帯との嵌合を検証する必要があるので、ひとまず保留。

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その他、気になるところとしては、キットの全鋼製転輪(写真下)のリムが厚ぼったい。鋼製上部転輪も同様。誘導輪(写真上)はちゃんと薄いところは薄く表現されているので、プラスチックの成形厚などの技術的な問題ではなさそう。

車両によって違いがある部分としては、車体前面の操縦手バイザー周りの増加装甲板は、上端が車体天板よりも突き出した納まりが鋳造砲塔バージョンでは一般的か。タミヤのキットが参照したと思われるボービントンの車両は増加装甲上部の角が面取りされているちょっと珍しい仕様。

ちょっと悩ましい問題。エンジンデッキにある2つの丸型ハッチは年式によるバリエーションの変遷がある部分ですが、このキット(1941年モデル)では別キットの1942年モデルとパーツランナーを兼用したのか、エンジンデッキの丸型ハッチはデッキより1段盛り上がってハッチの縁にテーパーがついたタイプが入っています。1941年型車体ではエンジンデッキと同一面で納まり、縁にテーパーのないハッチが一般的と思われます。テーパー付きハッチの使用例があるのかは未確認。
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エンジンのアクセスハッチはドーム型のふくらみのあるタイプが入っています。これは上記の博物館車両でも確認できる仕様で正解なのだけど、時期によっては(1942年型車体で一般的な)フラットなタイプを1941年型車体でも使っている事例が確認できます。MilitariaのNo.320 KVシリーズ vol.3 P62 の記述によると、1941年8月よりフラットなタイプが使われたとあるので、生産途中で変更があったのか。確かにフラットタイプを装備した車両をPeko本でも確認できます。ただ1942年車体の溶接砲塔のバージョンでドーム型のふくらみのあるハッチを装備している事例も見たことがあるので、新部品の普及状況がどのようになっていたのかはもう少し事例を集める必要がありそう。

そもそもこのタイプのKVを作る理由になっている購入済みのMasterClubのKV用700mmスプリットタイプの履帯を使おうとすると、1941年車体のエンジンデッキのハッチはフラットなタイプにする必要があるかもしれない。

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キットに入っている鋳造砲塔は初期の標準型。後期の装甲強化型に比べて砲塔基部の膨らみがなく、バッスル下面の鋳造湯口は控えめ。ただキットのものは湯口が表現されてはいるものの控えめすぎるので、エポキシパテなどで少し強調したほうがいいかも。
砲塔の天板は装甲強化型の砲塔では組み継ぎになっているタイプと従来の付き合わせの2パターン。初期の標準型でも事例をあれこれ砲塔側面天端のラインを見てると組み継ぎタイプも存在してそうな予感。ただし写真の限られたアングルでは装甲強化型との識別が難しいこともあり、このあたりはもう少し検証が必要。

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ん? この写真の砲塔は天板が組み継ぎになっているタイプかな? 一見して標準砲塔にも見えたものの、砲塔下面のラインと側面の増加装甲との関係を見ると装甲強化型のようにも思える。砲塔側面の勾配が変わる部分が(マーキングで)わかりにくいので標準型なのか装甲強化型なのかは判別しにくい。砲塔の原型が複数あるのかディテールが少し異なるようにも見える。あるいは標準型/装甲強化型という分類以外にも細かなバリエーションが存在しているのか..

フェンダーステイの基部は、キットではあらかじめ車体にモールドされたボルトジョイント用のフランジを削り落として溶接接合のディテールにするように指示。1941〜42年型ではこの仕様が一般的かとも思うが、左の写真の事例のようにボルト止めのタイプもあった様子。ただしこの車両。操縦手ハッチが以前の皿形のタイプなので中古の車体と新型砲塔を2個イチにした車両かもしれない... フェンダーステイの基部の話。ミシリンのキットレビューでもフランジの有無の話があったように記憶 ...ということでモールドの削り落としはもう少し考えてから。

とりあえずここまでが製作前の予習の成果。

by hn-nh3 | 2018-04-19 20:01 | KV-1戦車 | Comments(2)

COLLECTION 2017

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あっという間に今年も残すところ1日。今年もいろいろ買いました。
残庫を考えればもう買ってはいけないと思いつつ、やっぱりなんだかんだ買ってしまいます


在庫管理もかねて今期収蔵品のリストを作ってみました。(クリックで画像拡大)
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衝動買いは極力控えてアイテムも選んだつもりがこの結果。購入費用11万なり。塗料と工具、プラ棒など汎用材、ジャンクパーツは省略。資料本も最近はあまり買わなくなったので、考えてみれば安上がりの趣味かもしれませんね。六本木のキャバクラで遊べば軽く一晩で使える金額だし。

それより問題なのはINPUTとOUTPUTの圧倒的非対称。今年完成したのは結局、SUMICON参加作品のGrille改造FLAKの一両とフィギュア2体)...
うーん。もっと作業スピード上げないと。




by hn-nh3 | 2017-12-30 06:57 | 模型 | Comments(4)

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大戦中のドイツ軍戦車のOVMは何色で塗られてたのか、という話の後編。
前回の記事では、大戦後半に車体基本色がダークイエローに変更になった以降のOVMを検証して、車体色にあわせてOVMもイエローベースの仕様になっていたことを確認。今回は、大戦前半のグレーベース車体の時の事例を含めて考えてみます。

上の写真は1939年、ポーランド戦にてワルシャワで勝利のパレードを行った時の写真。車体後部のマフラーは排気の熱でいい具合に錆色になってます。その上の牽引ワイヤーは、土埃で鉄色なのかグレー塗装なのかは判別不能。車体側面のエアインテイク上部にあるクリーニングロッドは木部はニス仕上げ。

d0360340_05025104.jpg1941年6月、ロシア。バルバロッサ作戦時の写真と思われます。グレーベースの車体はOVMの色の確認が難しく、鉄部を黒色で仕上げたいわゆる鉄色なのか、車体色にあわせてグレー塗装を行っているのかの判別がつかないのが実際です。この写真も土埃を巻き上げて、フェンダー上のジャッキや車体後部側面のバールが何色なのかを判断するのは不可能。

鉄色のままだったとしても車体色とのコントラストも少なく、土埃を被って車体と色が同化しやすいこともあり、実際現場でもカムフラージュ色ということではあまり問題にはならなかったと想像します。

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1941年、冬の東部戦線。Ⅳ号戦車F型の車体の埃が雪(雨)で流されて各部の色が明瞭になっています。正面の予備履帯も鉄錆色でドイツ戦車の模型の塗装見本、という感じ。車体前部のミッションアクセスパネルの上にシャベルが載ってます。木部はニス色、鉄部はグレーではなく黒色塗装が剥げて鉄の地肌が見えてきている質感が確認できます。

フェンダー上に装備するジャッキが失われてしまっているのは惜しいところ。ジャッキは車体にあわせてグレーで塗装されていたのか、黒色塗装など工具とあわせた塗装だったのか確認したかったのですが。
車体側面アンテナケースの下に予備履帯がフェンダーに3つ装着されてますが、他の履帯のようには錆びてないのは注目すべきところ。防錆処理が行われてますね。グレーで塗装されてた可能性もあります。
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渡河中の3号(H)潜水/指揮戦車。いい写真です。水に濡れて木部のニス色がくっきりと見えます。鉄部ははっきりしませんが、おそらく黒色塗装でしょう。フェンダー上に装着している予備転輪がレッドプライマー塗装のままになっているのも興味深いところ。

d0360340_05484001.jpgこの頃のグレーベース車体に積まれたOVMは概ね、こんな色調だったんじゃないかと推測します。
鉄部は黒色塗装で防錆処理。木部はニス色。写真のシャベルはオリジナルの状態かは不明ですが、使い込まれるうちに鉄部の地肌の金属色が見えてきたりして、いわゆる模型の鉄表現に近い感じになると思われます。

装備品の色に関してはこんなサイトも参考になります。>ドイツ軍軍装品の塗装色
そのサイトでワイヤーカッターも見れます。>車載用大型ワイヤーカッター
ワイヤーカッターに関しては鉄部は黒色塗装、ハンドルの部分は木ではなくてベークライト。模型では他の工具の木部の色とは違えて表現するといいと思います。

大戦前期のOVMの鉄部が車体と同じグレーで塗装されていた可能性は少なそうです。偽装効果を考えて車体色のグレーで塗るなら、木部も色をあわせてグレーで塗るはずですが、その事例を見かけません。
ただし、ジャッキは消火器同様、車体色で塗られていた可能性も高いと思います。明確に確認できる写真が手元にないので断言はできませんが。

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1942年のウクライナと思われます。この時期、イエローベースの塗装が開始されますが、OVMの塗装は従来のままだったようです。写真でははっきりとはわからないものの、木部と鉄色の違いが認識できます。

d0360340_06282264.jpgただし、ややこしいのはシャックルは既にイエローベースの塗装になっていた可能性はあります。右の写真は工場出荷時に撮影されたと思われるⅣ号F2(G)型ですが、イエローベースにうっすらとグリーンの迷彩。フェンダー上のOVMは車体色とは違う色調ですが、フェンダー前部のS字シャックルはノテックライトと同様、車体色でペイントされているのが確認できます。

その目で見ると、上のカラー写真のⅣ号戦車のシャックルもイエローベースのようにも思えてきます。

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ややこしいのはこの写真。新品のⅢ号突撃砲F型ですが、OVMの色はマチマチ。車体右側フェンダー上のハンマーは鉄部が黒。車体左側フェンダー手前の黄色の楕円で囲った部分にはエンジン始動用のハンドルがありますが、これは車体と同じダークイエロー。その後部のバール類とクリーニングロッドはまた違う色。クリーニングロッドは木のニス色として、バールの仕上げは黒でも車体色でもなく... これに関してはもう少しリサーチが必要。

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アフリカ戦線。チュニジアに送られた車両では、OVMは鉄色(黒)のままのものを使っているのを確認できます。アフリカ戦線では、装備品類もあっという間に砂塵にまみれてあっという間に白っぽくなってしまうから装備品にサンド色塗装を施す必要性は少なかったのかもしれません。砂地に岩や灌木類といった風景と既に同化しているようにも見えます。英軍車両の迷彩もサンド色と黒の組み合わせですし。

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同じくチュニジアで輸送船から陸揚げされるⅢ号N型の有名な写真をトリミングしたもの。サンド色に塗装された車体フェンダーの上には黒い色の工具類が搭載されているのが確認可能。

チュニジアに車両が搬入された42年末〜43年初頭は、既に東部戦線南部戦区ではイエローの塗装が始まっていたものの、ヨーロッパ戦線の基本色はグレーのままだったので、工場に納入されるOVM類も鉄部は黒色塗装の仕様が標準だったと思われます。


1943年の2月に車体の標準塗装色がダークイエローに制式に変更されますが、暫くはOVMの色はそのままだったように思われます。生産の始まったパンターD型の工場写真では木部ニス色と鉄部黒色の工具を搭載しているものが確認できます。OVMの工具の色にダークイエローが使われるようになるのはアフリカ戦以降、クルスクやイタリア線が始めることなのかと推測してます。

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1943年9月、イタリアはサレルノ付近。第16戦車師団のⅣ号戦車G/H型。ダークイエローの単色塗装の車体の泥除けフェンダーがはね上げられた上にスパナが置いてありますが、車体と同じダークイエローで塗装されているように見えます。フェンダーの上に載ってる工具は土埃を被ったり光の角度で、ただ白くなってたり、光ってたりして明るく見えてるだけの場合も多いのですが、スパナの縁のペンキの剥げ具合を見ると、塗装色はイエローで間違いないように思えます。

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1943年夏、東部戦線。ボルトオンの増加装甲、エアフィルター装備のⅣ号戦車G/H型車体はダークイエローベースにグリーンかブラウンの迷彩をスプレー塗装。フェンダー上のジャッキ、工具類は車体と同色のダークイエローと思われます。この車両は予備履帯も車体色でペイントされてます。

d0360340_08463845.jpgイエローベースの工具の現存品の写真を見つけました。写真出典はココ:Kubelwagen/Schwimmwagen shovel

工具類の鉄部塗装が黒でなくダークイエローであるかはモノクロ写真でも判別は比較的容易なのですが、木部の塗装が実際どうだったのかは正直よくわからない部分でした。グレーベースの車体では工具の木部は明色で認識できましたが、イエローベース車体の場合、木部がニス仕上げでも木の地色が明るい場合はカラー写真でもはっきりとは区別がつかない場合が多く、果たして木部がダークイレローに塗られていたのか、あるいは塗る必要があったのかはわからないというのが実感でした。

この写真を見ると、木部もイエローで塗装された事例があったことが確かめられますが、工具全体をダークイエロー一色で塗りつぶしても、塗料の下地への吸い込みの違いか、鉄部より少し暗く見えるのがわかります。素材の違いによる塗料の発色の違いがモノクロ写真では色の判別を難しくしている理由だったのがわかりました。

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写真出典:PANZERWRECKS 4 P28 1945.1 フランス,ドイツ国境付近のH39

とは言え、大戦後半のOVMの色にはいろいろなパターンがあったように思われます。車体色にあわせて全てダークイエローに塗りつぶしているパターンの他にも、イエロー塗装のジャッキやシャックル類と鉄色の工具が混在していたり、ジャッキ類も再び暗色のものが使われている事例など探すといろいろと見つかります。特に大戦末期、車体の迷彩にグリーンやブラウンの面積比率が増えてくるとOVMの塗装もそれにあわせた例も見つかります。

そのあたりの事例も追跡していくと面白いのですが、長くなるので今回はここまで。気が向いた頃に続編やります。

by hn-nh3 | 2017-09-29 09:31 | 資料 | Comments(2)
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戦車模型で車体に積んでいるシャベルやらハンマーの類、いわゆるOVM(車両装備品)を何色に塗るか、というのは実は悩ましい問題。
プラモの組み立て説明書には鉄部はメタリックグレイかガンメタル、木部はレッドブラウンに塗りましょう、なんて指示があったりするものの、それはリアルさの表現というより模型的な約束事という気もします。

実際、どうだったのか。ドイツ軍の場合、大戦初期はダークグレーの車体に鉄色と木色の組み合わせのOVMで間違ってません。しかし中期以降、車体の基本色がダークイエローに変更され、3色迷彩が一般的になる時期になると、車体色と同じ色で塗りつぶしている事例を見かけるようになります。冒頭の写真もその一例。

d0360340_18432312.jpg1944年4月。某総統閣下にヤクトティーガーがお披露目された有名な写真ですが、注目すべきは丸で囲った部分。車体側面に搭載しているシャベルの鉄部は車体色と同じダークイエローで塗装されています。予備の履帯も同様、ダークイエローが塗られているのがわかります。
モノクロだと、反射で光ってるのか、土埃を被って白くなっているのか判別がつかないことが多いのですが、カラー写真は、そのあたりの識別も容易。

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同様に新兵器、ヘッツアー・シュタールのカラー写真。「砲身がグレーの耐熱プライマーで塗られていた」という事例でよく使われる写真ですが、注目すべきは砲身の下、右フェンダーの上のジャッキ台。木の厚板にスチールの補強バンドが巻かれた標準装備品ですが、これも車体と同じダークイエローで塗りつぶされています。

よく見ると、転輪のゴム部分にもホイールを塗ったときのダークイエローが結構はみ出してますね。塗装なんて案外、こんなもんだったんですね。

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三色迷彩のsdkfz.251/D。東部戦線で撮られた動画からの1コマですが、フィルムの退色と解像度の荒さで正確な色調とは言えないものの、色のニュアンスはわかります。車体についているシャベル。これも車体色と同じ色調と思われます。少なくとも黒鉄色の光沢で明るく見えている色ではないのは確か。

車体と同じダークイエローでペイントして工具のシルエットを際立たせない、というのは迷彩効果として考えれば、当然の思考だと思います。大戦初期のグレーの車体色の時であれば、OVMの鉄部がいわゆる工具色である黒色塗装であっても、車体に溶け込んで目立たなかったものの、車体色がダークイエローに変更された以降は、車体から浮き上がらない色調が望まれたのではないかと推測します。

ただし、OVMの塗装色もダークイエローになるのがいつ頃から一般的になるのかは不明。43年の夏頃だと、ダークイエローの車体に従来タイプの色調の工具が載っているものも多く見られます。

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パンターA型。写真の日付が正確であるなら、1945年の4月21日。車体側面のOVMが3色迷彩でオーバーペイントされている事例。
もっとも、このパンター、A型が生産されていた時に一般的な迷彩はもう少しもやっとしたもので、この4はっきりとしたコントラストをつける迷彩のスタイルは44年の秋以降に流行するパターンと思われます。おそらくリペイントされたもので、その時に工具類も一緒に塗りつぶされたものと想像します。なので、これが一般的なものと言えるかは微妙。

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1945年3月、ドイツ国内、フランクフルト南方の街で撮られた写真。第643重戦車駆逐大隊のヤクトティーガー。これもフィルムが退色していて正確な色調とは言い難いものの車体に3色迷彩が施されていることは判別できます。よく見ると、パターンに斑点の混じった「光と影」迷彩であることがわかります。44年の9~10月頃に塗装されたものになるでしょうか。

d0360340_20040052.jpgその写真の部分拡大。車体側面に搭載された3本クリーニングロッドのパイプは、車体の迷彩と一緒にオーバーペイントされているようです。

丸で囲んだ部分を見ると、クリーニングロットを固定しているステーの金具の横の部分に「明るい影」があります。これはパイプの元々の色の木の色調、もしくはダークイエローに塗装されたものの上にグリーンとブラウンの迷彩色がスプレーされた時、ステーの金具の下に隠れて迷彩色がかからなかった部分が、使っているうちにずれて見えていると想像します。

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スクラップヤードのⅣ号駆逐戦車。1945年4月。出典はPANZERWRECKS 3 p94。
手前の車体の天板の上に転がっているシャベル。鉄部は明らかに明るい色が塗られていれ、使ってペンキが剥げたところに金属色が露出しています。シャベルの柄の部分が木肌の色なのか、同じくダークイエローで塗られているのかはモノクロ写真から判別することはできませんが。シャベルの手前に転がっている車体基銃の曲銃身の黒鉄色とは明確に違う明るい色調であるのは確か。

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ダークイエローの基本色で塗られたヘッツアー。写真出典はIN FOCUS 1 jagdpanzer38t p95。別写真からわかる車体番号より1944年7-8月生産車とのこと。撮影地はイタリアか旧ユーゴスラビア。車体後部側面にバールとジャッキを搭載。どちらも車体と同じダークイエローで塗りつぶされているのがわかります。バールなどの工具は必ずしもダークイエローで塗りつぶされている事例ばかりではないですが、ジャッキが車体と同じ色でペイントされているのはヘッツアーに限定されない一般的な仕様になってきています。

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1945年5月9日。チェコ国内から撤退するドイツ軍部隊のsdkfz.234/4。出典はPANZERWRECKS 4 p51。
44年秋以降に迷彩はすべて工場塗装となって輪郭のはっきりしたパターンになると、ちょっと困ったことになります。装備品はフェンダー中央部に消火器、クリーニングロッド、この写真からはわかりにくいものの、別写真でフェンダー前部にシャベルを積んでいますが、すべてダークイエローでペイント済み。黒い工具色で納品されたものを車体とあわせてペイントしたのではなくあらかじめダークイエローの塗装色で納品されたものをそのまま積んだと想像しますが、グリーンやブラウンのパターンの上にダークイエローの工具が搭載されると、却って目立ってしまってます。
こうなるとまたイエロー以外の工具のほうが迷彩効果が高く思われ、事実、そうした事例もまた見られるようになります。

今回はここまで、次回は大戦前期のグレー車体での事例やイエローベース車体での例外的な事例などなど。(続く)

by hn-nh3 | 2017-09-27 20:45 | 資料 | Comments(0)