断片的思考のメモ


by hn-nh ( or hn )

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ウェザエリングについてのメモ。
話をする前に... アイドラーホイールの位置を直しました。ロレーヌシュレッパーの履帯テンションはアイドラーホイールのクランクした軸を回転させて調整する仕組み。SUMICONの締め切りでバタバタと写真を撮った時は、軸の回転角度が低い位置になっていました。間違いではないけど記録写真で見かけるベストポジションではなかったので、今回再撮影するにあたり位置も修正。

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これが前の状態。ウェザリングもこれから少し修正しました。泥はねはウェザリングペーストを筆にまぶして爪楊枝で弾いて飛ばしたのですが、車輪のゴム周りなど泥の飛沫がただ飛び散っただけなのが少し不自然だったので、回転して少し擦れた感じに修正したつもり(あんまり変わってないけど..)。車体上部も跳ねすぎた泥を拭ったりして少し落ち着かせました(上の写真)

車体上部が迷彩塗装されてからあまり時間が経ってない状態を表現するために、フェーディングなど退色表現は行わず、砂埃が雨で流れたり泥が跳ねたりの「短期汚れ」だけのウェザリングとしました。
まず、車体上部にバフを軽く吹きかけて、溶剤で拭って雨で流れ落ちたような感じに。ウェザリングペーストは「マッドホワイト」と「マットブラウン」の混合。前日の雨でぬかるんだ道を走って、まだ泥が完全に乾ききってない状態のイメージ。
、記録写真でも見られるように、転輪のハブキャップ周りはグリースが滲んだ感じに。これはAKインタラクティブの「エンジンオイル」と油絵の具で表現。

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泥の色はノルマンディ地方の写真を見て... と言いたいところですが、その時は締め切り間際のバタバタでそれどころではなかったので、改めて観察。この車両が所属する第21戦車師団が展開していたカーン南郊をGoogleのストリートビューで走ってみました。ノルマンディの6月はこの写真のような景色。麦はまだ青いですね。これが8月にもなると麦は色づいて収穫の時期。

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8月のファーレーズ付近。この車両が包囲された時も風景はこんな色だったのか。いずれもストリートビューの画面キャプチャ。GoogleMapをあちこち走って見てみると、ノルマンディの土の色はロシアの土のような灰色ではなく、少し赤みがあるようです。

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運転席周り。ハッチ裏側はダークイエローにスプレー迷彩として外側のハードエッジの迷彩との違いを表現。内側なのでレインマークは控えて、迷彩のグリーンが引っ搔き傷で部分的に剥がれた程度に。ハッチの車内側には消火器がついていて、これが何色かという問題があるのですが、鹵獲改修車両であることから、改修の時にダークイエローで塗られてハッチと一緒に迷彩がかけられた表現としました。消火器がホルダーの金具から少しずれて、迷彩の下地のダークイエローがホルダー周りに見えてるのがわかるでしょうか。といってもマスキングが微妙にずれて幅が同じにならなかったのが...

トランスミッションは、フランス車両によく見られるグリーンではなく車内色の白で塗りつぶし。これも改修時に白一色で塗りつぶされた、という解釈です。アフリカ戦で英軍に捕獲された車両がそうなってました。
模型制作の都合で塗り分けがめんどくさかったからではないよ、という証拠として、部分的に白が剥げてオリジナルのグリーンがところどころに露出しているように見せてます。

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戦闘室内は、塗装されてから少し時間が経ってるダークイエローの質感を表現。AKインタラクティグのアースエフェクトを塗って拭き取ってます。バフ色の泥みたいな感じで、雨汚れにも退色表現にも使えるので便利です。
戦闘室の床は、昨日の雨がまだ乾ききってないような感じで部分的に濡れ色にしたのですが.. 写真に写ってないですね。(^^;)

墨入れは控えめに、チッピング、錆は最小限にして、この車両の「性格」を表現してます。軽装甲の戦闘未経験の車両ですから、百戦錬磨のマッチョなウェザリングは似合わないですし。

無線機は筐体をライトグレー。配線のコードやコネクターはセミグロスブラックで塗装。操作パネルのグレーはもう少し明るくしたほうがメリハリついたかも。

照準補正用の数値の書いてある「射標」の設置場所ははっきりしてません。ノルマンディで捕獲された車両の俯瞰写真では照準器の前方に設置してあるように見えるのでそれに倣ってますが、この車両に関しては(Panzerwrecks 8に掲載されている写真では)砲身上部のシールド内側についていた可能性もあり。

次はいよいよ完成報告。(って、とっくに完成してますが)

by hn-nh3 | 2018-12-16 19:31 | ロレーヌシュレッパー系列 | Comments(2)
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前回の記事で制作した無線機のラックを設置する。テキトー考証で既につけてしまっている無線機ラックを解体。
カッターの刃を慎重に差し込み少しひねってやると瞬間接着材で接合した部分がパリっと剥がれる。
既に配線をしてある無線機は、本当は配線を一度外して作業したほうが設置作業は楽になるという気がしたものの、せっかくつけた配線もバラすのは少し忍びなかったので、配線をつけたまま宙に浮かしてラックの取り替え作業。ずいぶんとアクロバティックな作業になってしまったもののなんとか完了。

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ついでにアンテナベースがつく雨避けの板も少し改修。実物は端部が補強をかねて折り返してあるようなので、プラ板の細切りを貼り足して整形。

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アンテナからの入力ケーブルのコネクターはアンテナ基部下、無線機横にレイアウト(たぶん)る
無線機の雨避け板の上にはヘッドホンの収容箱が置かれるのが標準レイアウトのようだけど、ノルマンディ戦での捕獲車両の写真では見当たらないので、それに倣って設置してません。
車内通話用のコネクターが設置されているかどうかは、参考にした記録写真では判然としないものの、運転手がヘッドホンをつけていると思われる写真もあるので、運転手席への通話用配線があったと想像できます。となると車内通話用のコネクターも設置されていた可能性が大。模型ではスピーカーの後ろにチラリと見えるのがそれ。

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無線機ラック改修完了。これで当たらずとも遠からず。資料写真と比較してみます。

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この記録写真の高解像度の写真があれば、各部のディテールが判明するものも多そうですが、現時点での考証はこのくらいが限界。

射表といわれる射撃補正用の数値が書いてある黒板は、アフリカ仕様では無線機横の戦闘室内部側面に設置されてましたが、この写真を見る限りはノルマンディ仕様の車両ではそこになく、どうやら前面装甲板左側についていると思われます。装甲板上端がうっすらと線がダブルになっていて、内側に薄い鉄板が貼ってあるように見えるのが、射表ではないかと推測。

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ちょっと気になること。米軍の調査報告書からの抜粋ですが、砲座の部分の車体には欠き込みがあるような図。そして補強用の三角のプレートの有無について。

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BrachModelのキットではこの切り欠きは表現されてません。その横の補強用の三角のプレートがキットでは用意されているのですが、どうもこれは記録写真の読み取り間違いと思われます。

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締め切りもあるので、もうそのままにして先に進めようと思ったけど、やっぱり気になる。サフェーサーを吹いた後で例の三角の補強板をレザーソーで切断撤去。砲架下にハの字型にシャーシ下部まで伸びるアングル材を写真の画角で錯覚して三角プレートと判断したのでしょうが、これは間違い。
プラストラクトの1.2mmアングル材を貼り付けてそれらしく再現。砲座の欠込みは最大仰角時の揺架の干渉を避けるための措置だと思われます。これを再現するには模型の構造に影響するので今回は見送り。(まあ次回はないと思うけど)

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最後の悪あがき。戦闘室外側左後部の足掛けステップは実物でも薄いプレートでできていて曲がってることが多いので、ピンセットで掴んで少しひねって、体重で少し変形したように。

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これで工作は終了。時間もないから塗装を始めます。サフェーサープライマーを全体に吹いて、2400番のペーパーで粒子の荒れたところを均して下地調整。工作のキズや接着跡などスケール感を損なうものがないかの最終チェック。

by hn-nh3 | 2018-11-11 18:28 | ロレーヌシュレッパー系列 | Comments(2)
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ロレーヌシュレッパー 15cm自走砲 制作メモ、その4。
オープントップの戦闘室内に装備された無線機を再現したことは前に記事に書いたものの、無線機ラックが考証的な正確さを欠くまま工作を進めたことが気になってました。

EduardからRPMのロレーヌシュレッパー用のエッチングパーツが出ているのですが、上の写真はそのパーツ図で、見ると黄色の丸で囲んだところが無線機ラックのパーツ。

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ラックは上部に屋根板がついて側板は4本のツノが下がるような独特の形状。しかし無線機のショックアブソーバーとフレームの関係が少し変だったり、車体への取り付け方が曖昧だったりして、これがオリジナルな装備を正確に再現したものかどうかがわかりませんでした。

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ノルマンディで鹵獲された車両を上から撮影した写真の無線機の部分。この写真から屋根板があることはわかっていたものの、これがEduardのパーツのように屋根と側板が一体化した形状のものなのかは、この写真だけでは判断しにくいところ。
仮にこの写真がEduardの考証のソースだとすると、側面についているアンテナ線のコネクターや車体についているアングル材のフレーム状の構造体もあってしかるべきだが、それは再現されてないので、Eduardがいったい何を参照してパーツ化しているのかが気になります。

d0360340_19043209.jpg思い浮かぶのはアバディーンで展示されていた現存車両。写真はWikimedia Commonsより。

アフリカ線で鹵獲されたもので保存状態も良好。しかし残念なことにオープントップであるはずの戦闘室上面が保存用に鉄板で塞がれてしまっていて、内部を見ることができない。だからこの車両の戦闘室内の写真資料を検索しても全然でてこないのです。

この車両は近年、別な場所に移されてレストア、屋内展示されていることもあり、ひょっとするとEduardはキット化するときにそこから何らかの資料を得て再現したのかとも想像してます。


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レストア後のこの車両の内部写真を探しても、なかなか見つからなかったのですが、ひょんなことからこのサイトにたどり着きました。

そこに内部写真がありました。ついに見つけました。写真の端に件の無線機ラックが写ってます。

その写真から無線機ラック部分を抽出してみると、確かにEduardのパーツに似た形状のものがそこにあります。屋根と一体化した側板のツノの先端にボルト。無線機のショックアブソーバーがそこに留められていたようにも思えます。配線も残っているので復元したものではなさそうです。

写真で見切れてしまって車体への取り付け部の詳細は不明であるものの、車体側に設置されたアングル材のフレームに固定されていると想像できます。このアングル材はノルマンディのロレーヌでも確認できるので、アフリカ、ノルマンディ戦で共通する仕様と考えてよさそう。配線が側板の向こうに回っているのはそこにアンテナコネクターがあると思われます。これもノルマンディのロレーヌの写真と符号します。

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イラクのロレーヌの写真。この車両は2005年、アメリカがイラクに侵攻したときにバスラ北部で発見されたもの。
そんなところにさまよっていた経緯も興味を惹かれますが、今回は無線機に注力。
後部からの写真に無線機ラックと思われるシルエットが確認できますが、よく見ると四角い箱ではなく、側板下部がツノのようになったもののようにも見えます。

Marder ll やMarder lll などドイツ軍自走砲車両に一般的な車体取付用ラックとは異なる独特の形状ですが、これがロレーヌ系改造車両の無線機ラックと考えてよいのかもしれません。

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決め手はこの写真。ノルマンディで鹵獲されたロレーヌシュレッパー改造砲兵観測車の内部写真からのピックアップですが、ラックの部分を注意してみると、例のツノ型に似た形状のアーム。中央部が欠込まれている形状は無線機フレームのY型の固定金具に干渉しないようにしたためか。

無線機のショックアブソーバーを固定する位置が少し違ったり、(内部であるので)天板はなく側板だけの構造だったりしますが、かなり共通点のある仕様。15cm自走砲と同じA.ベッカーの工場で生産された車両なので、同じ部材を使った可能性もありそう。

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よせばいいのに、試しに作ってみました。プラストラクトのアングル材で車体固定用ラック。0.3ミリプラ板でつの型の無線機ラックを作成。

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ツノの先端にショックアブソーバー固定用のボルト。これはドラゴンの何かのキットからボルトを流用。
プラ板細工は楽しいですね。ずっとレジンと瞬間接着剤と格闘していただけに、プラ材で流し込み接着剤でできる作業のなんと快適なことか。調子にのって作ってしまいました。

配線コネクターはK59のレジンパーツを利用。これは瞬間接着剤で固定。そして銅線で配線を再現して、一度は作ったラックをもうこの新しいラックに取り替える気まんまん。

...時間がないんだから、よせばいいのに。(つづく)

by hn-nh3 | 2018-11-04 21:50 | ロレーヌシュレッパー系列 | Comments(2)
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11月。SUMICON参加作品、レーヌシュレッパー 15cm自走砲の制作も佳境。
締め切りまで残り1月を切って、工作もなんとか.. 完了、か。

操縦席周りのパーツなど、塗装してからでないと接着できないパーツを残してほぼパーツも揃って、ここ数日は細部の瑣末なディテールの追加作業。

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ヘッドライトはフランス式。キットに付属のエッチングでライトの基部を組み立てる。ついでに銅線でライトのコードを追加。真横から見ない限りは殆ど見えないので模型的にはあってもなくても大して変わらないのだけど、やっぱりこういうところはなんとなく大事な気がする。
当然のことながらホーンにも配線があるはずだけど、配線をどこで車体に引き込んでいるのかわからなかったこともあって、ここはとりあえず省略。

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車体側面のハッチ。ここの取手はロッドの根元の部分を潰して本体にリベット止めとなっているのを再現。0.3mmの真鍮線をペンチで潰してヤスリで整形、リベットを植えた。小さいのを選んだつもりだったけど、こうやって拡大してみるとちょっと大きすぎたか...

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車体後部の手すりは車体装甲板に溶接留め。真鍮線で作った手すりの根元にエポキシパテを練りつけて溶接の肉盛りを表現。真鍮線を植えただけのほうが模型的にはシャープに見えるけど、装甲板の溶接痕などとトーンをそろえて質感がチグハグにならないように。

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乗降用のタラップは付属のエッチングを利用。車体には突きつけ接着するだけで強度的に不安だったので、接着部をカッターでけがいて溝を掘って僅かではあるけど埋め込みにして固定。
実際は根元を補強するディテールがあるんじゃないかと当時の写真を観察するも、どうも実車も突きつけで溶接しただけの納まり。だから簡単に破損してしまうのか、鹵獲された車両ではタラップが取れてしまっているケースが多い。

テールランプはドイツ式のものがついている。ディテールがしっかりしているタスカのアクセサリーパーツを利用。ちょっと変化をつけて、4穴の車間確認灯ではなくフラップをあげて下部のブレーキランプが見えるようにしてみた。

ソミュールに残るMarder l ではテールランプが上下逆さま。ブレーキランプが上側にくるようについていて、これがロレーヌシュレッパー系の設置方法なのかどうなのか。でも記録写真で同じMarder lでもブレーキランプが下側にくる標準的なパターンは確認できるので、とりあえず標準的な仕様にしています。

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テールランプの取り付け基部がドラゴンのキットの不要パーツから流用。前照灯と同じく、テールランプにも配線を再現してみました。やっぱりランプを灯すには電源が必要だしね。模型が電気仕掛けでピカーっと光る訳ではないけど。

by hn-nh3 | 2018-11-01 20:43 | ロレーヌシュレッパー系列 | Comments(4)
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ロレーヌシュレッパー 15cm自走砲 制作メモ、その2
プラストラクトのプラ棒(0.3mm×0.8mm)を使って小さなラックを作ってみた。この手の細工は真鍮など金属板を使うのが定番ですが、金属板を曲げてエッジを出すのは以外と難しいところもあるので、プラ板の積層で表現。微細工作の達人hiranumaさんに影響されたというのもあるかな。

曲げた部分プラの弾力で開いてしまうので、この後に瞬間接着剤を塗って開かないように固めました。で、何を作っているのかというと、この写真。

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ノルマンディ戦で鹵獲された車両(右2段)を見ると、戦闘室装甲板の右側面に何かのラックらしきもの。これは何かしらと考えていて思い当たったのが、左の写真。ロレーヌシュレッパ車台の対戦車自走砲Marder l の戦闘室内部にMP40をかけるためのラックがついてます。MG34をかけるためのものの可能性もありますが、自衛用武器をかけるための着脱式のラックと思われます。ラックは2段式のようにも見えますが、この写真だけでは詳細は不明。

ヴェスペやグリレなどの自走砲には戦闘室内にMP40用のL型ラックが標準装備になっていることもあり、このロレーヌシュレッパーにも何らかの小火器用ラックが装備されていたのでは?と考えられますが、それがコレ、なのかも。

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接着してみました。こんな感じかなという当たらずともとも遠からずのディテールです。MP40であればマガジンポーチ、MG34/42であればドラム弾倉のラックを車内のどこかに装備しているはずですが、資料がないので保留。

次は車体側面に点々とついている小さなフックを自作します。

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キットにはレジンで小さなフックが用意されています。なかなか繊細な出来ですが、それでも太さはオーバースケール。
Dragonのキットなどではエッチングパーツでこのフックが用意されてたりもしますが、エッチングの厚みのなさはそれはそれで悩ましく、今回は0.18ミリの銅線で自作してみました。1時間で20個。所要時間は1個あたり3分。

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制作過程。極小のパーツを効率よく量産できるように加工のジグを用意しました。カッターの替え刃を両面テープでプラ板に固定してスリットをつくり、そこに銅線を定規で押し込んでフック型にプレスするという仕組み。

前に自作したときは、真鍮板を加工して簡易ジグを作って0.2mmの真鍮線をプレスしたのですが、同じ素材だとダメですね。使っている間にジグの真鍮材が鈍ってきてしまってすぐにエッジがでなくなって結局はプレス後にピンセットで修正するというめんどくさいことになったので、今回はその反省を踏まえた材料の選択。プレス型は硬いカッターの刃、曲げるのは柔らかい銅線の組み合わせ。もうちょっと写真映えするかっこいいジグにしたかったんですけどね..

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フックの数はアフリカ戦の車両では戦闘室車体上部:前部左右に各2、側面に各3、後面3。ノルマンディ戦になると写真右の車両のように側面のフックが5個の車両が多くなりますが、左の車両など3個のままの車両も確認できます。左の車両はPanzerwrecks8 Normandy-2に掲載の別アングルからの写真で側面のフックが3個であることがわかります。有名なジグザグ迷彩の車両も側面フックが3個ですね。これらの車体上面のフックは大戦後半の車両によくみられる偽装ネット装着用というより戦闘室上面に防雨シートをかけるためにつけられたもの。アフリカでは気にならなかったけど、ノルマンディ地方だと、側面フックが3個だとシートに溜まった雨が車内に入ってしまったりしてフックを追加したのかしら。

ノルマンディの車両では戦闘室前面の予備転輪ラックの下に偽装ネット用と思われるフックが追加されているのが確認できます。いずれにせよ、残っている事例写真が少ないので標準仕様かどうかは不明。その他細部の仕様も、生産途中に改良されたものなのか現地で追加されたものなのか、車両ごとに微差があったりします。

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だいぶ形になってました。ブロック毎にある程度工作は進めてあったとはいえ、レジンキットだと組み立ては大変。パーツの成形精度は素晴らしいですが、勘合がゼロタッチで逃げがなったりするので組み立てには難儀しました。
細部の調整など組み立て完了まであと一息。いやー大変、もう不眠不休ですね...(嘘)

締め切りがせまってお尻に火がついてからでないと本気だせないのは、小学生の頃からの変わらない習慣。夏休みの絵日記に記録する毎日の天気を「復元」するのは大変でしたね。当時はインターネットなんてなかったから、古新聞を引っ張り出して天気欄を集めたり、思い出せる出来事の記憶を時系列にたどって天気を推測したり。。「考証好き」はその頃に身についたものかも。

by hn-nh3 | 2018-10-28 09:38 | ロレーヌシュレッパー系列 | Comments(8)
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久しぶりに模型の話。ブラチモデルのフルレジンキット:ロレーヌシュレッパー 15cm自走砲をSUMICON参加作品として、6月より制作しているのだけど、いろいろとあって制作は大幅遅延。
そういえばこっちのブログではこの話題の記事はまだアップしてなかったことに気づきましたが、今更最初から始めるのも気がひけるので、現在進行形の話から始めます。

今回はオープントップの戦闘室内に搭載された無線機の話。生産数の少ない自走砲は記録写真も少ないこともあって、戦闘室内の装備はモデラー泣かせ。多分にもれずロレーヌシュレッパー 15cm自走砲も、内部がわかる写真が非常に少ない。北アフリカに送られ1942年のエル・アラメイン戦で捕獲された車両を調べた報告書(Preliminary Report No. 13 - Lorraine S.P. Mounting)を見ると、戦闘室には砲弾ラックの類はなく、単純に榴弾砲と乗員スペースを囲っただけのものだったようだ。

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オープントップの戦闘室左後部に無線機を積んでらしく、「収容箱が2個」との記述が確認できます。残念ながら無線機周辺を写した写真が報告書には載っていないので、推測にはなるがMarderllなどに搭載されていたような2段式の無線機ラックが装備されていたのだろうか。この記述が正しいとすれば、他の自走砲車両の事例を参考にモデリングすればよさそうにも思われますが、気になるのが次の写真。

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ノルマンディ戦で捕獲されたと思われる記録写真が残ってます。鮮明さを欠くのが惜しまれますが、無線機周りの装備がわかる貴重な写真。比較参考にアフリカで捕獲された車両と、同じくノルマンディ戦の車両の写真も並べて検証してみます。

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無線機が設置されているのは黄色い数字のno1.の部分。上から見たノルマンディ戦の車両では無線機ラックは2段積みのタイプではなく1つしかないように見えます。下の写真のアフリカ戦の車両ではぼんやりとした影ぐらいにしか判別できない。アンテナのつく雨避けのガード(no.2)はどの車両でも共通して確認可能。その隣の四角い箱(no.3)はヘッドホン収容箱と想像しますが、設置が確認できるのはアフリカの車両のみ。ノルマンディの車両では雨避けガードの下部に無線機用変圧器(no.4)の取付金具があるのがわかります。

砲弾ラックのようなもの(no.5)がノルマンディ戦の車両に積んであるのが見えますが、固定式の装備ではなく、運搬用の砲弾コンテナを必要に応じて載せてたのかもしれません。

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参考資料として、2段組の無線機ラックと1段のみのラックの搭載事例。38t戦車車台を利用したグリレH型とマーダーlll M型の写真。

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2段組のラックに搭載されていたのは、Fu5(もしくは Fu16)と言う受信機と送信機が別筐体になっているタイプでII号戦車からティーガーまでの戦車系列、III号突撃砲やヘッツアーなど密閉式の戦闘室を持つ突撃砲/駆逐戦車などが主に装備。それに対して、1個タイプのFuSprech a/d/fはsdkfz.250などハーフトラック、ベスペやマーダーIIIといったオープントップの自走砲などに搭載。上の無線機の写真はK59(1120)のレジンキット。

無線機の機構と運用方法から詳しく紐解いていけば、どの車両にどのタイプの無線機が使われていたか明確にわかるのかもしれませんが、まだそこまで調べ切れてないので、事例からの推測にはなりますが、オープントップの自走砲でも1942年に設計されたグリレHやマーダーIIは2段式のラック(Fu5/Fu16)が採用され、同様に1942年に生産、北アフリカに送られたロレーヌシュレッパー自走砲も2段式のラック(Fu5/Fu16)を搭載していたとするのに無理はなさそうです。

ではなぜノルマンディ戦の車両では2段ラックではなく1個タイプの無線機を積んでいるように見えるのか?。おそらくは1943~44年に生産された多くの自走砲と同様にFuSprech a/d/fを搭載していたからでは、と想像します。

ロレーヌシュレッパー自走砲はアフリカに40両が送られた後、さらに40~50両が追加生産。後部の駐鋤などが改良されたバージョンがノルマンディに配備。その際に無線機の仕様も変更された可能性を考えてます。同じロレーヌシュレッパー車台を利用した7.5cm対戦車自走砲:マーダー1の無線機も1個タイプの無線機だったのは写真(Panzerwrecks 11 P56掲載)で確認。

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ロレーヌシュレッパー車台を利用した着弾観測車の写真。ロレーヌシュレッパー自走砲と同じアルフレッド・ベッカーの工場で生産された車両。砲兵部隊の前方に進出して、着弾位置の修正の指示を出すなど通信機能を強化した車両だけあってか、Fu5/Fu16(+Fu2/15) とFuSprech a/d/fの両方を装備していますね。

ノルマンディ戦で使われたロレーヌシュレッパー15cm自走砲の無線装備に関しては、別のアングルから写した内部写真が見つかるか何かの公式記録で確認できない限りは結論はなさそうですが、今回のモデリングではマーダー1 、マーダーlllと同様のFuSprech a/d/fを搭載していた、との仮定で進めてみます。

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用意した無線機のパーツ。黄色いレジンの機器はK59(1120)のFuSprech a/d/fのセット(no.Z-13)から。前にオチキス改造自走砲を作った際に購入したセットのあまり。FuSprech a/とFuSprech fの2つの無線機の2-in-1。ラックはオチキス改造自走砲の制作で使ってしまっていたので、ドラゴンのGrille自走砲のキットに不要パーツで入っていたMarderlll M用ランナーから流用。

変圧器、車内通話用コネクター、配線コネクター、アンテナベースはK59(1120)の無線機セットに入っていたもの。配線のソケットなど恐るべき注型精度。

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ドラゴンのMarderlll用パーツから流用した無線機ラックは抜きテーパーでフレームが厚くなっていたので、薄く削ってK59(1120)の無線機が嵌るように修正。

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部品を戦闘室に組み込んでみました。無線機ラックを車体に固定するホルダーはMarderlll用パーツをそのまま使用。実際にそうだったかは不明ですが、角度的にもぴったり。変圧器にはバッテリーからの電源と無線機、車内通話コネクターへの電源供給ケーブルを0.13mmの銅線を使って配線。
車内通話コネクターは、記録写真のアングルでは確認できないのですが、ヴェスペやマーダーlllでも装備していることから、同様に装備していたと仮定。

Panzerwrecks 11"Normandy-2" に掲載のマーダー1でも通話装置が写っていることから、ノルマンディ戦の時には他の車両と同様に装備していたと想像していますが。先掲のアフリカ戦の車両の調査報告書には運転手席への通話装置は確認できない、と記述があるので、初期生産車では車内通話コネクターは装備していなかった可能性はあります。

ヘッドホン用収容箱は無線機上に設置されていたのかいなかったのか、他の場所に配置されていたのか、わからなかったのでとりあえず保留。そのかわりに円筒状のスピーカーをアンテナベース脇にぶらさげてみました。このパーツはドラゴンのMarderlll用パーツのものを薄く削り込んで使ってます。最近発売されたPassionModelsのヴェスペ用エッチングセットにもスピーカーのフェイスは入ってましたね。

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配線はK59(1120)の無線機セットに入っていた説明書を参考にしています。配線に使った銅線はEUREKAのワイヤーセットから0.13mmのものを使用。変圧器周りの電源供給ケーブルはもうひとまわり太いのを使って、通信用コネクトケーブルとの太さの違いを表現すればよかった。と作った後で反省。

by hn-nh3 | 2018-10-21 12:52 | ロレーヌシュレッパー系列 | Comments(14)
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T-60軽戦車 第264工場製(全鋼製転輪・丸型ハッチ仕様)完結編。
SUMICONでは先に公開したジオラマですが、再録にあたり備忘録がてら、これまでの製作記のインデックスとマテリアルリストを文末に追記。
写真は全てクリックで拡大(1600px)

ROSTOV 1942.8

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1. 19427月25日。ロシア南部の要衝、ロストフ陥落。

  スターリングラードへと退却していく赤軍の戦車部隊。


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2. エンジントラブルで道路脇の麦畑で停止中のT-60軽戦車。

  原因はラジエーターの水漏れによるオーバーヒートか。


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3. 僚車の救援を待つ間、束の間の休憩をとる乗員2人。

  配属されて数ヶ月。幸いにして大きな戦闘には未遭遇。


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4. 地平線の彼方まで続く8月のライ麦畑。

  後にしてきた街を思い出す。


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5. 8月23日。ドイツ軍はスターリングラードに総攻撃を開始。`

  彼らの乗る5号車についての記録は残っていない。



記事INDEX

[T-60製作]

T-60 (Plant no.264) vol.1

264沼(前編):T-60 (Plant no.264) vol.2

264沼(後編):T-60 (Plant no.264) vol.3

重箱の隅:T-60 (Plant no.264) vol.4

内部塗装:T-60 (Plant no.264) vol.5

264+264T-60 (Plant no.264) vol.6

諸々:T-60 (Plant no.264) vol.7

ひとまず工作完了:T-60 (Plant no.264) vol.8

4BO+5T-60 (Plant no.264) vol.9

増加装甲を作る:T-60 (Plant no.264) vol.10

フェーディング1回目(油彩):T-60 (Plant no.264) vol.11

フェーディング2回目(油彩):T-60 (Plant no.264) vol.12

泥とか埃とか:T-60 (Plant no.264) vol.13


[ジオラマベース]

[フィギュア]

[その他考察]

4BO


[DATA + MEMO] ※more.. クリックで追記が開きます。



More
by hn-nh3 | 2018-04-18 06:25 | T-60軽戦車 | Comments(2)
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T-60 第.264工場製車両、制作編その13。全鋼製転輪+砲塔ハッチ丸型仕様の完結編。
SUMICONでは一足先に完成のお披露目をしてますが、こちらでは忘備録がてら、制作メモを含めて書き留めておきます。

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OVMの塗装。金属部分はメタリックグレイで全体を塗った上に黒に近いダークグレーの塗料を塗って拭き取り。黒錆(or黒塗装)が剥げたところに鉄の地肌が露出しているような表情に。ともにアクリル系塗料。鉄部の錆色は油彩を上からかけて表現。

d0360340_21210830.jpg実際、T-60に搭載されていたOVMは何色に塗られていたかという問題も。

現存する博物館車両を見ると、柄の部分が木地の色の場合もあれば、車体色と同じ緑色に塗られていることも。
当時の記録写真を見てもどちらのパターンもあるように思われます。この写真、第264工場製の車両(砲塔8角形ハッチ)ですが、フェンダー上の斧の柄は明るい木地色に見えます。鉄部の色はわかりませんが、フェンダーの先にあるジャッキが黒色のようなので、斧の柄が車体色で塗られてないことから、斧の鉄部も黒色かと推測。

d0360340_21473905.jpgフェンダーに取り付けて周囲は土埃が溜まったようにピグメントなどで汚したら、なんだかドロドロになっちゃいました... 油断すると、1/35スケールではなく1/1の汚れになってしまう。
角形工具箱をつけてる車両の場合、フェンダー上のOVMはシャベルとワイヤーだけのようですが、ジャッキとか斧はどうしてれるのかしら?

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足回りの泥汚れはウェザリングペーストを利用。「マッドホワイト」を筆につけて弾いて飛沫を飛ばして車体下部全体に散らしたところに「マッドブラウン」をサスペンション周りに散らして土の湿った感じを表現。そのあと、ベースに使ったピグメントを振りかけて、ベースと色調を調整。転輪の塗装剥がれはグラファイト鉛筆を塗り込み金属感を強調。

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履帯をセットして車両は完成。履帯のウェザリングは今回、ちょっとトラブル。墨入れに油絵の具を薄くペトロールで溶いて使ったのですが、履帯の接着が甘かったのか途中でポロポロと取れて復旧に苦労。エナメルシンナーほどではないものの、ペトロールもプラを侵す性質があるみたいですね。

d0360340_05351428.jpgウェザリングで今回使ったマテリアル。AKインタラクティブのDUST EFFECTSとSTREAKING GRIME。いつも使うのはだいたいこの2つ。薄く塗り伸ばして溶剤(オドレスターペンタイン)で拭き取り。錆色ピグメント(Track Rust)は排気管周りに。その他、ベースで使った土埃のピグメントをフェンダーの周りに散らしてアクリル溶剤を筆で弾いて飛ばしてピグメントを定着。

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d0360340_05460928.jpg履帯の片側には麦畑に踏み込んでついた泥を表現。ウェザリングペーストのマッドブラウンにベース作りで使った草の素材を混ぜ込んで塗りつけました。

ウェザリングは今回はちょっと反省。T-60のような小さな車両の場合、慎重に施したつもりでもたちまちスケールアウト。もっとフィギュアの塗装の時のような小さなグラデーションを刻む必要があったか。サビ表現も抑えたつもりだったけど、写真に撮ってみるとなんだかんだ目につく感じでちょっと過剰。

夏のロシア南部の気候を調べてみたら、降水量や湿度は東京の2月ぐらいと非常に乾いた気候。錆の色は、水と結びついたオレンジよりも空気中の水分との反応による暗い茶色で抑えるべきでした。もっと計画的に考える必要ありで、これは次回の課題。

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by hn-nh3 | 2018-04-03 06:11 | T-60軽戦車 | Comments(2)
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T-60 (Plant no.264) 制作その12。前回のフェーディング(退色表現)の上にもう一度油彩で変化をつけました。
細かなニュアンスの調整と車体下部からフェンダー、車体上面などに埃色をかぶせて、使い古されて全体に汚れが染み付いた雰囲気になるように。
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リベット周りやパネルラインの墨入れは油絵の具の焦茶(ローアンバー)に青(コバルトターコイズディープ)を混ぜたものを溶剤(オドレスペトロール)で薄く溶いたものを使用。黒を使うと淀むので補色の関係にある色を混ぜて絵の具の彩度を下げてます。墨入れに油彩を使うのはボカシがなめらかにできるからですね。エナメル系だと染みがついたようになりがちで拡大して見たとき時にスケール感を損なうことがあった経験から。 

排気管からの煤煙で黒ずんだエンジングリルのメッシュも油絵の具のローアンバーを擦り付けて表現。排気管の焼け錆び色も油彩で同様に表現。後の工程でこれに錆色ピグメントをまぶして仕上げる予定。

 
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車体下部には油彩でアースカラーを作って塗り伸ばして土埃の下地を作りました。実際かなり明るくしてますが、それでも写真にとってみるとフェンダーなどの影で沈んだ感じで落ち着いて見えます。これに転輪、履帯が被さるとさらに暗くなるので、もっと明るく塗っても問題なし。この部分をシャドウ吹きで暗色に塗装する手法もありますが、写真をとったときに車体下部が真っ黒に落ちてしまうことが多く、それは避けたいところ。

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車体下部は全体的に泥色を強くしてこの後に施すピグメントの色調と馴染むようにしてます。地面からの照り返しの光で明るくなる効果も少し意識してます。

砲塔や操縦席周り、車体フェンダーの一部はフェーディングの後で、緑色が強くなるように色を戻しました。Mr.ウェザリングカラーのフィルタリキッドの緑(フェイスグリーン)を部分的に塗りつけて、乾いた筆とウェザリングカラーの薄め液で湿らせたティッシュなどでゴシゴシ拭き取ってなじませました。この作業の意図は、...車体にうっすらとかぶった土埃がすれて車体色のロシアングリーンがはっきりと見えている... そんなイメージでしょうか。

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前の記事:4BO色 で使った写真ですが、砲塔のエッジやフェンダーの一部など擦れやすい部分に地色の4BOグリーンがしっかりと見えているのがわかります。こんな雰囲気を再現してみたくて、ピグメントで埃を強調した後でも全体がぼんやりとしないように色のトーンを強めてみました。

ここまでのフェーディング(退色表現)作業。ペンキの色褪せというよりも軽く拭った程度では落ちない汚れを含めて塗ってます。いわば「長期汚れ」ともいう色調の変化を与えてみました。このあと、クリアを吹いてツヤを調整、そしてピグメントなどで「短期汚れ」を表現するつもりです。   

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ここまでの調整の殆どは油彩で行いました。プラモに油彩と聞くと経験がないとハードルは高く感じますが、実はすごく簡単。何よりいいところは、塗った絵の具が乾いて定着すると、上から塗り重ねても下の層の色が溶剤で溶けることはありません。だからウェザリング中に下の色が滲んだり変なツヤが出てきたり塗膜が剥げたりとかのトラブルもないです。油彩はウェザリングに最適。

ウェザリング程度だったら写真のような7色あれば十分。今回は使ったのは赤(カーマイン)、黄色(パーマネントイエロー)、緑(ビリジャン)、青(コバルトターコイズディープ)、焦茶(ローアンバー)、黒(アイボリーブラック)、白(アイボリーホワイト) 。メーカーはホルベインの汎用品。

赤は少し赤紫っぽい色を選んでます。ロシアングリーンの補色に近いのでグレートーンが表現しやすい色。フィギュアの塗装だと黄色でもカドミニウムイエローなど発色の良いものがいいと思いますが、ウェザリングでは少し弱い色の方が扱いやすいです。絵の具はこれだけあれば殆どの色調はカバーできるから、画材屋の絵の具を端から端まで買い占める必要はなく、混色も法則をいくつか押さえておけば大丈夫。三原色を混ぜた時の色とか、オレンジに白を混ぜると肌色になるとか、黄色に黒を混ぜるとあら不思議カーキグリーンができるとか。あとはちょっぴり補色の話も。

溶剤にはオドレスペトロールを常用。今回はスケジュールの都合もあって、アプタイリングの速乾シンナーを使ってみました。乾燥時間に劇的な違いはないのですが。

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作業の最初は油絵の具の油抜き。100円ショップで買った密閉容器とAMAZONのダンボールを用意。使う色をチューブから出して半日から一晩程度、密閉容器の中で寝かせてダンボールに余分な油を吸わせます。このままダンボールをパレット代わりにしても良いのですが、使い残した絵の具を載せたままにしておくと、密閉しておいても2日と持たずにカチカチに固まってしまうので、右の写真のようなペーパーパレットに油抜きした絵の具を移し替えて容器で保存します。1週間くらいは使えます。

ペーパーパレットは滑らかで吸油性のない使い捨てのペーパーシートなら何でも可。写真のものはホルベインのSSサイズ。葉書より一回り小さい大きさの30枚1セットで180円。1枚あたり6円なり。パレットナイフは簡単なものでもあると便利。油絵の具は粘度が高くてチューブから出した状態だと筆で取りにくく、固まりかけた絵の具を筆で直接すくったりしてると筆があっという間に傷んでしまいます。ペーパーナイフで必要な色をすくってナイフで混ぜて溶剤で希釈してから筆に含ませます。

とまあ、訳知り顔で書いてみましたが、模型での油絵の具の使い方って、雑誌でもあんまり詳しく書いてないんですよね。ウェザリング商材の事は..あれ?こないだも同じこと書いてあったよねと思うくらい情報が多くて予習復習バッチリとなるのですが.. 油彩となると、しかも本格的な油彩画ではNGのような手法だったりするので美術専門書も役に立ちません。油抜きにしても、油絵本来の良さを消してしまうような使い方だし。

油絵の具の乾燥の原理について、自分の知ってる範囲で書き留めておきます。
模型用塗料と油絵の具はその特性が全く違います。模型用塗料(ラッカー、エナメル、アクリル)は顔料を揮発性の溶剤でとかして、溶剤成分が揮発すると塗料も固まる(乾燥する)仕組みです。完全な可溶性ではないものの、乾燥後に溶剤で再び溶かすこともできます。

それに対して油絵の具は顔料のペーストに練りこまれた乾性油が酸素に触れることで酸化重合反応を起こして凝固するものです。塗るときにペトロールやターペンタイン(テレピン油)などの揮発性の溶剤で希釈するのは、単にペーストを希釈して薄く塗り伸ばしやすくしているだけで、模型に塗った溶剤の揮発成分が乾いても、薄い絵の具の層自体はまだ固まっておらずべとついたりするのはそのためです。絵の具に含まれる乾性油が固まるまでにごく薄く塗っても半日から1日程度。模型塗料のように厚塗りすると、絵の具によっては一週間たっても固まってないこともあります。

この乾燥(凝固)の遅さが色のブレンディングなど精緻なグラデーション作りには役に立つのですが、ウェザリングの場合は塗った絵の具が2日も3日も乾かないと次の作業ができず仕事にならないので、それで「油抜き」をする訳です。
チューブから出した絵の具のペーストに含まれる乾性油をダンボールに吸わせるなど減らして、油の酸化重合による凝固が早まるようにします。油を抜けば抜くほど絵の具の「乾燥」は早くなります。絵の具の乾性油には完成後のツヤを出す効果があって油絵特有の重厚感にもなるのですが、模型に使う場合はこのツヤが邪魔なので油を抜いた方が扱いやすくなります。

じゃあ乾性油なんて模型では邪魔じゃん、油なしの油絵の具があったらいいね!となりそうですが、油絵の具にとってはこの乾性油が顔料の定着材でもあるので、油抜きした絵の具で油絵を描いたら将来絵の具が剥落したなんてことにもなります。ピグメント的に使うなら、仮に剥げてもまあいっかとなりますが、苦労して塗ったフィギュアの瞳が鱗が剥がれるように落ちたら泣いちゃいます。だからフィギュア塗装で油絵の具を使ってグラデーション塗装をするときは油抜きはほどほどに、ウェザリングで使うときは粘度のあるピグメントと思って油抜きをしっかりしたものを使うなど、時と場合に応じて使い方を調整。

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あ"ー 上部転輪が曲がってる....


模型用塗料に比べて乾燥が遅いというのはネックになりますが、フェーディングや墨入れで色のグラデーションを作ったりするのはやっぱり他に変えがたいものがあります。固まらないうちならペトロールで拭えば色を落とせるし、固まったら上から塗り重ねても下の色が溶けたりしないし。ちょっと作業しては休んでブログを描いたり(ダラダラ作るのが得意な)モデラーにとっては便利な画材です。


何を隠そう自分も油絵の具を使い始めて1年も経ってない初心者。遠い昔、高校生の時に一度使ったきり ..「油絵の使い方を覚えるために有名な絵の模写から始めよう!」と美術の先生の言葉にそそのかされて描いて、こりゃ才能ないね..と思ったクチです。まあ、模写した絵が後期印象画の巨匠、セザンヌが描いたサント・ビクトワール山の風景。挑んだ相手が悪かった。
                

by hn-nh3 | 2018-03-16 19:15 | T-60軽戦車 | Comments(4)
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T-60 (Plant no.264) 制作その11。基本塗装の上に油絵の具でフェーディング(退色表現)を行いました。
ウェザリング技法でよくドッティングなどど言われてる方法ですね。粘度の高い基本色(Ex.緑、青、赤、黄色、白..)を小さく斑点状において、ペトロールなど油彩用シンナーで薄く塗り伸ばして微妙な色階調を作り出す方法ですが、今回はロシアングリーンを明るくしたライトカーキグリーンともいうような色を作って2階調で薄く塗り伸ばしました。基本塗装の保護でクリアを吹いた時に少し色が沈んでしまったこともあり、明度を全体的に引き上げる目的もあったので、グリーン系の2階調で塗装色のニュアンスを調整しました。

同色系の絵の具でのフェーディングを行ったことに、もう一つの理由があります。いわゆる「カラーモジュレーション」は行っていないのですが、さすがに何もしないと模型的な押しが弱くなるので、光の効果を加味した色調整を同時に行いました。
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何もやってないじゃん...と言われればそれまでですが、天板を側面より明るく、砲塔側面下部や車体側面のフェンダー側などを反射光の表現で少し明るくしてます。さりげなく所作を感じさせない程度に。それとわかってしまうと光ではなく色になってしまうので... もう一回色を重ねますが、このあたりはまだ試行錯誤中。

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簡単な実験ですが、写真Aは白い物体を白い紙の上に直においたもの。写真Bは白い物体を紙から少し浮かせた状態。物体の側面の明るさを比べてみると、Aの紙の上に直に置いた時の方が明るくなっているのがわかります。比較用に写真Bの赤で囲った部分に同位置のAの部分を合成してます。明るさの違いが明確にわかると思います。

このように物体の側面はすぐ側の明るい面(この場合下に敷いた紙)からの反射光の影響を受けてほんのり明るくなります。

d0360340_15313785.jpg実験その2。反射光の影響がわかりやすいように下にオレンジ色の紙を敷いてみました。
オレンジ色の反射光が白い物体の側面をオレンジに染めているのがわかると思います。白い紙の上にある部分の側面は白いままです。このように物体の側面は周囲にあるものからの反射光にいつも影響を受けてます。

さらに詳しく観察すると物体側面の上部の方が下部よりオレンジ色が強く見えてます。下部の方が下のオレンジ面よりの反射光が強くて明度が高い状態なのでオレンジが薄く見えます。サンプルが小さかったので反射光のグラデーションがわかりにくいですが、物体側面は隣の明るい面との距離に応じて色と明るさが変化しています。

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ここからが本題。下手くそなデッサンですみません。
慣れない絵を描いた訳は、「カラーモジュレーション」について少し考えてみたいと思ったからです。実は現在流行している技法には少し懐疑的です。立体の面構成を強調するように色のグラデーションをつける方法は、確かに小さな模型の立体感を強調するには有効な技法ですが、濫用すると却ってリアリティを損なうような塗りかたに陥ります。

上の立体デッサンを見てみます。二つの白い立方体に左斜め向こうから光が当たってる設定。基本的には左の立方体のように3段階の明るさの違う面ができます。この明るさの描き分けは模型塗装にそのまま適用することはできません。模型鑑賞の光源の向きを固定しない限りは立体が破綻します。さらには色の明度の問題。左図では上面(1)は光が当たっていて白く見えてますが、側面(2)、そしてさらに暗い側面(3)は影を強調しようと色のトーンを暗くすると、結果として暗いシャドウ部分に塗られた色は基本色とは似ても似つかない沈んだ色彩になってしまいます。シャドウ吹きで煤けたような模型になってしまった人は多いはず。

この話は絵画の世界でも同じで、陰影を表現しながら色彩の純度を損なわないようにする方法として考えられたのが、右図ような影のつけかた。

人間の眼は隣り合う面の色の違いで立体を把握しています。その習性を利用して面の隣接する部分の明るさの違いだけ表現してやると、影になる面(2)と(3)の面全体をグレーで塗り潰さなくても立体が表現できます。影の面も白と感じられるような塗りかたができる訳です。左の立体の面(2)と(3)の影は下部がグラデーションが白いまま塗り残されてますが、先の反射光の話を加味して地面からの反射光で明るくなっていると解釈することもできます。

この明暗表現を模型の塗装に応用したのが「カラーモジュレーション技法」と言うことになります。その意味では基本色のトーンを損なわずに陰影を強調できるので便利です。模型塗装では、物体が小さくなると見かけの明るさが減光するのでそれを補うために色の明度をあげる必要があったり(スケールエフェクト)、屋外の自然光の強さを表現するためにコントラストを強調する必要がある訳ですが、そのために色を使って模型に光を描きこむのがカラーモジュレーションの原理だと思います。

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模型誌をパラパラとめくっていると、手法が目的化して光の効果から離れて面の塗り分けに注力している作例も見かけます。隣接面からの反射光が考慮されてないパターンも多いです。例えばフェンダーのつく車体上部側面の塗りかたは、側面のフェンダー際が暗くて上にいくにしたがって明るくなるような色調。現実世界ではそのような現象は起こらないのに、判をついたようにこの塗りかたが踏襲されてます。砲塔も側面下部が暗くて上部に向かって明るく塗られていたりします。

しかし実際はフェンダーと同様、砲塔側面の下部は車体天板からの反射光で明るくなります。砲塔の防盾下面も影の中にあっても車体からの反射光でほんのり明るくなっています。人間の顎の下が胸板からの光の反射で意外なほど明るいのと同じ原理。

話はこれくらいしておきますが、目的と原理から離れて、手法としての様式化が進むとどうしてもそういったことに陥りがちです。リアルの追求からは遠く、不自然で模型的な所作が繰り返されて...
まあ、習い事に共通することです。...剣道、茶道、戦車道。道と名のつくもの全て。

by hn-nh3 | 2018-03-13 18:00 | T-60軽戦車 | Comments(2)